昭和40年
年次経済報告
安定成長への課題
経済企画庁
≪ 附属資料 ≫
昭和39年度の日本経済
交通、通信
国内輸送
国内輸送の概況
停滞を示した貨物輸送 39年度の貨物輸送は前半では景気調整下にかかわらず衰えなかった産業活動を反映して各輸送機関とも金融引き締めの影響は軽微で、前年同期と比較してかなりの伸びを示した。しかし昨年秋ごろから引き締めの効果が企業段階に浸透し、減産体制が鉄鋼、石油製品など基幹産業にも波及して生産が沈静化したため輸送需要は弱含み基調へと転換した。各輸送機関の輸送量の総計は1,840億トンキロに達し前年度比101.7%で国鉄、内航が共に前年度をやや下回り、トラックは前年度を10.1%上回った。
国鉄については39年7月まで堅調でその後は横ばいに推移した。秋冬期には例年のごとく局地的輸送あい路現象必至とみてあらかじめ輸送力整備対策が講ぜられていたが北海道の冷害、季節貨物の減産等のため輸送需要は予想されたほどの盛り上がりをみせず12月、一時的に貨車不足の現象を呈したのみでほぼ平穏に推移した。総体の輸送量は589億トンキロで前年度を0.5%下回った。鉱工業生産の著しい増加にかかわらず国鉄の貨物輸送が停滞したのは輸送障害の増加、地域的時期的な輸送力不足、農林水産品の減送、地域流動構造の変化に基づく平均輸送距離の減少等に起因している。輸送力はたしかに相当増強され車両、コンテナの増備も一段と進ちょくしたが、なお地域的、時期的な需要波動に全応できるとはいい難く、さらに商取引の実態に即応した輸送サービスの質的向上という観点から輸送方式の近代化を図る必要があろう。
トラックの年度末登録台数は249万台で前年度比116.9%となった。トラック輸送の国内貨物輸送における構成比はトン数で83.5%を占め、景気変動による影響は比較的少なく他の運輸機関が停滞したのに反して39年度の輸送量は前年度を上回り砂利、工業品等を中心として463億トンキロに達した。業種別では路線、区域は共に前年度を上回ったが通運は依然低迷を続けている。機関別輸送分野の推移をみてもそのシェアは年々急速に増加し、産業の高度化にともない機能的にみて荷主のトラック輸送への選好性が高まりつつあることは否めない。しかし一方では労働力、特に運転手不足が人件費の高騰を招き、さらに輸送市場をめぐる業者間の競争は激化し産業界における流通経費節減の要請も厳しく、このため経営の悪化を招いた業者もあり企業合併、あるいは資本の系列化等トラック資本再編成の動きがみ受けられる。
内航海運についてはやはり年央から輸送量は低調となり石油、セメントは前年度より伸びたが石炭、鉄鋼はそれを下回った。輸送実績は779億トンキロで前年度の98.8%に留まった。船型別の輸送量では大型鋼船のシェアが増加し木船は漸減傾向にある。また一般船から専用船化への転換が行われつつある。内航海運企業の零細性と船腹過剰傾向による過当競争とで長年にわたり業界は経営不振を続けて来たが、内航二法の改正に基づき適正船腹量及び最高限度量が設定され積極的に船腹需給調整が図られることとなった。
根強い増加を示した旅客輸送 39年度の旅客輸送が景気の動向に大きな影響を受けることなく増勢を続けたのは、用務旅客の増加、消費水準の向上によるレジャー旅客の増勢、さらに1次産業から2次、3次産業への労働人口の移動、人口の都市集中、学生数の増加等による。
総旅客輸送量は3,551億人キロで前年度を10.2%上回り特にバス、航空機の伸びが著しい。地域間輸送は表東北から北九州に至る太平洋岸ベルト地帯に集中し鉄道の比重は依然として高いが、大都市圏交通においては地下鉄、バスがかなりの伸びを示している。
鉄道についてみると定期外旅客では前年度と同様に中・長距離旅客が順調に増加し国鉄、私鉄それぞれ人員で対前年度105.2%、102.8%また人キロでは同108.6%、100.7%となった。しかし地方の中小私鉄や公営軌道では定期外旅客の比重が年々低下し経営悪化の一因をなしている。国鉄においては東海道新幹線の開業によって輸送力は静岡~浜松間で約38%増強され、39年10月以降年度末までの新幹線の輸送人員は11百万人で1日平均約6万人に相当する。定期旅客は国鉄、私鉄それぞれ人員で対前年106.5%、106.8%人キロで同106.2%、105.6%と増加した。大都市の通勤、通学輸送対策としては輸送施設の改善、車両の増備、最短運転時隔帯のかくふく等が実施され東京、大阪で約93万人に及ぶ時差通物、通学の協力もあった。さらに地下鉄では新線建設が進められ東京で営団2号線の全通、営団6号線、都営地下鉄1号線の部分開通、大阪では市営地下鉄1号線、3号線、4号線の部分開通が行われた。しかしこのような施策を通じても東京において昨年12月以降年度末まで延べ120万人を対象とし3千回に及ぶ改札止めを行わざるを得なかったように通勤、通学難はあまり緩和されていない。旅客、貨物をあわせ輸送力不足の抜本的対策として地下鉄の新線建設をさらに促進するほか、国鉄では40年度から46年度までの7年間で29,720億円の新投資計画、また大手私鉄では39年度から41年度までの3年間で約2,250億円の輸送力増強計画をそれぞれ積極的に推進することとなった。
バスの総体の輸送人員は100億人(前年度比119.1%)、人キロでは760億人キロ(前年度比120.9%)、とかなりの伸びを示している。乗り合いバス貸し切りバスとも増大したが、長距離バスは道路の整備拡充にともない主要地だけ停車する都市間輸送の急行便が最も多く33年以降着実に増加している。39年9月には名神高速道路の一宮~西宮間が全通し本格的長距離バスの連行が可能となり、開業以来年度末までの輸送人員は411千人で1日平均3.2千人に相当する。大都市周辺における乗り合いバスの輸送需要は都心では減退したが、住宅地域の拡大にともないバス依存区域の拡大、輸送方向の多岐化等により郊外から高速鉄道最寄り駅までの末端輸送が増加した。全輸送人員の対前年度増加における乗り合いバスの寄与率は毎年その構成比を着実に上回っている。しかし大都市おける自動車交通量と道路容量とのアンバランスによる路面混雑は乗り合いバスの運行速度を低下させ都心部においては通勤、通学輸送機関としての機能の低下を招いている。
乗用車の年度末登録台数は146万台で輸送量は315億人キロとなり前年度と比較してそれぞれ35.5%、18.7%増加した。乗用車に占めるハイヤー・タクシーの割合は台数では10%輸送量では32%に相当する。
国内航空の39年度の輸送実績は27億人キロで対前年度21.0%の増となった。東海道新幹線の影響で東京~大阪間路線の輸送量は昨年10月以降低調で年度末においても依然この状態を脱しきれない。路線別に35年度と比較すると旅客人キロで幹線は3.1倍、ローカル線は6.2倍と大幅な伸びを示している。航空輸送需要の増加に対応して運営体制を整備するため、企業の統合、幹線ローカル線の輸送分野の確立、使用機種の統一等の調整が行われた。輸送力の面でみると座席キロは38億キロで対前年度127.4%と増強されている。
輸送におけるひずみとその対策
日本経済が復興過程を終えた段階である昭和30年度において、国内輸送においてもおおむね各機関とも戦前を上回る輸送を行うようになった。この年以後の高度経済成長下における輸送状況を伸び率でみると、輸送量の伸びに対して固定施設の整備の遅れが著しく、特にこの現象が一定の地域に激しくなっている。この原因は経済成長が予想以上に急テンポであったこと、これに対する輸送の側の投資力が不足していたことにある。
39年における東海道新幹線、名神高速道路(一宮~西宮間開通)、東京都心を貫く都市高速道路の出現は、このひずみの対策において重要な意義を持っている。それは、高度成長下の輸送需要の増大に対し、固定施設の局地的な増設が行われてきたが、さらに新しくこれを大規模に増強する必要が生じてきたことを表している。新幹線等の三者は革新的な輸送施設網の先駆であるが、在来の施設網においても増強の動きが一段と強まっている。固定施設増強が比較的速いテンポで行われてきた大都市の地下鉄では、39年にはその両端からの私鉄の相互乗り入れによって大都市が貫通されるようになり、今後この方式が拡大していくこととなる。
