昭和37年

年次経済報告

景気循環の変ぼう

経済企画庁


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総説

日本の景気循環の特質と変貌

生産趨勢の上昇

 景気循環の型の変化は、まず鉱工業生産指数の変動を画くことによって指摘することができる。景気循環の波だけをあらわすために、28年から34年までのすう勢線からの偏差率を 第22図 に示すが、35~36年の変動幅は過去2回の景気変動に比べことさらに大きいことがわかる。このような現象は、日本の生産指数の動向は一定の成長率と一定の波長を持った短期循環の合成としては画き切れないことを意味している。成長率が尻上がりに増大するという成長趨勢の変化に短期循環が組み合わさって、はじめて日本の生産動向を説明しうるのである、ちなみに景気変動の波を消すために39ヶ月移動平均値によってみると、生産指数の趨勢値は32年までは年率14%であったが、その後次第に増大して35年には23%までになっている。

第22図 鉱工業生産の趨勢と乖離率

 しからばなぜこのような趨勢変動を起こしたのであろうか。生産指数を内訳でみると、この主役が機械と鉄鋼であることがわかる。繊維・紙パルプ、化学などは、一定の趨勢線上に3回の波がきれいに同調してほぼ同じ振幅でのってくるのであるが、機械や鉄鋼では、32年頃を境として趨勢線の大幅な変化がみられる。耐久消費材も趨勢値が高いのであるが、34年がピークで最近ではむしろ趨勢値は低下の傾向に入っている。各産業とも在庫投資循環の短期の波の影響を受けているのだが、30年以降の設備投資の強成長の影響を受けた機械や鉄鋼は、短期循環に加えて強い趨勢線の上昇が起きているのである。

 日本の景気循環の型の変化を論ずるには、在庫投資と設備投資の変動要因の分析を行わねばならないことは、これからみても明らかであるが、そのまえに景気循環の直接原因である国際収支の悪化要因についての分析を行ってみよう。


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