昭和39年

年次経済報告

開放体制下の日本経済

経済企画庁


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昭和38年度の日本経済

鉱工業生産

むすび

 38年度の鉱工業生産は、前年度比15.3%増と予想を超えた急上昇を示した。3年続きの投資強成長に続く37年の軽微な調整過程のあとにもかかわらず、急速な回復、上昇を示した主因は、二重構造解消過程の根強い需要の増大にある。消費、財政、輸出等の需要が激しい構造変化を示すのみでなく、設備投資の内容変化も著しい。中小企業の合理化投資、流通部門での自動車、建物投資の急増など、従来とり残されていた部門の投資活動は強い。

 これらの需要要因の根強さにより、金融緩和と共に、いったん調整された在庫投資が回復した。年度後半には、大半の業種で稼働率の大幅な改善をみ、過剰能力を抱えていると思われていた部門の大企業においてすら、新たな設備投資意欲を示すに至った。

 今後の生産動向についてみると、引締政策の浸透により在庫投資は減少するだろうが、設備投資は底がたく、他の最終需要は堅調に推移すると思われるので生産は根強い動きを示すであろう。

 現在の需給状態をみると、設備投資を除く各最終需要は毎年上昇しているので、36年までの設備投資強成長による「過剰能力のこぶ」もほぼ解消された状態に近づいたものと判断される。ただ、34~36年と異なるのは、ほとんど全産業にわたり能力が一様に不足する状態にはないことである。一般機械、電気機械、電力業等の分野にまだかなりの余力があるので「投資が投資を呼ぶ」環は中断され、かつてのような設備投資ブームにはならないだろう。

 このように国内需要はさかんであるので、輸出の増大によって国際収支の天井を押し上げる努力いかんが、我が国経済の成長テンポを左右する主要な柱となろう。


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