昭和58年

年次経済報告

持続的成長への足固め

昭和58年8月19日

経済企画庁


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序章

6. サービス経済化・技術革新と国内市場の発展

これからの国内市場の発展は,現在進行しているサービス経済化やエレクトロニクスを中心とした技術革新に大きく影響される。日本経済のサービス化は年々着実に進んでいるが,最近のサービス経済化は単に在来型のサービス分野の拡大のみではなく,技術革新や情報化と結びついた形で拡大しているものが多い。したがって,かつて云われたようにサービス経済化は必然的に生産性を低め成長率を低めると考える必要はなく,各種の情報管理技術を採り入れていくことで,多くのサービス産業で生産性の向上を図る余地が増大していると考えられる。しかし他面わが国でもサービス産業部門は財の部門以上に各種の規制や競争制限の対象になっている分野が多い。また価格形成の規準が判りにくく,消費者の対抗力が十分でないものもある。それだけにサービス経済化を内需の実質的拡大に役立てていくためには,できるだけ不必要な規制をなくし,競争条件を整備していくことが必要であろう。

一方,現在のエレクトロニクス化を中心とした技術革新は,すでに一般消費者にもその恩恵は部分的に及んでいるが,従来はどちらかといえば生産行程や事務管理など,供給側の効率化が先行した形で進められてきた。しかしそれが雇用にどう影響するかは現在なお十分把握されていないが,新技術による生産の効率化は,国内市場の拡大と成長力に好影響を与えるものと考えられる。すなわち,新技術の成果が今後,家計需要や福祉サービスあるいは都市システムなど広範な分野に応用され,内需拡大の新たな基盤となることが期待されるのである。さらに今後,生産性の上昇と生活の安定化に伴って,余暇市場をどのように開発し,そこにも都市再開発や技術革新の成果が採り入れられていくことが重要な課題となろう。


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