昭和38年
年次経済報告
先進国への道
経済企画庁
昭和37年度の日本経済
中小企業
37年度の概況
36年秋の金融引き締め強化を転機に、約1年にわたって中小企業は売り上げの鈍化、利益の減少をまねいたが、37年10月の金融緩和以降再び景況は明るさを取り戻し始めている。37年度の中小企業の景況は大要次の通りの推移をたどった。
37年1~3月には、季節的な生産の低下と、引き締めによる影響が浸透し始め、資金繰り難、採算悪化に直面し、倒産も増加した。4~6月には、生産はやや増加したものの、製品価格・受注単価の低下、決済条件の悪化は続いた。更に、7~9月になると再び生産、売り上げは低下し、受注の減少が目立った。しかし10、11月に実施された引き締め緩和措置でようやく生産は上昇に転じ始め、売り上げの増加と相まって、37年末の中小企業は前年末に比べるとかなり落ち着きを取り戻すに至った。38年に入ると1月末から2月にかけては豪雪の影響もあって企業活動はやや低下を示したが、製品価格の回復、販売条件の好転、資金事情の緩和など中小企業をとりまく諸環境は明るさを増し、ようやく中小企業の景況は回復の方向を歩み始めた。
このような経過をたどった37年度の中小企業の動向のなかから特徴点を挙げると、第1は、前回の調整過程と同様に業種、業態により明暗はあったが総じて機械関連部門の沈滞にひきかえ消費関連、輸出関連業種の堅調が目立ったこと。
第2は、景気調整の影響が前回に比べて比較的軽微であったこと。
第3は、依然深刻な労働力事情を反映して景気調整下にもかかわらず賃金の引き上げが引き続き行われたこと。第4は、設備投資が停滞したことなどである。