一方、大都市等需要集中のある地域以外においては、各地に道路の未舗装等、施設水準の低さがみられるのであり、この向上も課題となっている。
鉄道については、国鉄の30~39年度の年平均伸び率をみると、輸送量(貨物トンキロ3.8%、旅客人キロ6.8%)に対して、列車キロ(貨物2.8%、旅客6.4%)がやや下回るが、一方、軌道延長は長年伸びがわずかに過ぎなかった(30~38年度末0.7%、39年度中は新幹線のために4.3%と伸びた)。また資本ストックは3.4%(30~37年度実質額)に過ぎなかった。
国鉄における輸送力のひっ迫状況を全国にわたる各本線等についてみると( 第6-1図 )、太平洋ベルト地帯においては複線化、動力近代化も進んでいるが、列車の連行密度も高い。各線の各区間についてそれぞれの適正線路容量が算定されるが、一般的に、1日の列車回数は単線については80回、複線については240回程度が適正と考えられている。これを基準にしてみると、大都市を中心とする幹線の列車運行がひっ迫していることがわかるが、これらのうち特定の短い区間ではさらに回数が激しくなって、いわゆる過密ダイヤが組まれている。なお各地の幹線、幹線に接続する支線においても、一部の区間においては適正線路容量を超えたダイヤが組まれている。
第6-1図 について30年度の数字と対比すると、列車キロの伸びは線別にまちまちであるが、輸送量(人・トンキロ)の増加に対し輸送力(ここでは列車キロをとる)をどれほど増やしたかをみると(各グラフの上の数字)、総体では輸送力の増加の方がやや下回るが、特に大都市付近においては輸送量の増加率が他線区よりも高く、これに対し列車キロの増加率の下回る割合が大きい。この現象について、民営鉄道を含めた大都市鉄道交通としてみてみよう。
全国の鉄道輸送人キロ中、首都、京阪神、中京の三大交通圏のそれは半ばを占め、地域集中が激しい。三大交通圏の7割を占める首都交通圏の状況をみると、30~38年度の年平均伸び率は、人キロ8.2%に対し、電車の列車キロは5.2%、車両キロ(列車キロ×車両数)は8.7%である。これは、線路容量の制約から列車増発の余裕が少ないので、列車編成を長くして輸送力を増強してきた場合が相当あることを示す。しかし一部の区間においては、線路容量、駅施設等の制約により列車回数も列車編成長も最高限度に達したため、最混雑時1時間の輸送力が頭打ちとなっている(例えば、中央線(快速)新宿・→四谷間は36年から10両編成の2分間隔運転となっている)。さらに、その他の各線とも輸送需要が増加を続け、これに対し車両増備、列車増発等による輸送力増強の余裕が狭められてきており、輸送力頭打ちの現象がこれらに波及するおそれがある。
一方、混雑度を示す乗車効率を運輸省の調査によってみると、38年度において最混雑時1時間260~315%の区間が各地にみられる。このような混雑の解消には車両キロの大幅な増大が必要であるが、それには、上のような事情から、固定施設増強が必要とされる箇所が多い。
京阪神及び中京交通圏については輸送人キロの30~38年度年平均伸び率が、それぞれ7.4%、7.7%と首都交通圏の伸びを下回るが、いずれも全国平均を上回り、首都交通圏に次いで困難な問題を抱えている。
これらの問題に対し、国鉄の3回の長期計画の重点は、老朽資産一掃、動力近代化等による現有施設の効率化から施設増強へと移っている。新長期計画は、通勤輸送に一躍総工事費の17.5%を投じ、うち施設増強は13.4%と大きな割合を占める。また幹線の線増には25.9%が投ぜられる。これによって、山陽新幹線新大阪~岡山間の建設を始め、全国幹線のあい路区間の複線・複々線化が進められ、国鉄全線の複線化キロは39年度末の2倍となる(複線化キロの年平均伸び率は、30~39年度約3%に対し、40~46年度約10%)。国鉄を除く都市交通対策としては、地下鉄新線建設のほか、大手私鉄の輸送力増強計画が実施されており、さらに鉄道建設公団も大都市近郊に外郭環状線を含む新線建設を進めている。
自動車と道路については、高度成長の過程の中で、自動車交通量は飛躍的に増加し、39年度の旅客輸送人キロ、貨物輸送トンキロは、それぞれ30年度の3.9倍、4.9倍に達した。この間道路整備も意欲的に進められ、道路そのものはかなり改善されたが、自動車の激増により相対的にはかえって道路交通条件の悪化がめだち、混雑は激化し、事故死者数も39年には30年の2倍以上になる等多くの悪影響を生じている。
自動車交通量に関する指標として、便宜上自動車保有台数(登録車両+3輪以上の軽自動車)を用いることとし、全国を所得水準、経済構造等を基準として18地域に分けて、各地域について、33年3月末~36年3月末の3年間のその増加率をみると大都市地域が上位をしめているが、次の3年間については事情は一変して、大都市周辺の地域や瀬戸内海沿岸地域の増加ぶりがめざましく東京は最下位となっている。しかし増加量そのものは、この期間についてみても、全国平均の人口千人当たり26台に対し、愛知の39台をトップに、大阪35台、東京も32台と、それまでの保有量の絶対水準の高さを反映して、大都市地域において比較的多く、この結果39年3月末の人口千人当たり保有台数は、全国平均51台に対し東京80台、愛知78台、大阪75台となっており、大都市地域が上位に並んでいる。また、これを面積当たりでみても、全国平均のlkm2当たり13台に対し、東京413台、大阪254台と大都市地域において圧倒的に多い。
一方同じ36年3月末からの3年間に、改良済(幅員、こう配等が道路構造令等の規格に適合していること)、舗装済の道路延長は、全国平均でそれぞれ22%、67%増加したが、自動車台数がこれを上回る激増をみせたため、自動車台数当たりの改良済、舗装済道路延長はかえって43%、22%の低下をみせている。これを各地域別にみると、自動車増加率が比較的小さかった高所得地域と増加率も小さく増加量も少なかった低所得地域の低下の度合いが比較的小さくて、いわば中進的ともいうべき地域の低下の度合いが比較的大きく、この3年間の混雑の激化の度合いはこの地域で最も激しかったということができよう( 第6-2図 )。しかし、混雑のひどさそのものは自動車保有台数の絶対水準の高さを反映して、大都市地域において最も大きく、例えば39年夏の一級国道(当時)走行速度調査によると、低速度を余儀なくされている方の上位5区間中4つまでが東京及びその周辺の区間であり、第一京浜の平均速度は、苫小牧~室蘭間の約半分という状態である。さらに視角をかえて道路の質的水準についてみると、我が国の道路網には、近代的自動車交通に適していない部分がなお多く残存しており、これを例えば舗装率についてみると、大都市地域においても50%に達せず、イギリス(100%)や西ドイツ(57%)の全国平均にすら及ばない状態であるが、その他の地域においては、5%に達する地域すらほとんどない状態でその地域間の開きは大きい。
