昭和43年

年次経済報告

国際化のなかの日本経済

昭和43年7月23日

経済企画庁


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第1部 昭和42年度景気の動き

2. 景気調整策の実施とその浸透状況

(1) 景気調整策の実施

42年の7月25日,政府は42年度発行予定の国債,政保債をあわせて1,200億円減額することを決め,日銀は8月から市中銀行に対し資金ポジション指導を強化した(日銀貸出限度額の各行別配分に際して,外部負債の増加すなわち資金ポジションの悪化が不利に働くような算式を採用するなどの方法による。9月からは貸出増加額規制枠の各行別配分についても同方式を採用)。しかし,今回の景気調整策が本格的にはじまつたのは42年9月からである。

9月1日,日銀は公定歩合を1厘引上げ,都市銀行等に対し貸出増加額規制を復活した。ついで9月5日,政府は国,地方をつうじて3,112億円の財政支出繰延べ措置を決め,金融・財政両面からの総需要の抑制が図られることになつた。

その後わが国をめぐる国際環境にも大きな変化がおこつた。すなわち,42年11月イギリスのポンド平価が切り下げられ,これに前後してイギリス,カナダ,アメリカなどの主要国の公定歩合が引き上げられた。さらに43年年頭にはアメリカのドル防衛策の強化が発表された。

このような国際環境の変化もあつて,日銀は12月に43年1~3月の貸出増加額規制を強化することを発表したが,ついで年明けの1月6日には公定歩合をさらに1厘引き上げた。一方,政府も1月に閣議決定した「経済運営の基本的態度」で,43年度は経済を安定的な成長路線にのせるための「調整の年」であるとし,とくに国際収支の改善に第一義的目標をおいた。また予算編成にあたつては,総合予算主義をとるとともに,予算規模を圧縮し,公債発行予定額も前年度にくらべて削減した。

これら一連の景気調整策は,財政・金融両面からおこなわれ,いわゆるポリシーミックスとなつているところに大きな特徴がある。とくに財政面では,①自然増収を国債の減額にあてることによつて,補正予算による財政支出の増加を抑えたこと,②財政支出繰延べの規模が大きく,また地方財政を含んでいること,③法人税延納利子税率の公定歩合スライド制によつて,延納利子税率が上がつたこと,などが注目される。一方,金融政策面では,①貸出増加額規制の対象が都市銀行,長期信用銀行,信託銀行(銀行勘定),上位地方銀行となつて,前回より拡大されたこと,②貸出増加額規制の程度も前回よりきびしくなり,資金ポジション指導もいちだんと強化され,それらの内容もきめ細かくなつたこと,などの特色があげられる。


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