第三 むすび


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 以上総説及び各論で明かにしたように、朝鮮動乱後日本経済は大きな変貌を遂げ、鉱工業生産は飛躍的に上昇し、企業経営も改善され、国際收支もほぼ均衡に近づく等幾多の面に目覚ましい進展を示し、終戦以来六年にして日本経済の自立もその緒につこうとしている。

 しかしながら動乱後における企業経営の好転や国際收支の改善は一時的な事情による面も多く、また貿易水準が戦前に比べて現在なお四割弱、生活水準も約八割の低位にあることを思えば、眞の経済自立にはまだかなりの道のりがあるといわねばならない。しかも最近においては、生活水準の上昇につれて石炭・電力・輸送力等産業の基礎的部面における供給力の不足が次第に表面化する一方、物価の高騰が輸出や特需の增大に障害となる面も現れ始めている。

 從つて今後基礎産業の充実・正常な輸出の增進・民主自由諸国に対する協力・生活水準の漸進的向上等の諸要請に応えるためには、限られた経済力の合理的な使用が必要であり、特に資金の供給を出来るだけ前記の諸要請につながる緊要な部面に重点化して、インフレーションの再発を防止するとともに、産業の合理化・近代化によるコスト引下げを実現して、商業採算の條件下に輸出を拡大し得る基盤を作り出して行かねばならない。

 平和條約の締結を目前にひかえ、我が國が国際社会の一員として再発足する日も近づいている。公正な競爭に関する国際的準則を守り、各国の信用を高めつつ日本経済の復興と発展を逹成することによつて、世界経済の繁栄に寄与することが、今後のわが国民に与えられた課題といえるだろう。

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