今後の予想される自動車数の激増に対処するためにも(我が国の人口当たり台数は英独仏等の4分の1~1/5)、あるいは既に現実の大問題となっている交通混雑の緩和や安全の確保のためにも、近代的、能率的交通体系の確立のためにも、道路網の緊急の整備が必要であり、またこれとあわせて、道路交通の円滑化を図るための諸施策の実施が急がれなければならない。このため、当面総額4兆1千億円の第4次道路整備5ヶ年計画(39~43年度)により、都市間及び都市内の高速道路その他の幹線道路網の整備、産業や国民生活に密接な関係を持つ地方的道路の整備、道路相互及び道路と鉄道の立体交差化、安全施設の整備等が進められており、これと併行して駐車場の整備等も行われている。この結果、43年度末には、都市間高速道路の開通総延長は約630kmになり、また首都、阪神の両都市内高速道路網もそれぞれ約100km、50km程度が完成し、都道府県道以上の道路の改良率、舗装率は、38年度末の35%、18%から43%、37%程度にまで上昇するものと期待される。このように道路の整備が進められているが、特に東京、大阪等過度に人口、産業が集中し、いわゆる過密の弊害を生じている大都市においては、単に道路網の整備を行うのみでなく、人口、産業の集中防止ないし分散のための方策がとられることが必要であり、またこれと共に、大都市自体の構造を改善して、総合的に道路の効率的な機能の増進を図る必要がある。このため、東京における新宿副都心の建設や板橋等の流通センターの建設、日本自動車ターミナル(株)(本年7月特殊会社として設立)による板橋流通センター内等のトラックターミナルの整備促進等の施策が行われており、大阪においても新大阪駅附近の市街地造成等業務センターや流通センターの整備のための施策が進められている。
港湾については、30~38年度の年平均伸び率をみると、取り扱い貨物量は経済成長率を上回る12.6%であり、入港船舶の隻数は1.7%、総トン数は8.3%である。特に1万総トン以上の大型船は隻数が22.9%、総トン数が26.0%と著しく増加し、これに応ずる港湾の大規模な整備を必要ならしめている。港湾施設の量を表す1つの指標として、公共事業で造成する防波堤、航路、岸壁等の基本施設の資本ストックをみると、6.5%(実質額)と貨物量の伸びを大幅に下回る。
貨物量の激増に対する港湾の処理能力の増強を、けい船岸の換算延長についてみよう( 第6-3図 )。延長1m当たりの貨物量が年間600トンであれば滞船を招かない規模であると考えられているが、既に33年度に平均してこの規模に達していた。38年度に至る推移をみると、三つの港格別では、それぞれ能力増強よりも貨物量の伸びが上回るが、特に重要港湾以上においてはなはだしくなり、600トンのラインを大幅に上回るようになった。これらを外貿と内貿のけい船岸に分類し直すと、いずれもひっ迫しているが、特に前者について激化している。これらの場合、取り扱い貨物のうち石油は少ない施設で大量の取り扱いができるので、これを除いてみても、平均して600トンのラインを相当上回る。なお、港湾資本ストックとけい船岸延長の33~38年度年平均伸び率はそれぞれ8.0%、4.3%である、両者のかい離は、投資の相当部分が、船型の大型化に対処するための航路の整備や新たに港湾を開発するための航路、防波堤の整備等、けい船岸工事以外の部分にも向けられたことを示す。
36年における六大港を中心とする深刻な滞船現象はその後緩和されたが、五大港の39年5、8、11月の調査においては、各自いずれも総計1万時間以上のバース待ちを記録しており、滞船が慢性化している。
このため新港湾整備5ヶ年計画(40~44年度)として、今後の取り扱い貨物量の増大に対処すると共に、公共雑貨換算取り扱い貨物量/公共けい船岸換算延長( 第6-3図 は民間の分を含むが、ここではこれを除く)を現状の約900トン/mから約800トン/mに減少させることを主眼とし、地域開発等もあわせ含めて、基本施設について5,500億円を投資することとなった。
またこれに対応して、基本施設と同様に立ち遅れている上屋、荷役機械等の機能施設について、5ヶ年間に1,000億円の総事業費を持って整備をすることとなった。
倉庫については、普通倉庫の利用率は通常65%が適正であると考えられているが、39年度は全国平均で68%、うち5大市では75%であり、庫腹不足が慢性化している。
空港については、その処理能力としては、滑走路の延長、エプロンの数及び航空保安施設が主要なファクターであり、東京、大阪のほか各地の空港においてそれらの増強が行われている。特に東京国際空港は、年間の容量が定期便の離発着17万5千回(ピーク1時間当たり40回)であるが、39年は8万5千回であり、45年ごろには処理能力の限界に達すると予想されている。また超音速旅客機の就航も近い将来に追っている。このため東京周辺における大規模な新空港の設置が急務となっている。
国際交通
外航海運
世界の海運市況 39年の世界貿易は、先進工業国の経済活動の著しい拡大を基調に大幅な伸長を示した。これに伴い39年の世界の海運市況は、前年から引き続いた高水準から2月に下落とした後は、おおむね堅調に推移した。
38年には年平均109.0と33年以来の最高水準を示した不定期船運賃指数(英国海運会議所)は、39年に入っても、ソ連の小麦買い付け等により、38年末に引き続き高水準を維持したが、2月に入ると米国のソ連向け小麦輸出量が予想を大幅に下回ったこと、これに対し米国船50%優先使用が決定されたことにより、運賃指数は1月の128.6から110.7へと大幅に下落した。その後は、世界貿易の拡大による輸送量の増加、欧州の穀物市況の回復により、市況は全般的に好調に推移したが、グレンタンカー(油送船て穀物輸送に従事するもの)の就航量の増加、不定期船の係船解除におさえられて大きな動きは見られず、10月に発生した米国港湾ストによる船腹需要の急増により、10月以後はかなりの回復を示しながらも、前年同期ほどの高騰は見られなかった。89年の平均運賃指数は112.1で前年の109.0から3%の上昇となった。世界不定期船係船量は、市況の一般的な好況により前年に引き続き減少を続け、39年1月の75方重量トンから6月には44万重量トンとスエズブーム以来の記録的な減少を示したが、その後はわずかながら増加している。
一方油送船の運賃市況は、季節的需要に支えられて38年末以来上昇を続け、1月の運賃指数(ノルウェーシッピングニュース)は86.7と38年2月以来の高値を示した。しかし2月に入ると需要の減退により49.9と大幅に下落し、その後は全般的に低位に推移し、本格的な需要が発生する12月に入っても、夏場以後係船量の減少、グレンタンカーの石油市場への復帰、暖冬等が原因となって例年ほどの水準には達せず、運賃指数は55.4に留まった。39年の平均運賃指数は47.5と前年の54.9を14%下回ることとなった。38年末以来減少を続けた油送船の係船量は、市況の変動に伴って大幅に増減し、2月の65万重量トンから7月の243万重量トンまで増加した後は再び減少し、40年1月には41万重量トンと記録的な減少を示した。また穀物市況の一般的好況によりグレンタンカーの就航量の増加が目立ったが、2月の94万重量トンから7月の226万重量トンに増加した後は再び100万重量トン台に減少している。
世界の商船船腹量は、39年6月末1億5,300万総トンで、前年同期より714万総トン4.9%の増加で、前年の伸び率4.2%を上回った。このうち油送船の船腹は5,056万総トンで、近年の油送船貨物の大幅な伸びを反映して、対前年度伸び率は7.3%であった。また世界の進水量は、世界貿易の順調な伸びが新造船建造意欲を刺激し、1,026万総トンと前年より171万総トン20%増となり、近年まれにみる増加を示した。特に油送船においては輸送原価の低減のため大型化の傾向が顕著で、既に数隻の15万重量トンタンカーが発注されている。またソ連向け小麦輸送がきっかけとなった撒積貨物船の大量発注により、今後の穀物、石炭、鉄鉱石輸送における撒積貨物船の比重がますます大きくなるものと見られ、これらの就航により、一般不定期船市場が圧迫される懸念がある。
