昭和52年

年次経済報告

安定成長への適応を進める日本経済

昭和52年8月9日

経済企画庁


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第I部 昭和51年度の日本経済―推移と特色―

第4章 財政・金融両面からの景気回復の促進

第3節 景気の現局面と課題

すでにみたように52年1~3月期の実質国民総生産は前期比2.5%増(年率換算10.4%増)と大幅に増加した。しかし,基礎資材関連業種の多くで引続き在庫調整を迫られていることから,その後生産は全体として伸び悩みの状態にあり,物価面でも,国内需給の緩和基調に加え,為替相場円高の影響や国際商品市況の軟弱地合いといった事情もあってこのところ鎮静の度合いを一層強めている。こうした状況下,企業収益の回復には一服傾向がみられており,企業では先行きに対しての慎重な見方を未だ大きく変えるにはいたっていない。このため,従来の景気回復期ではリード役を演じた民間設備投資についても,景気回復3年目に入った現在もなお目立った動意がみられないまま推移しており,これが景気回復テンポを鈍いものにとどめ景気浮揚感に乏しい回復過程をもたらす重要な要因となっている。一方,こうした回復テンポの緩やかな状態が続く中において,すでにみたような業種間の景況格差が大きくあらわれており,とくに,新しい経済諸条件の下において適合が困難になってきたいわゆる構造不況業種においては,それまで内在していた諸問題が厳しいかたちをとってあらわれるに至っている。

このような景気の現状の下においては,上記の公共事業等を中心とする景気対策の着実な推進に努めるとともに,今後とも状況に応じ適時適切な措置を講ずることなどにより企業に経済の先行きに対する確信を与え,それを通して景気の着実な回復を図っていくことが大切である。また,そうした政策は,わが国にとって適切なものであるのみならず,わが国の国際経済上の地位が大きく向上した現在,世界の景気回復という観点からみた国際協調の観点にも合致する考え方である。一方,構造不況業種の問題は,通常の金融的措置や経済成長率の引上げといった一般的な景気政策では元来解決の出来ない問題である。このため,これら業種が,新しい経済環境に適合した形に出来るだけスムースに構造転換できるよう必要な措置を講じていくことも,上記景気対策と合わせて考慮されなければならない転換期の政策課題である。


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