第一部 總説……独立日本の経済力 第一 序言


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 昭和二七年四月二八日、米国批准書の寄託によつて、対日平和条約は効力を発生し、占領状態は終結して、ここにわが国は自由国際社会における主権の平等を回復した。ミズーリ号上艦調印いらい七年近い占領の間、たゆむことなく民主平和国家の建設に努めたわが国民の辛苦が実を結んで、いまや独立国家として国際社会へ復帰するに当り、新生日本の前途には、なお外交、政治、経済の各面において新たな要請と負担とが待ちうけている。

 外交、政治は暫くおき、経済的要請の第一に挙げるべきは、いうまでもなく、政治的独立の裏づけとなる経済的自立の達成であろう。自由と独立を回復したわが国も、経済的自立なくしては、世界自由諸国家間に当然占めるべき平等と名誉の地位を享受することはできない。そもそも真の意味における経済的自立とは単なる国際収支の均衡に止まらず、国民生活の向上を保障し、かつそれを長期的安定的に可能ならしめる経済構造の達成であらねばならない。しからば現下のわが国経済はかくのごとき意味における自立をどの程度まで達成しているであろうか。

 本報告の第一部総説においては上の標準に照らして日本の現有経済力を評価し、併せて今後とられるべき対策の方向を示唆することを目的とする。従つて、例年の報告とは異なり、戦後七年の復興過程の略説より出発して、今後の問題点の解明に努めた。これに対し昨年いらいの経済動向は第二部に詳しい。

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