日本の外航海運の概況 39年の日本の貿易量は、38年に引き続き輸出、輸入とも大幅に伸び、輸出量は18.9百万トン、輸入量は174.2百万トンと前年比それぞれ13%、20%の増加を示した。一方これらの貿易に従事する日本の外航船腹量は、39年9月末で773万総トンに達し、前年と比較して65万総トン、9.2%増とかなりの増加を示したが、貿易量の増加には追いつかなかった。輸出輸送においては、主としてこの輸送に当たる定期船の増加はわずかな量に留まったが、これを積極的に邦船に積み取った結果、輸出の積み取り比率は前年の49.6%から50.8%に向上し、輸入輸送においては、輸送量の増加に船腹量の増加が追いつかなかったため、前年の46.9%から44:5%に悪化した。
日本の外航船舶による39年の運賃収入は、輸送量の増加、全般的な好況により輸出輸送において788億円、輸入輸送において1,864億円、三国間輸送において173億円、合計2,825億円に達し、これは前年の2,491億円に対し334億円、13.4%の増加となり、前年の伸び率12.4%を上回った。
39年の海運関係国際収支(IMF方式)は、運賃においては、受払とも前年に比べほぼ同じ伸び率を示し、収支尻は229百万ドルの赤字で前年に比べ41百万ドルの悪化となった。その他においては、邦船船腹の不足からくる外国用船の増加による用船料の支払いが大幅に増加したほかは、船用油の大幅受取増、入港外国船の増加、港湾諸経費の引き上げ等による受取増により港湾経費は大幅に改善し、運賃以外の収支尻は188百万ドルの赤字で、前年に比べ3百万ドルの悪化に留まった。この結果総計417百万ドルの支払い超過となった。
39年度の海運業の収支状況は、定期船運賃の上昇、海運集約化の効果等によりかなり好転している。整備計画提出済みの45社についてみると39年度の総収益は3,353億円に達し、減価償却を除く費用は2,775億円で、償却前利益は578億円となり、償却不足も着実に解消しつつあるなど、自立体制確立への道を着々と歩んでいる。
外航海運の諸問題
今後我が国の貿易量の大幅な拡大に伴い、貿易外収支の悪化が予想されており、これらの事態に対処して、外航船舶の建造を強力に推進することにより、邦船積み取り比率の向上、三国間輸送への進出を図り、貿易外収支の中に大きな比率を占める海運関係国際収支の改善を図る必要がある。今後の船腹拡充計画は、これらの方針に基づいて行われることとなり、現在我が国の産業における重化学工業の比重が高まっている折から、原材料及び燃料の輸入が増加することを考慮して、油送船及び鉱石専用船に重点を置くと共に、輸出の増大、三国間輸送の拡大とも相まって定期船、一般不定期船にも相当の比重を置くこととなった。今後の船腹拡充が円滑に推進されるか否かは、建造資金の確保いかんにかかっており、国際競争力の上からも、特に財政資金の弾力的運用が重要である。
開銀融資方式による外航船の建造量は、24年度の5次計画造船から38年度の19次船まで434隻465万総トンにのぼる。39年度の計画造船は、前年度の2倍強にあたる120万9,000総トンに達した。このような大量建造実現の要因としては、海運国際収支改善のための外航船腹拡充方針が打ち出されたこと、海運集約の実施により海運業の企業体力が改善されたこと、さらに財政融資、利子補給等一連の海運助成策によって邦船の国際競争力が備わってきたこと、その他荷主が邦船利用に積極的に協力したことなどが考えられる。さらに40年度の21次船は150万総トン見込まれていたが、産業界の要請に基づく建造計画は、これを大幅に上回ったため、180万総トンまで引き上げられた。
邦船積み取り比率の向上のためには、充分な国際競争力を備えた外航船舶の拡充が不可欠であるが、輸出入契約条件に左右されるところも大である。FOB建輸入、CIF建輸出については、我が国の荷主が直接船腹手当を行うことが可能であるが、39年のFOB建輸入、CIF建輸出の輸入及び輸出総額に占める比率は、それぞれ33%、63%で特に輸入における比率が低い。しかし最近では、我が国の荷主による邦船利用への意識も高まってきている。
一方輸出貨物の約70%を積み取っている定期船においては、定期船運賃の悪化、我が国海運業の企業基盤のぜい弱化等により、貿易量の増加に見合って配船数を増加させることが出来ない実情にあった。また戦後我が国の定期船隊は、外航々路への復帰が遅れたため、世界定期船市場において未だ戦前の地位を回復するには至っていない。40年3月の月間平均航海数は、122航海で前年同期に比べ15航海増加しているが、過去数年間の航海数の伸びは輸出量の大幅な伸びに比べれば極めて微々たるものであり、輸出の邦船積み取り比率も33年の58.6%を戦後の最高として、その後は低下の一途をたどってきた。一方40年の3月の外国定期船の平均月間航海数は、142航海で前年同期に比べ17航海増加しており、航海数においては外国船が圧倒的な勢力を保持している。各定期航路の運賃は盟外船活動に対する対抗手段としての運賃引き下げ等により低位におさえられていたが最近船員費、港湾諸経費の値上がり等による運航費の高騰が著しく採算性が極度に悪化してきたので、39年度以降ほとんどの航路において運賃引き上げが行われ、今後は全般的に収益率の向上が期待される。我が国の輸出輸送の中で最も大きな比率を占める北米定期航路においては、盟外船の活躍も一段と激しく、同盟運賃は低位に抑えられていたため、採算性は極度に悪化していた。しかし39年度はニューヨーク定期航路運営会社が設立されて航海数の調整等を行ったこと、対米輸出貨物が増加したこと、好運賞品目の比重が大きくなったことにより、当航路における採算性も大幅に改善した。一方欧州航路は最も採算性のよい航路の1つであるが、同盟の結束も堅く、我が国の船舶の航権の拡張も難行しており、当該地城向け輸出の顕著な伸びに対し、邦船の配船数は増加せず、積み取り比率は年々悪化の傾向をたどっている。その他中南米、カリブ海方面向け、五大湖地方向け、及びセイロン向け輸送の積み取り比率は極めて高い。一方インド、パキスタン、ビルマ、フィリピン等の諸国においては、ナショナルラインの整備と共に、政府が自国船主義を唱えて積み取り規制を行っているため邦船積み取り比率は低く、将来の見通しは暗い。
現在我が国の定期船隊は絶対量が不足している上に、相当量の低性能船をかかえており、最近外国用船の増加が目立っている。今後の問題としては我が国海運業界の協調により、我が国定期船隊の世界定期船市場における地位を高めると共に高性能かつ経済性の高い新鋭船の建造による定期船隊の整備拡充に努める必要がある。
国際航空
39年の国際民間航空機関(ICAO)加盟101ヵ国の定期空輸送量は、総計197億万トンキロ(前年比16%増)と大幅に増加した。
旅客の増加もさることながら、貨物が前年比18%増とかなりの伸び率を示したのが注目される。各国の貨物専用便の増強等、航空貨物の将来には大きな期待がかけられている。
また、39年4月から20%の運賃値下げを実施した大西洋線の旅客は、前年比26%の大幅増を示し、欧米航空会社に値下げを補ってあまりある増収をもたらした。世界航空の運賃水準の基準とされている大西洋線運賃の引き下げが他の地域に及ぼす影響が注目されたが、39年10月アテネのIATA(国際航空輸送協会)の会議では、SST(超音速機)の出現を控えて、社内蓄積に努めるという各国の意向が反映して、1967年(42年)3月まで旅客運賃は据え置かれることとなったので、当面旅客運賃水準は弱含みながら横ばいの傾向をたどるであろう。
次に日本の国際航空についてみると、39年度の国際定期航空輸送量は、210百万トンキロ(前年度比24%増)と、前年に続いて大幅に増加した。旅客、貨物、郵便すべてに伸びを示したが、観光渡航自由化、オリンピック開催等による日本出入国旅客の増加を反映して、旅客輸送量の伸び方が大きい。
一方輸送力も、360百万トンキロと、前年度比31%増加したため、重量利用率は59%(前年度63%)と再び低下したが、日本航空の国際線収支は、新機材購入等の激しいジェット化競争の影響から立ち直り、安定した経営の下に32年度以来7年ぶりに黒字を計上した。しかし、過去累積してきた未償却の乗員訓練費の特別償却を行い、かつ前期繰り越し損失を相殺したため、乗員訓練国庫補助金を加えても39年度の未処分利益は1億円余に過ぎない。
