トピック(平成14年1月四半期報)

アルゼンチン-ペソ切り下げ-

アルゼンチンでは、本年1月6日、議会で「国家非常事態・為替制度改革法案」が可決され、1991年4月から約11年間続いた、カレンシー・ボード制(1ドル=1ペソ)が撤廃された(表1)。これを受けて発表された政府の経済対策では、ドル・ペソレートを1ドル=1.4ペソに切り下げ、貿易取引などにこの固定相場を適用する一方で、銀行間取引や旅行者向けには変動相場制を適用する二重相場制を当面採用する方針が示された(将来的には完全変動為替制に移行する計画)。

今回のアルゼンチン経済の事態は、昨年10月末に交付金削減をめぐる中央政府と地方政府との交渉が難航したことや、財政赤字が予想以上に膨らんだことなどが金融危機に発展したことに始まる。これを受けて、12月に入って銀行預金の引き出し制限や海外送金制限、預金のドル化を内容とする措置を実施したが混乱は収まらず、12月19日にカバロ経済財政相が辞任、翌20日にはデ・ラ・ルア大統領が辞任、23日には公的債務の支払いの一時停止を発表する(事実上のデフォルト)に至った(表2)。

国際金融市場では、(1)アルゼンチンの通貨切り下げやデフォルトは織り込み済みであったこと、(2)周辺の新興市場諸国が既に変動為替相場制に移行していたこと、などから大きな混乱は起きていない(図1)。しかし、同国の抱える1,300億ドルを超える公的債務の大部分がドルなど外国通貨建てであること、政府の経済対策や切り下げの効果が不透明であることなどを勘案すると、今後も予断を許さない状況にあるといえる(表3)。

表1:国家非常事態・為替制度改革法の要旨、表2:ペソ切り下げまでの経緯

図1:中南米各国の国債(10年)のイールドスプレッド

表3:アルゼンチンの各国通貨別公的債務内訳