昭和35年

年次経済報告

日本経済の成長力と競争力

経済企画庁


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昭和34年度の日本経済

建設

概況

 昭和34年度の建設活動は、 第6-1表 のごとく、総工事費で約1兆7,600億円に達し、前年度の水準を約30%上回る躍進を示した。そのうち土木工事は、約7,200億円と前年に比して27%の増加であり、前年度の13%増を大幅に超えるものであったが、建設工事は、さらにめざましい活動を記録し、工事費において9,900億円、対前年度比131%という急激な増加であった。土木部門の過半を占める公共事業は、その増加率において平均値を上回る135%となり、他の土木部門の119%を大きく引き放しているが、これは、前年度に引き続いて道路港湾等の産業基盤設備の強化が、相当意欲的に進められている状況を示すと同時に、年度後半に至って、伊勢湾台風をはじめ各種の風水害の復旧のため、災害関係事業費が大幅に補正された事情をも反映するものである。公共事業については後に再び検討することとし、建築活動の側に転ずると、31年度以来初めて土木活動を上回った増加率がみられるが特に著しい増加を示したのは産業用非住宅の部門であって、対前年度比は63%増と全ての建設投資中最高の増加率であり、特に鉱工業用では約2倍となっている。これらの旺盛な非住宅建築投資は、前年度から引き続きいた好況に対応して、漸次積極化した民間設備投資に支えられたものとみられ、 第6-1図 のごとく33年度第3四半期以後一貫した上昇傾向をたどっている。これに対して住宅投資は景気動向に影響されることが少なく、むしろ政府の住宅政策や個人所得の動向と密接な対応関係があり、 第6-2図 にみられるようにその増加率は飛躍的ではないが、なお前年度より相当大きく15~20%高い水準にある。34年度の政府施策住宅建設計画は公営48千戸、公庫102千戸、公団30千戸その他約30千戸、計212千戸であり、民間自力建設住宅を約35万戸として、総計56万戸建設の予定は大体において実現されたものと考えられる。

第6-1表 建設工事費の推移

第6-1図 非住宅建築の動き

第6-2図 住宅建築の動き

 このように昨年度の建設活動は、前年度から引き続いた投資増加の一層急速な拡大によって、空前の建設ブームを現出することになった。公共民間いずれの側も、一部を除き、躍進的な増加傾向をみせていること及び民間非住宅部門の拡大が極めて目覚しいことが昨年度の特徴として挙げられよう。かくして年率15%にも及ぶ国民総生産の成長においても、30、31年当時にみられたような生産の隘路が大きく現われることもなく数量景気の展開を支えているのである。この間にあって建設資材価格は、砂利、砂、木材等一部を除き、年間を通して著しい上昇も無く、セメント業界等の関連産業に活発な新増設投資がみられた。また道路事業に対する外国建設業者の共同請負や関連産業が近代的資本を背景に建設業界に進出する等の新しい動きが注目される。設備投資ブームはなお底堅く存続する傾向を示しており、また、産業基礎施設整備のための公共投資も、経済発展に対応して、高水準を維持する趨勢にあるため、建設活動の活況はそのテンポに変化はあるにせよ引き続いて堅調に推移していくものと思われる。

 以下昨年度の建設活動に関して問題と考えられる点を若干検討しよう。


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