乗員養成については、その供給源あるいは訓練施設等において日本は諸外国と比較してかなり不利な立場にあり、それに要する膨大な経費が国際競争力を弱める1つの原因になっており、その養成難が多数の外人パイロットの雇用を必要とし、多額の外貨の流出を招いている。
39年度の航空国際収支(IMF方式)は、受取6,575万ドル(前年度比19%増)、支払い11,263万ドル(同9%増)、差し引き4,688万ドル(同2%減)の赤字と前年に比較して良好な成績を収めたが、これは燃料費の値下がり、郵便物の取り扱い方針の変更等によるもので、運賃についてみると、日本人出入国者数、輸入貨物の増加等により、その赤字幅は、拡大している。
本邦出入国旅客の日本航空積み取り比率が、 第6-6図 にみるように便数比を上回り、39年においても邦人45.4%、外人19.3%、全旅客26.2%と幾分かの上昇を示したが、依然としてかなり低率であることが最大の原因であり、この向上を図る必要がある。試みに北回り欧州線を運航している各国会社の自国人積み取り比率をみると 第6-3表 の通りであって、日本は旅客数に比較して運航回数が相対的に低いという事情もあり、その積み取り比率はあまりにも低い。
39年9月政府は「国産品認識運動」の一環として、自国機利用の方針を閣議決定したが、その範囲は政府職員等に限定されている。海外旅行自由化もあり、日本人旅行者の増加が予想されるので、広く民間における自国機利用の徹底が望まれる。
しかし積み取り比率を向上させ、航空国際収支の改善を図る基本的対策は、我が国航空会社の路線の延長によるサービス・エリアの拡張と運航回数の増加にある。そのためには、我が国企業の国際競争力の強化、現在でも不足している国際線乗務員の増強が必要なことはいうまでもないがこれと並んで各国との間の航空協定の改定、締結を進めなければならない。
現行日米航空協定は27年に締結されたものであるが、米国航空会社は首都東京に乗り入れ、さらに香港、マニラ等への東京以遠の路線を運航しているのに対し、我が国航空会社は米国西海岸のサンフランシスコ、ロサンゼルスまでしか乗り入れていない。
日本─米国東海岸の路線を持つ米英の航空会社の39年の輸送実績をみると、同社の日本出入国太平洋線旅客のうち、47%は米国東海岸以遠に直行する旅客であり、また38年9月の調査によれば、日本航空を利用する米国向け日本人の50%強は米国東海岸以遠に赴き、そのうちの30%弱の旅客は大西洋を横断し、ヨーロッパ内の地点を旅行の最終目的地としている。
この事実からみて、日米航航協定は首都または政治経済の中心都市間に相互いに乗り入れるという国際航空の「相互乗り入れ」の原則から外れ、形式的に不平等であるのみならず、実質的に我が国航空会社をかなり不利な立場に立たせているといえる。
日米間のこのような不均衡を是正するため、我が国は36年以来現行協定の改定によるニューヨーク以遠の乗り入れ権を要求して米国と交渉を行ってきている。
40年4月の日英航空協定改定交渉では、香港経由の東京─シドニー線の開設は、イギリスの認めるところとはならなかったが、米国─大西洋経由─ロンドン線が認められた結果、米国が以遠権を含むニューヨーク乗り入れを認めれば、我が国待望の世界一周路線が実現することになる。
国際観光
世界的な国際観光隆盛の傾向は、39年になっても依然衰えをみせず、官設観光機関国際同盟(IUOTO)の資料によると、外国旅行者数は延べ10,570万人(前年比16%増)、消費額102.3億ドル(同12%増)とそれぞれ大台を始めて突破し、空前の数字を記録した。
各国における国民所得、余暇の増大に加えるに特に39年にはニューヨーク世界博覧会、オリンピック東京大会等多くの催し物があり、さらに前述の世界観光市場の中心をなす欧米を結ぶ大西洋航空運賃の大幅引き下げがこれに拍車をかけた。
しかし順調な伸びを示し、いまや世界的取引の最大の項目の1つとなった国際観光の将来に全く問題がない訳ではない。米国のドル防衛策に伴う海外旅行抑制の動きは、前途にただよう暗雲の1つである。
40年2月のジョンソン国際収支教書は、昨年11億ドル余の赤字をもたらした海外旅行に特別な注意を払い、再度の土産品の免税制限の強化、See the U.S.A.運動と海外観光客誘致活動の強化の2点に触れている。世界最大の観光客送り出し国、米国のこの様な動向は、従来の例からみてその実効性に疑問がもたれているとはいえ、世界の観光事業界に相当の打撃を与え、観光客誘致競争をさらに激化させずにはおかないであろう。
次に日本の国際観光についてみると、39年の来訪外客数は35.3万人(うちオリンピック時の来訪者は選手、役員等9,199人を含めて、50,662人)前年比16%増と、37、38年を上回る対前年増加率を示したものの、見通しをかなり下回った。
これは見通しが過大であった反面、オリンピックが観光シーズンに行われたため、一般客がラッシュを避けて来訪時期を繰り延べたことによるとされているが、オリンピックのような世界的イベントを成功裏に遂行したことは、絶好の観光宣伝を行ったことになり、我が国への関心を高め、今後の来訪外客の増大に期待をもたせるといえよう。ただ我が国の外客来訪状況をみると、4月と10月をピークとし、12月~2月にかけての冬季をボトムとする季節的変動が著しく、そのため観光関係事業の経営を圧迫し、ひいてはコスト高を生むことにもなっていることに1つの問題がある。
39年の海外旅行の外貨受取は6,198万ドル(IMF方式)、前年比15.7%増である。
一方邦人の旅行者は、39年22.1万人(前年比18.7%増)、外貨支払い7,814万ドル(同19.5%増)とそれぞれ来訪者、受取の伸び率を上回る増加を示した。これは主として39年4月からの観光渡航自由化によるものであるが、39年4~12月における観光渡航者は26,685人、その外貨使用額は1,017.8万ドルに達した。この結果、海外旅行収支は、1,616万ドルの赤字とその幅を拡大した。過去の我が国の支払いは、渡航制限が緩和された年は著増することから明らかな通り( 第6-4表 参照)制度的変更の影響を大きく受けてきた。観光渡航の自由化を持って旅行回数、持ち出し外貨に制限があるとはいえ、海外旅行について制度的枠はすべて外されたこととなるので、支払いは今後大きく変動することなくかなりのテンポで増加する傾向をたどるであろう。中期経済計画では43年度においてはかなり大幅な赤字幅の拡大を見込んでいる。
第6-7図 欧米主要観光国と日本の海外旅行収支尻(IMF方式)
OECD加盟等により先進国の仲間入りをした我が国としては、海外旅行収支改善のために渡航制限の強化等消極的な後ろ向きの方策をとることは許されない。来訪客増大による外貨収入の増大を図ることが唯一の基本的対策である。
このためには、外に対しては外客誘致活動を強化し、内にあっては受け入れ体制の整備を図らねばならないが、具体的には前者については、国際観光振興会及び40年6月に設立されたコンベンション・ビューロー(国際会議、行事を誘致し、その円滑な運営を図る機関)等を通じての広報宣伝活動の強化、例えば東南アジア諸国の欧米向け共同宣伝体制の確立等、後者については旅行の効率化、多様化、長期化をもたらす国際観光地及び観光ルートの設定・整備、近年増加しつつある中級所得者を対象とする低廉な宿泊、食事施設の整備、観光資源の多角化としての産業観光の開発あるいは出入国手続きの簡易化等が行われつつある。
国内通信
国内通信の概況
39年度の国内通信はおおむね平穏に推移し、通信需要は景気調整の影響を受けながらも、生活水準の向上と個人消費支出の堅調に支えられて着実な増勢を続けた。
