平成3年度年次経済報告(経済白書)公表に当たって

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1990年度の世界経済は,冷戦構造が終わり,国際経済の新秩序が模索される中で,アメリカなどいくつかの先進国の景気後退が生じたほか,湾岸危機,ソ連・東欧の経済改革などの大きな変動に見舞われました。こうし.た中で,日本経済は減速こそしておりますが長期の拡大を続けております。

このように我が国経済は,引き続き活力と適応力の高さを示しておりますが,一方で検討を要する問題もあります。本報告では「資産価格の変動と景気循環」,「長期拡大と供給制約」,「経常収支黒字と日本の国際的役割」という問題について検討を行っております。

近年,株価や地価などの資産価格の変動が経済に与える影響が大きくなっており,金融政策の適切な運営,並びに金融機関自身の適切なリスク管理と金融システムの安定性を確保する体制整備が必要となっております。

また,日本経済を長期に展望すると,生産年齢人口の伸びの低下や貯蓄率の低下など今後の経済成長を制約する要因もあり,適切な対応を行っていくことが必要です。更に,我が国が経済力に見合った国際的な役割を果たしていくため,今後とも政府開発援助の着実な拡充や国際的な共有財産ともいうべき制度や仕組みの構築,特に自由貿易体制の維持,発展において,積極的なリーダーシップを果たしていくことが必要と考えられます。

以上の内容を踏まえ,本年度の年次経済報告の副題は「長期拡大の条件と国際社会における役割」といたしました。本年度の年次経済報告が我が国経済の課題を解決する上で,いささかでも貢献することができれば幸いです。

平成3年8月9日

越智 通雄

経済企画庁長官

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