昭和38年
年次経済報告
先進国への道
経済企画庁
昭和37年度の日本経済
財政
38年度予算
37年10月以降引締政策は順次解除されていったが、経済の弱含み傾向はなお38年度前半に持ち越される見込みであり、また過去数年にわたった民間設備投資強成長の累積によって今後の経済上昇力には従来ほどの強さが薄れてきている。一方アメリカの景気は緩やかな上昇が期待されるものの総じて国際経済環境は楽観を許さず、加えて我が国は貿易為替の自由化の拡大、IMF8条国への移行を急がねばならなくなった。
このような情勢のなかで38年度予算は健全均衡主義を堅持する一方、財政投融資面では政府資金、民間資金を通じて資金の積極的活用を図り、社会資本の充実や産業基盤の強化等将来の国力発展の基礎を固めることを基本的方針としている。
一般会計歳出予算は2兆8,500億円で前年度当初予算より4,232億円、17.4%の増加、また特別会計を含めた歳出予算純計は5兆1,500億円で前年度当初予算より7,671億円、17.5%増大している。
財政投融資計画は1兆1,097億円で、外貨債等につき38年度方式で組み替えた37年度当初計画に対して2,045億円、22.6%の大幅増加となった。
地方財政計画は2兆6,336億円で前年度に比べて3,486億円、15.3%の増加を示している。
施策の重点は公共投資の拡大、社会保障の充実、文教科学の振興を3本の柱とし、その他産業体制整備、輸出の振興、雇用対策の強化、中小企業経営基盤の安定、農林漁業の構造改善に置かれた。
このような財政規模の拡大に伴って政府の財貨サービス購入は前年度実績見込みより14.0%増加した4兆4,800億円と見込まれ、国民総支出見込みの22.0%を占めるものとされた。
さて、ここ数年の財政は経済の成長に合わせ国民生活や産業活動の基盤の整備等財政固有の任務を積極的に推進してきた。しかし民間部門における投資の強成長は予想を著しく上回る経済の拡大をもたらし、道路、港湾等社会資本の立ち遅れが経済成長を阻むあい路として顕在化してきている。他面我が国経済は貿易為替の自由化によって開放体制への移行を進めつつあり、この新しい国際経済環境に適応して行くためにも社会資本の立ち遅れや地域間、産業間、企業間の格差等各種構造上のひずみの是正を図り、産業の国際競争力を強化することがますます緊要な課題となってきている。今後財政部門に期待される分野は広くかつその役割は一層大きくなってくると考えられるのである。