郵便については、通常郵便物は景気調整の影響に加えるに、選挙関係郵便物の差し出しが少なかったことも原因して、38年度の増加率(8.0%増)をかなり下回る伸びを示し、8,843百万通(前年度比4.2%増)となったのに対し、小包郵便物は38年末のような引き受け制限が行われなかったため、38年度の増加率(8.0%増)を上回る伸びを示し、129百万個(前年度比9.4%増)となった。通常郵便物の増加状況を種類別にみると、対前年度増加率では、第1種は5.5%増、第2種は3.0%増、第5種は6.1%増、いずれも38年度の増加率(第1種9.9%増、第2種5.8%増、第5種9.5%増)をかなり下回っているのに対し、第3種は1.5%増で38年度の増加率(1.8%増)とほぼ同じであり、また、第4種は9.9%増で38年度の増加率(6.7%増)を大幅に上回っており、景気調整の影響を第1、2、5種は受けやすいのに対し、第3、4種は受け難いことを物語っている。対前年度増加数では、第5種は106百万通で最も多く、第1種は96百万通、第2種は65百万通でこれに次いでおり、この結果、通常郵便物全体に占める割合は第5種と第1種が38年度よりやや増加して20.9%(38年度20.5%)と20.8%(同20.5%)になったのに対し、第2種は38年度よりやや減少して25.6%(同25.9%)になっており、需要構造の変化がなお継続していることを示している。速達は38年度の増加率(90%増)をやや下回りながらもなお8.0%増という高い増加率を示しており迅速な通信に対する需要の増大を物語っている。電話については、加入数の増加と市外通話サービスの向上などもあって、年間総通話度数は326億度となったが伸び率の点では15%増と前年度と同程度に止まった。
また、電話の需給関係については、年度中増設数86万を大きく上回る109万の新規申し込みがあって、電話加入申し込みの年度末積滞数は実に162万に増加した。この活発な電話需要の中で、生活水準の向上に伴い、住宅用電話の申し込みが年々増加の傾向をみせており、開通加入電話数のうちに占める住宅用電話の割合が前年度末18.7%から39年度末21.3%と増加した。また、全体的な需要増加の中にあって、地方特に大都市周辺地域での申し込み増加が目立ち始めており、伸び率の点では大都市のそれを上回る勢いをみせている。
電信については、電報が年間総通数9,041万通とやや減少の傾向をみせたが、記録通信総体としての需要は増加している。特に経済活動の規模の拡大、企業経営事務の近代化を反映して、加入電信の利用はまことに活発で、加入数が35%増の9,933加入となったこと、取り扱い都市数が85都市から115都市に増加したことなどもあって、その通信量は45%増の1,841万度と飛躍的な増加を続けている。
また、企業内での通信に利用されている各種専用線については、総回線数119千回線となり、前年度末110千回線に対し、8%の増加となった。
放送受信契約については、テレビ受信可能地域の拡大が限界に近づいたこと、テレビ受信機の普及が一巡したことが原因して、その伸びは鈍化した。契約甲(すべての種類の放送の受信契約)は1,713万件(前年度比9.4%増)となり、増加率がかなり低下し、契約乙(ラジオ放送のみの受信契約)は275万件(同25.8%減)となり、契約甲に移行する世帯が減少したことも手伝って減少率がやや低下した。この結果、普及率は契約甲(テレビ受信とみなし得る)が81.8%、契約甲乙合計(ラジオ受信とみなし得る。)が95.6%となった。
放送の広告メディアとして機能は飛躍的に高まってきており、これに投じられる広告費は年々増加し、39年には、テレビが1,081億円(前年比20.2%増)ラジオが17.0億円(前年比0.6%減)、合計1,251億円(前年比16.9%増)に達し、新聞の1,292億円に近づいてきたが、景気調整の影響もあってその伸びはかなり鈍化した。36年以来ほぼ横ばいを続けているラジオ広告費は別として、36年には38.9%、37年には28.0%、38年には30.3%という高い増加率を示してきたテレビ広告費の伸びの鈍化は、37年景気調整下にありながらも、なお高い増加率を示したことと考え合わせると、単に景気調整の影響のみではなく、放送区域の拡大と広告放送時間の増加が一応の限界に近づいてきたことが原因して、テレビ広告費のシェアの拡大が一応の限界に近づきつつあることを示しているものと考えられ、一般放送事業経営の前途には楽観を許さぬものがある。
通信施設の拡充と通信性能の向上
激増する通信需要に対して、通信供給力を増強すべく、通信施設の拡充が進められ、これに伴って通信機能は著しく向上した。
郵便については、前年度に引き続き郵便局舎の新増改築が進められ、老朽局舎の約900局が改善されると共に、局舎面積は3.5%増加し、郵便業務運行の能率化に資することとなった。郵便局数は総計18,153局となり、郵便窓口機関の普及率は、人口1万人当たり1.9局、面積100平方キロメートル当たり4.8局に向上したが、人口1万人当たり、スイス6.9局、西ドイツ4.8局、イギリス4.7局、面積100平方キロメートル当たり、スイス9.7局、西ドイツ11.1局、イギリス10.3局と比較するとなお充分とはいい難い。また、東京では、39年7月から深夜における郵便物の自動車輸送が開始され、交通難による郵便物運送速度の低下が避けられることとなった。
電信電話については整備拡充のため39年度中に2,945億円にのぼる設備投資が行われた。すなわち加入電話86万が増設されて、年度末加入数は633万、公衆電話は29千個が増設されて224千個となり、電話機総数は971万個、普及率(人口100人当たり電話機数)は9.9と向上した。また延べ400万キロメートルの市外回線が増設され、総延長1,857万キロメートルとなり、サービスの大幅な機能的向上改善が行われ、市外通話の即時化率(全市外回線数中即時回線数の占める割合)も83.0%、ダイヤル即時化率(同ダイヤル即時回線数の占める割合)は68.2%と上昇した。このうち、東、名、阪、マイクロ第2ルートの完成などにより、東京からダイヤルで通話可能な対地数は、357となったが、特に40年2月14日、東京と全国道府県庁所在地がダイヤルで結ばれたことは、我が国の市外通話サービス上、一時期を画すものといってよいであろう。また我が国経済の中心6大都市相互間もダイヤルで通話が可能となった。
以上のような電話サービス向上のための基礎設備として、163局の自動式電話局が新設、または旧方式から切り替えられた結果、39年度末の電話自動化率(全加入電話数中自動式局加入数の占める割合)は82.0%と向上した。
しかしながら、我が国の電話水準について38年度の数字によって比較すると世界主要28ヶ国中自動化率第20位、普及率第19位として示される通り、未だに充分なものとはいえない。すなわち地方主要都市とその周辺にある町村との間の市外通話については依然としてその半数以上の区間が即時化されぬままであり、電話の自動化からもとり残されて、未だに電話の普及率も低いという地域あるいは集団的な需要が発生して急速にはこれに応じられないような地域などが見受けられる状態である。このような電話サービスにおける地域的対策の1つとして、住宅団地あるいは農山漁村における電話の普及を計るために団地自動電話及び農村集団自動電話の制度が39年度半ばから試行されて、その効果が期待されている。
また事務機械化による企業経営資料の処理集中化のため、従来から各企業内などの通信に供されてきた専用回線について、より高度な機能、品質に対する一般の要望が強まってきており、これに応じるものとして高速度データ伝送用の高品質専用回線が実用化された。これにより、データ通信の速度は飛躍的に高められ、企業中央に設置された電子計算機組織と高速度データ伝送回線を結合することによって、効果的な集中処理を行うことが可能となった。また遠隔測定や遠隔制御など多方面への応用の道もあり、今後、企業経営、生産活動などのなかで重要な役割を果たすものと思われる。
