昭和30年
年次経済報告
経済企画庁
前進への道
通貨価値の安定
インフレは輸出の増加にとって最大の敵である。インフレを再燃させては、経済の正常な運営は窒息し、輸出増加の息の根はとまってしまう。従って、なにはさておいても通貨価値の安定をはからなければならない。それにはまず中央、地方を通ずる財政の均衡を維持してこの面からインフレをおこさない配慮が必要である。また金利体系の歪みを直すことは、オーバー・ローンへの逆戻りを遮って、インフレの再燃を防ぐ有力な手段になる。それに将来は公開市場操作等で信用の調整力を強めていくことも、金融の正常な運営を補強する手だてになろう。こうして金融の運営が正常化されれば、次第に金利の機能が復活して、投資の増減を自動的に調整する道も開けてくる。