結語


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 以上述べて來たところによつて明かなように、本年のわが國経済はきわめて重要な轉機に立つている。終戰いらい三年近く、わが國は緊迫した経済事情のもとにおいて、いわば應急対策の連続に終始して來たのであるが、本年からはいよいよ平和経済の本格的再建に着手すべき情勢が内外において成熟して來ている。わが國の産業はいまや自國の経済を自立せしめて連合國の負担を軽減し、さらに進んで東亞諸國の復興発展に貢献するために最大限の生産回復と輸出增大を要請されるに至つているのである。このような要望に答えるためには、当面インフレーションの進行を抑制しつつ速やかな生産の增加に努めると共に、更に進んで自國の経済を出來るかぎり能率的なものに造りあげてゆくことが必要である。そのためには科学的基礎をもつ経済復興計画の作成、國内資源の徹底的な利用、技術水準の引上げ、行政、企業経営、労働の各部門における能率化等を促進し、また必需物資の適正な配給を確保して國民の最低生活を保障する一面しやし的な消費を抑制し、極度に欠乏している國内資本の蓄積回復に努め、これを有効な生産部面に投下して経済回復のテンポを早めねばならない。

 わが國経済の前途はこのような課題が逹成されるか否かにかかつているのであり、外國の建設的な救助も、日本國民自身が自國の経済力を最大限に活用することを前提として、はじめて與えられるものであることを忘れてはならないのである。

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