有線放送電話については施設の統合、共同設置等により、施設数はやや減少して2,599施設(前年度比1.9%減)となったが、加入数は順調な伸びを示し、約265万(同17.7%増)となった。なお公社電話と接続通話を行うものは153施設(全体の5.9%)となっている。1施設当たりの加入数は、38年度末には903であったものが、39年度末には約1,118となり、大規模化の傾向を強めると共に、自動交換方式を採用した高規格のものの増加も目立ってきた。自動交換方式のものは比較的多額の建設資金を必要とするが、交換要員の確保が困難であること、利用者の間で近代化の意欲が強いことなどの理由により、増勢を続けており、39年度末には約100施設に達している。
放送については、テレビ放送網の拡充が特に著しかった。本年度においては、統計295局のテレビ局(日本放送協会総合96局、同教育113局、一般放送107局)が建設され、カバレージ(全国世帯数に対する受信可能地域内の世帯数の割合)は日本放送協会の総合テレビが89%に、同教育テレビが88%に、一般放送が85%(推定)に達した。また、電電公社のマイクロ回線の高規格化が進んだことにより、カラーテレビの中継可能地域が増大し、カバレージは76%に達した。なお、本土、沖縄間マイクロ回線の開通は沖縄との間でテレビ番組の中継を行うことを可能にした。
社会経済の発展は、警察、消防、水防等の保安用鉄道、海運、航空等の交通用、漁業、タクシー、電力、放送等の事業用その他の通信需要の大量化をもたらし、これらの需要を賄うための専用電気通信施設は急速に拡張されている。この種の電気通信系は、固定通信系と移動通信系に大別され、固定通信系は、公衆電気通信施設の専用による有線及び無線回線、私設の有線電気通信設備による有線回線私設の固定無線局による無線回線によって構成され、移動通信系は、主として、自動車、船舶、航空機等の移動無線局とその基地の役割を果たす固定無線局による無線回線によって構成されているが、この5年の間に、固定通信系を構成している各通信施設は、1.3ないし1.9倍、移動通信系を構成している各通信施設は2.2ないし2.6倍と急速にその規模を拡大している。特に、タクシー・ハイヤー事業及び漁業のための移動通信に対する需要の増大は激烈で、その移動無線局は5年間に、タクシー・ハイヤー事業用では約16,900局、漁業用では5,300局も増加しており、割り当て可能な周波数のひっ迫ははなはだしく、単側波帯方式、選択呼出方式その他の新通信方式の開発導入等周波数の効率的使用のため種々の努力が続けられているが、本年度においては、陸上移動無線対策として、従来の1周波分散基地方式に比して効率の高い2周波集中基地方式が採用され、39年8月から実施された。
国内通信当面の課題と通信施設整備の方向
経済の高度成長は、通信需要を単に量的な面のみならず、迅速性、確実性等質的な面でも増大させると共に需要構造の変化を激化させ、さらに、大都市及びその周辺地域における需要の大量化をもたらしたため、通信投資の全般的不足を生ずると共に大都市及びその周辺地域における投資不足を一層深刻にした。
郵便物の激増による郵便局舎面積と要員の不足の激化は、郵便業務運行の非能率化をもたらし、一時は、慢性的な郵便遅配が社会問題にまで発展したこともあった。その後、局新舎の増改築と要員の確保に努力が払われた結果、30年度当時と比較して、局舎面積は31%増、定員は41%増となり、事態は相当程度の改善をみたものの、郵便物数は30年度当時の86%増という予想を上回る増加を示しているため、なお十分とはいい難く、大都市の郵便外務員の雇用難、夏期、年末首等郵便物数増期における臨時職員の求人難等のため、要員の確保は年と共に困難の度を強めつつあり、労務問題悪化の際には、ともすれば郵便遅配を生じやすい状態となっている。また、郵便事業は、配達等の作業の性質や郵便局の分散配置の必要などから、人力に対する依存度が著しく高いという特質を持っており、事業運営費の約70%が人件費となっているが、労働需給のひっ迫による人件費の高騰の結果、この構成比は年々増加の一途をたどり、コストの上昇をもたらした。郵便事業は、従来、第3、4種及び小包の赤字を第1、2、5種の黒字で補う形で運営されてきたが、コストの上昇はついに36年度からは第2種をも赤字に転じさせ、事業収支を著しく悪化させている。
これらの諸問題に対処して、当面、郵便の迅速性と確実性を確保するには、局舎の改善と要員の確保に努めると共に、可能な限りでの作業の機械化あるいは郵便物の規格の統一、郵便番号制度の実施、新住居表示制度の完全実施等によって、郵便業務の能率化と労働生産性の向上に努めることが必要であるが、さらに、これらの諸問題の抜本的解決のためには、経営の基礎の安定化を図ると共に、適切な投資に努め、通信需要の増大と構造変化に即応し得るように、取集、運送、配達に終わる郵便業務の各過程が有機的に行われうる作業体制の確立と利用関係の合理化に努め、もって、郵便事業の体質の根本的改善を図ることが不可欠である。これによって、初めて、すべての郵便物が翌日には配達されるという今日の社会の要求する郵便の実現に向かって第一歩を踏み出すことが可能となるであろう。
電話の新規加入申し込みは年々増加を続けて常に電電公社策定の設備拡充計画による増設数を上回っており39年度中も新規申し込み数は109万を数え前年度末積滞数138万と合わせて、増設対象需要数は247万となり、このため年度中86万の増設も需要の35%を充足したに過ぎず、39年度末積滞数は実に162万にも達し電話の需給関係は依然ひっ迫の度を増している。
このように著しい増加を示している電話需要の新しい傾向として、住宅用電話の需要増加と大都市周辺地域における電話需要の大幅な増加とが挙げられるが、これらは国民の日常生活の中で電話が必需品化してきたこと、また各主要都市の成長、巨大化に伴って社会、経済圏が拡大され、その周辺地域へ影響が及んできたことなどを反映したものであろう。このような傾向を生んだ一因と思われるものに団地内の電話需要があり、近年都市周辺に次々と大住宅団地が造成されるに伴って、一時に大量な集団的需要を発生しているが、一方、通信施設のように設備投資の懐妊期間が長い事業にあっては、これらの急激な需要増加には容易に対処できないため、その当面の打開策として団地自動電話の新制度が39年度中に試行された。
しかしながら団地自動電話制度は、大量な電話需要の中での局部的な問題に対するものであって、年々増大する電話申し込みの積滞を解消するためには、大量かつ集団的新規需要の発生、その地域一帯の経済活動の活発化による需要増加などの誘因となるような、他産業の大規模な設備投資に対してはこれと歩調を合わせて計画的な設備投資を行っていくと共に、全般的な積極的設備拡充にまつほかはない。
我が国の電話事業は従来、活発な需要にもかかわらずあまりにも低い普及度の結果として、少数の電話施設を過度に酷使し、従って単位当たり事業収入は比較的高いという状態に支えられてきたのであるが、最近、住宅用電話あるいは地方低利用度地域の電話などの増加と共に、1加入当たり収入が逓減の傾向をみせている。また、支出面では、人件費の増高、減価償却費、利子、債券発行差損償却費等の増加のため収支差額は縮小の傾向にあり、また将来債務償還額の増加が予想されることなどの要因もあるので、これらの問題を打開するための積極的な対策が必要であろう。
