昭和38年
年次経済報告
先進国への道
経済企画庁
昭和37年度の日本経済
労働
概観
今次景気調整期の特徴として、生産の急激な低下がみられなかったこともあり、37年度中の雇用、賃金面への影響は比較的軽微であったといえる。
36年度末ごろになって、雇用、賃金の増勢には若干の鈍化もみられたが、37年度初めの入職期における新規採用の手控えも少なく、一方春闘による賃金引き上げも前年度を下回るとはいえ、依然1割をこえる大幅のものであった。
労働面への景気調整の影響は調整策実施後、1年近くにしてようやく現れてきた。雇用は新規入職が一段落した後、生産の低下した製造業を中心に7月ごろより停滞的状況を示すようになった。他方、賃金面についても、夏期臨時給与の増勢鈍化がみられるようになり、春闘の賃上げ、初任給上昇の調整波及のおさまる年度後半に入ると定期給与は頭打ち状態を呈してきた。
この間、学卒者以外の労働需給については求人減少、求職増加の傾向がみられ、人員整雌、失業も緩やかながら増加を続けた。しかし、労働市場の改善という構造的条件変化の下にあって、景気調整による社会的摩擦現象としては大きな波乱なく推移し、調整策解除を転機に労働需給は改善に向かっている。
38年度に入ると、所定外労働時間の増加や中小企業の賃上げなどを反映した賃金上昇・が始まると共に、他方、雇用も中小企業、消費財産業依存ながら回復に向かっている。
このように37年度の雇用賃金面への景気調整の影響は比較的軽微であったが、雇用面では鉱業などの構造的問題を抱えていること、賃金面では消費者物価の高騰で実質としては伸び悩んでいることなどが注目される。