昭和46年

年次経済報告

内外均衡達成への道

昭和46年7月30日

経済企画庁


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第2部 経済成長25年の成果と課題

第1章 戦後25年,日本経済の到達点

(1) 豊富になつた物資の生産

(生産水準の向上)

まず,物資の生産力がどのような拡充を遂げたか。

いま,第1回の経済報告が発表された昭和22年当時と現在とを比較すると,鉱工業生産が約36倍,農林水産業生産が約2.3倍の水準となつている( 第63表 )。当時の重点物資の主なものについてみると,粗鋼が約100倍に達し,傾斜生産のもうひとつの主力であつた石炭の国内生産は1.5倍にとどまつているものの,これにかわつて重油は実に2,500倍近くの飛躍的増大を遂げている。また,米の生産は1.4倍となつており,当時の経済報告が,約120万トンの国内食糧不足(いも類を含めた米換算)を訴えたのに対し,現在では46年度産米について230万トン減産が目標とされるほど,時代は大きな変ぼうを遂げつつある。

終戦直後は極度に生産力が疲弊していた時代であつたが,それにしても現在の物資の生産力水準はきわめて高く,戦前(昭和9~11年平均)に対して,鉱工業は12.4倍,農林水産業生産は1.7倍の水準となつており,工業生産の増大ぶりはとりわけ顕著である。

(生産構造の変化)

経済成長の過程は,同じ物資が同じテンポでふえつづけることを意味するものではなく,絶えざる構造変化をともなつている。25年前の経済復興期の重点物資は,鉄鋼などを別とすれば,石炭,硫安,綿織物,米など多くのものについてその後の成長力が衰えている。その反面,合成繊維,プラスチックなど石油化学製品,テレビを中心とした家庭電器,電子計算機など,数多くの新商品が登場し,全体として物の豊かな社会に貢献しているのである。たとえば,昭和45年の工業生産のうちで,昭和25年以降に生産指数に採用された商品の割合でみても40%を超えている( 第64図 )。さらに同じ商品類別のなかで次々と新しい商品が開発されていることを考えれば,わが国の工業発展がいかに新しい物財をうみだす過程であつたかが明らかであろう。

速い経済成長の過程では,生産の仕組みも大幅に変動する。新しい物財の量産や,生産工程の技術革新は,日進月歩の生産構造のもとで営まれるが,こういうダイナミックな変化は,迂回化の過程と表現できよう。消費のための消費財生産が,「手から口へ」式に行われるのでなく,年々の生産物のうちの多くが資本財や生産財などのいわゆる迂回生産のために投入され,それによつて高生産性のもとで新型消費財が量産されるのである。 第65図 は,各年別にこの種の迂回化がいかに進展してきたかを示しているが,この迂回化の過程がまた活発な民間設備投資の増大と表裏してきたものといえよう。

なお,生産構造の変化は農業生産についてもいえる。米やでん粉類の生産は停滞的となつてきたが,肉類,果実,野菜の伸び率は高く,主な商品についてみれば,牛乳は戦前(昭和9~11年平均)の17.5倍,肉11.9倍,鶏卵8.3倍,トマト5.6倍となつている(前掲 第63表 )。

こうしたなかで,国民1人当たりの消費水準も著しく高まり,現在の都市および農家の消費水準は,戦前に対して2.4倍および3.1倍となつている。戦前に比べて農家の消費水準の伸びが高いのは,この間の所得平準化のなかで農家所得の相対的な上昇率が高かつたことも関連している。

(国際比較でみた1人当たり生産)

物資の生産がいかに豊富になつたかは,国際比較をしたときにいつそう明瞭である。 第66表 は,昭和45年の国民1人当たりの主要工業品の生産水準を,アメリカを基準として比較したものである。これでみると,船舶の約40倍は別格としても,トラック,合成繊維が2.5倍に達し,テレビ,セメント,鉄鋼,プラスチック,樹脂,新聞紙など,すでにアメリカをかなり上回つている。そして,戦後に育つた主要新製品1人当たり生産がアメリカをしのいでいるのも主要な特徴である。


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