昭和55年
年次経済報告
先進国日本の試練と課題
昭和55年8月15日
経済企画庁
第I部 景気上昇と物価安定への試練
第4章 今回の石油危機における財政金融政策と物価対策
マクロ的な財政金融政策と並んで,今回の物価上昇に対し「総合物価対策」が早くから打ち出された点を強く指摘できる。
54年2月末には生活関連物質等の需給,価格動向の監視,供給の確保を軸とする第1次総合物価対策が決定された。また,11月末に第2次の物価対策,55年3月にはこれらをふまえての「当面の物価対策について」の7項目が決定された(前掲 第I-4-1表 参照)。特に,ここでは財政金融政策を中心とした総需要政策が展開されることとなった。
これらの物価対策はこうした総需要管理政策による物価全体としての安定化効果と,一時高騰を示した野菜価格の安定のための対策,電気,ガス料金引上げ幅の圧縮などの具体的効果の両面から今回の物価上昇をかなり抑制してきたとみられる。
また,今回の場合,物価対策は,前回の石油危機後とは違って,市場機能を信頼して行われたことも特徴的であった。すなわち,政府の直接的な介入は極力回避し,市場経済の自律的メカニズムの活用が目指された。これは,民間経済主体の賢明な対応とも相まって前回みられたような混乱を防止するのに大きく寄与した。