昭和30年
年次経済報告
経済企画庁
緊縮政策の波及過程
次に緊縮政策が当面の目標とした国際価格へのさや寄せと国際収支の改善についてみよう。
国際価格へのさや寄せ
卸売物価は上半期に急落し、下半期に反発し、年度末には再び下降するという波動を画いたが、結局年度中に5%の低落をみた。ことに輸出商品の国内価格は9%も下がり、輸出価格も5%ほど低落した。
一方世界物価は 第10図 に示すごとく年度中ほぼ横ばいに推移したので、物価の海外比も著しく改善された。主な商品の輸出価格を米、英両国の価格に比べると、昭和29年3月では平均して米国より2%、英国より9%程度高かったが30年3月では米国に対して1%、英国に対して2%高と接近している。もっともこの比較は日本の輸出商品を中心にみているため、幾分有利にでる嫌いはあるが、ともかく国際価格に対する割高が一頃ほど問題にならなくなったことは疑いない。もとより個々の商品について高低があることはいうまでもなく、繊維の価格が諸外国に対する割安の幅を一層広げた反面、金属や化学品ではまだ割高からぬけきれていないものがある。
また、29年度中に輸出商品の国内価格が輸出価格より余計に下った結果、一部にみられたいわゆる二重価格の現象はほぼ解消し、この点でも対外的な関係が正常化された。