昭和35年

年次経済報告

日本経済の成長力と競争力

経済企画庁


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昭和34年度の日本経済

交通・通信

通信

 昭和33年度から好転した我が国の経済情勢は34年度に入ってからもこの好調を持続し、これにつれて通信に対する需要も大きな伸びを示した( 第9-10図 )。まず国内電気通信についてみれば、電話においては市内通話度数は180億度で33年度に比し14%贈、市外通話度数は8.4億度で9%増と大幅な増加をみた。従って、加入電話に対する需要も前年度を上回り、年度内の新規申込数は48万を記録し、前年度より持ち越しの申込積滞68万を加えて年度内需用は116万に達した。これに対して電話架設数は31万の増設を行って加入数は累計322万となったが、増大する需要には追いつかず需給状況はさらに悪化して、年度末の申込積滞数は84万に増えている( 第9-11図 )。電話に対する需要は最近予想以上に伸びてきたが、設備の拡張がこれに伴わないために、我が国の電話事情は一時よりはよほど改善されたものの諸外国に比較すればまだまだ遅れており、33年度において電話機の普及度は人口100人当たり4.69個で世界第21位、自動化率も64.6%で第14位にとどまっている( 第9-4表 )。また加入電話のうち住宅用電話の占める比率は33年度末の9.9%から幾分の上昇をみたが、これも先進諸国と比較すればはるかに低く、まだまだ電話が不足しているために住宅用にまで手が回りかねることを示している。このような状況を打開するために34年度には電話供給計画が大幅に改訂され、経済の発展と民生の向上に寄与すべく35年度以降はさらに大量の増設が行われることになった。電話事業をサービス面よりみれば、自動化率の向上とともにその方式も変化をみて、34年度中には3局のクロスバー局(新方式自動局)が開局し、今後も引き続いてこの方式が大幅に採用されるであろう。ただしこれは機能的にはほぼ安定したものとなったが、現在の段階においては特に優れた経済性を発揮するまでには至らず、さらに生産面においての検討が要求される。また市外通話においては本年度中に886区間が新たに即時化され、即時化の区間も大都市相互間から次第に中小都市にも及んできた。これは市外ケーブル、マイクロ回線等の発展によって伝送路の整備が進められたことによるものであるが、今後の方向としてさらに伝送路のみでなく、交換機についても有効な新技術の採用により全国の即時化が推進されなければならない。この意味で34年度に仙台市外局に採用されたL.T.S.(長距離市外自動中継交換機)の成功は、全国即時化の発展に大きな役割を果たすものといえよう。

第9-10図 部門別通信量

第9-11図 電話の需給状況

第9-4表 世界主要国電話事情

 国内電信については公衆電報が8780万通で対前年4%増とほとんど横這いであるにもかかわらず電信事業収入は相当の向上をみせており、これは電信専用線の増加と加入電信の発展によるものである。電信専用線は33年度1778回線に対して34年度末には2140回線に達し、加入電信は816加入から1400加入と大きく増加して、経済の成長につれて経営の近代化、経営活動のスピード化が進展してきたことを示している。国際電気通信部門は貿易の好調を反映して良好な推移を示し、国際電報は389万通(対前年比7%増)、国際加入電信は27万度(対前年比73%増)、国際電話は17万度(対前年比12%増)を記録した。この部門では航空会社等に対する賃貸回線の増加が目立っている。

 郵便部門では国内通常郵便物総数が64億通(対前年比6.7%増)となり、国民一人当たり約69通の利用があったこととなる。また外国郵便物は4350万通で前年度に比べ10%の増となった。年々堅実なテンポで増大するこれら郵便物を取り捌くために郵便局舎を整備改善し、局内外施設を機動化、機械化する計画が目下進められている。

 電波利用の分野では放送局を含む無線局数が5万2千局(対前年比29%増)を超え、割当周波数の逼迫がいよいよはなはだしくなったため、周波数の割当をより多くすることのできるSSB方式(単側波帯通信方式)等を使用することによりこれを打開しようとしている。なお、34年度中に建設をみた放送局数は、NHKのラジオ20局、テレビ14局、民間放送のラジオ2局、テレビ14局で34年度末放送実施局の累計はNHK、民間放送を通じラジオ332局、テレビ97局となっている。これを聴視者の側からみればテレビの受信契約世帯数は33年度末の2倍415万世帯となって対世帯普及率も23.1%に達したが、ラジオのそれは我が国放送開始以来初めて120万世帯を減じ、1341万世帯となった。


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