平成3年

年次経済報告

長期拡大の条件と国際社会における役割

平成3年8月9日

経済企画庁


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第2章 資産価格の変動と景気循環

戦後期の日本経済における景気循環では,在庫循環や設備投資循環などが果たしてきた役割に比べると,地価や株価などの資産価格の変動はそれほど大きな役割を果たしてきたとは考えられない。したがって,株価の動きが景気循環に対する先行指標となっているという点を除くと,資産価格の変動と景気循環の関係について関心が寄せられたことはほとんどなかった。ところが,近年,両者の関係についてこれまでになく高い関心が寄せられている。

これは,第一に,日本経済のストック化が進むなかで,資産価格の変動が経済に果たす役割が大きくなってきていることによるものである。実際,今回の景気拡大局面においては,地価や株価の上昇が資産効果を通じて一定のプラスの役割を果たしたものと認められる。資産価格変動が新たな景気循環要因になっているという見方があるが,他方で,金融市場の持つ調整機能を高め,景気循環の安定化に寄与するという見方もある。

第二に,1980年代後半を通じての資産市場の活況には,一部にファンダメンタルズからかい離した動きがみられたことである。

第三に,金融政策が引き締められるなかで,株価は大幅に下落し,地価についても全国的に90年後半以降鎮静化しており,一部には下落する地域もみられ,下落の可能性が指摘されているが,その過程での景気や信用秩序に対する影響をどう考えるかという問題がある。

第四に,アメリカで不動産不況が深刻化し,これを契機とする経営の不安定化で金融機関が貸し渋りをみせ,これが経済全体の景気後退局面入りの大きな要因となったことである。

そこで,第2章では,地価や株価などの資産価格の動きを顧みた上で,資産価格の変動が実体経済や金融機関の行動に与える影響を分析するとともに,資産価格変動に関連したマクロ経済政策,金融システムの安定性確保,土地政策等の経済政策上の課題について検討を加える。


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