社会経済組織の高度化は、情報伝達手段としての通信に対する依存度を一層高め、通信需要の増大と構造変化を激化する。これに対処して、通信供給力を急速に増強するには、第一に、現在の需要に対する投資の相対的立ち遅れを取り戻すと共に将来の需要増にも即応し得るように、長期的観点に立った総合的な投資計画を樹立し、従来より一層重点的かつ効率的な投資を行っていくことが必要である。また、投資の不足を補うと共に、投資のなお一層の効率化を可能ならしめるよう、新技術の開発に努めることも重要である。さらに、通信施設の整備は迅速な情報交換を可能とすることによって、経済圏の内部組織及び相互間係の緊密化をもたらし、経済活動を活発化すると共に、他の社会資本投資の効率を高める効果を有するから、地域開発に際しては各地城における将来の通信需要の増大と構造変化を十分考慮に入れて、積極的に投資を行っていくべきである。
第二に、各種の通信施設の長短相補い、全体として通信機能の向上と通信投資の効率化を可能ならしめるよう、通信施設の整備拡充と合理的利用に努め、国民経済的にみて能率的な総合的通信体系の確立を図ることが必要である。電波の利用についてもこのような総合的通信体系の一環をなす無線通信回線の設定という観点から、その合理化を図るべきであろう。特に、専用電気通信系を構成する通信施設は、公衆電気通信施設の専用回線、私設の有線電気通信設備、各種の無線局等多種多様にわたっているから、能率的な専用電気通信系の確立のためにはこれら各種の通信施設の合理的配置に努めることが不可欠であろう。
国際通信
国際通信の概況
39年度の国際通信は終始活況のうちに推移し、通信需要は輸出の好調を反映して、著しい増勢を続けたが、特に、太平洋横断ケーブルの開通による通信機能の向上に刺激された電気通信需要の増大は顕著であった。
郵便については、差立到着合計で、通常郵便は14,616万通(前年度比9.7%増)、小包郵便物は251万個(同10.1%増)となり、いずれも38年度の増加率(通常郵便物8.8%増、小包郵便物9.3%増)を上回る伸びを示した。航空便の伸びは特に著しく、通常郵便物では13.6%増(38年度8.4%増)、小包郵便物では16.3%増(同14.5%増)と、いずれも38年度を大幅に上回る増加率を示しており、航空便の全体に占める割合は38年度よりかなり増加して、通常郵便物では64.0%(38年度61.8%)、小包郵便物では34.4%(同32.6%)になり、迅速な通信に対する需要の増大を物語っている。通常郵便物のうちでは、書状が全体の51.1%と最も多く、印刷物35.9%がこれに次いでおり、また、書状の90.2%は航空便、印刷物の77.7%は船便となっているが、その対前年度増加率は書状では、航空便が9.8%増(38年度7.6%増)、船便が6.6%増(同6.0%増)と比較的落ち着いた状況を示しているのに対し、印刷物では、航空便が49.5%増(同17.7%増)、船便が2.4%増(同8.4%増)と航空便の増加が特に激しく、増大する需要が船便から航空便に移ってきていることを示している。
電気通信については、発信着信合計で、電報は488.3万通(前年度比5.0%増)加入電信は95.2万度(同19.5%増)となり、いずれも38年度の増加率(電報7.4%増、加入電信22.6%増)をやや下回る伸びを示したのに対し、電話は37.1万度(前年度比42.3%増)となり、38年度の増加率(14.0%増)を大幅に上回る伸びを示した。電報と加入電信の伸びがやや鈍化したのは、電信専用回線が大量に増設されたため、大口の需要者がこれに移行したことが一因となっており、また、電話の伸びが著しかったのは、太平洋横断ケーブルの開通によって、電話回線が大量に増設され、安定した良質かつ迅速な通信が可能となったこと、対米通信料金の一部値下げが行われたことなどが原因となっている。太平洋横断ケーブルの開通が最も大きな影響を与えたのは電話で、39年度当初は前年同期の通話度数を7~8%程度上回るに過ぎなかったもので、ケーブル開通の39年6月から年度末までは、月平均49%も上回ることとなった。
通信投資の充実と今後の方向
太平洋横断ケーブルは、日本から、グアム、ウェーキ、ミッドウェー等の島々を経由して、ハワイに達する全長9,778キロメートルの海底ケーブルで、日本と米国の共同のもとに、37年2月に建設に着手し、総工費約270億円(日本は約100億円を投資)を費やして、39年6月に完成した。このケーブルは、電話128回線(電信であればその約20倍)という豊富な回線容量を有すると共に、短波のように磁気あらし等自然現象の影響を受けることなく、常時安定した通信を可能ならしめる高性能の同軸ケーブルであり、ハワイにおいて第1、第2ハワイケーブル(ハワイ─米本士)と英連邦太平洋ケーブル(カナダ─ハワイ ─ニュージーランド─オーストラリア)に、グアムにおいてグアム・フィリピンケーブル(グアム─フィリピン)に接続されることにより、世界通信幹線網の一環をなすこととなった。
太平洋横断ケーブルの開通により、米国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、フィリピン等との間で、常時安定した良質かつ迅速な通信を自動的または半自動的に行うことが可能となり、特に、電話については、市内電話並の自然で明りょうな即時通話が行えることとなり、さらに、豊富な回線容量を有するため、多数の専用回線を設けることができるなど、通信機能は著しく向上した。
貿易量と通信量の統計的相関がその傾向を示すように、迅速で確実な大量の通信が国際貿易の振興に寄与する度合いは極めて高い。従って、通信施設の不備が通信需要を抑圧し、貿易の発展を阻害することのないよう積極的な先行投資を図っていく必要があることはいうまでもない。我が国の通信量と通信回線の状況を大陸別にみると 第6-6表 の通りで、中南米州とアフリカ州については、通信量がわずかなため、現在のところ問題はなく、北米州と大洋州については、通信量は著しい伸びを示しているが、太平洋横断ケーブルによって大量の回線の増設が可能であるので、これも問題はない。しかし、アジア州とヨーロッパ州については、通信量は北米州に劣らない伸びを示しているのに対し、通信施設の大部分はひっ迫のはなはだしい短波無線であるので、回線の増設は容易ではない。これらの地域については、太平洋横断ケーブルの使用は、極めて限られた範囲内でしか可能でなく、通信施設の増設には海底同軸ケーブル等回線容量の豊富な通信施設の設置を考慮することが必要である。
世界通信幹線網計画の一環として、日本と東南アジア諸国を結ぶ東南アジアケーブル(日本─台湾─香港─フィリピン─ベトナム─タイ─マレーシア(シンガポール)─インドネシア)の敷設が計画され、また長崎、ウラジオストック間で現在使用されている旧式の電信ケーブルを新式の海底同軸ケーブル(日本海海底ケーブル)に改めることも計画されているが、東南アジアケーブルの実現は、英連邦諸国を結ぶ英連邦ケーブルとの接続により、東南アジア諸国の大部分と、また、日本海海底ケーブルの実現は、シベリア経由により、ヨーロッパ諸国の大部分との間で高性能の通信回線の設定を可能にし、通信機能の飛躍的向上をもたらすこととなるので、今後の東南アジア、ヨーロッパ等との貿易の振興に大きく寄与するものと期待されている。海底同軸ケーブルの敷設は多額の資金と高度の技術を必要とするので、特に東南アジアケーブルの実現には、関係各国に対する経済協力が不可欠であろう。
同軸ケーブルと通信衛星の開発は、従来主として短波無線に依存していた国際電気通信に大きな変革を加えることになった。既に敷設された海底同軸ケーブルは、太平洋横断ケーブルのほかに、北アメリカ、ヨーロッパ間5条、北アメリカ、ハワイ間3条、ハワイ、ニュージーランド、オーストラリア間1条、グアム、フィリピン間1条等多数により、世界海底ケーブル網の形成が急速に進んでいる。また宇宙通信も、世界衛星通信系の実現を目的とする世界商業通信衛星組織に関する国際協定に47ヵ国が参加し、40年4月に半実験半商業用の静止衛星アーリーバードが大西洋上に打ち上げられたことによって、実用化の第一歩を踏み出した。今後は、短波、海底ケーブル、宇宙通信の三者が長短相補うことによって、能率的な通信を可能ならしめるよう、総合的な通信計画を樹立していくことが必要である。