昭和35年
年次経済報告
日本経済の成長力と競争力
経済企画庁
昭和34年度の日本経済
中小企業
むすび
以上、機械と織物を代表例として概観したように、本年度の中小企業は、ともかく活況裡に推移したとみることができる。下請メーカーは、採算的好転は無かったとはいえ、数量でこれを十分にカバーできたし、織物メーカーも3年越しの赤字を埋め、過去の負債を返済できるところまで立ち直っている。中小企業(全産業)の営業利益総額(34年)は、前年に比べて53%増加した。
もちろん、全般的には好況であっても、その陰には過当競争等の構造的問題は依然として残されているし、近代化が進展している反面には、脱落した企業もあることを忘れてはならないであろう。
本年度も系列化は進んでいるが、これはここ数年来引き続いている傾向で、特に目新しいものではない。しかし、自由化を前にして、大メーカーが従来の系列企業の再編成に乗り出してきていることは注目すべきであろう。繊維工業においては、賃織系列の強化にみられるように、原糸の消化先としての中堅機屋獲得に、各紡績メーカーは躍起になっている。また「プロダクション・チーム」という、これまでの系列内容とは異なった動き(工賃決定を協議事項とした)がみられるのも、今後競争力を強めるための体制設備とみられよう。同様に自動車メーカーでも、従来の系列企業の中から拠点メーカーをピック・アップして、重点的に育成強化を図ろうとする動きがでている。このような系列企業の再編成には、金融機関も選別融資を通じてバック・アップしようとしている。
今後自由化の進展によって、企業間競争がより激しくなるであろうから、中小企業の弱体部門が脱落することが考えられる。現に繊維商社の一部には、自由化決定によるプレミアムの消滅から、かなりの倒産が出ている。このような変動は今後も様々な形で現れてくるであろうから、企業としては一層技術の向上に努め、経営合理化を行わなければならない段階にきている。
この意味で、既に施行された「中小企業業種別振興臨時措置法」及び「商工会の組織等に関する法律」を軸とする、きめの細かい中小企業対策がさらに、一層推進されなくてはならない。