海外経済報告(平成11年1月四半期報)

参考図表

概 観

1.主要国の経済動向をみると((図1、図2))、アメリカの景気は拡大しているものの、先行きにやや不透明感がみられる。ヨーロッパの景気は、総じて拡大しているが、そのテンポに鈍化懸念がみられる。アジアの景気は、後退しており、総じて厳しい状況にある。

アメリカでは、実質GDP(前期比年率)は、98年4~6月期1.8%増の後、7~9月期は3.7%となり、個人消費や民間住宅投資などを中心に景気は拡大しているものの、先行きにやや不透明感がみられる。中南米の景気は、メキシコで景気拡大テンポが鈍化し、ブラジルで後退している。

ヨーロッパでは、ドイツの景気は、拡大しているものの、そのテンポに鈍化懸念がみられる(7~9月期実質GDP成長率前期比年率3.5%増)。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっており(同2.1%増)、イギリスでは、景気は減速しつつある(同1.6%)。イタリアの景気は緩やかに改善している(同2.0%増)。中・東ヨーロッパでは、ポーランド、ハンガリーの景気は拡大しているものの、チェッコの景気は後退している。ロシアでは、景気は後退している。

アジアでは、中国の景気拡大のテンポはこのところやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。アジアNIEsでは、台湾の景気拡大テンポは鈍化しており、韓国、香港、シンガポールの景気は後退している。アセアンをみると、インドネシア、タイ、マレイシア、フィリピンともに景気は後退している。

2.国際金融・商品の動向をみると、10~12月期の米ドルは、10月初旬に減価し、その後は、11月は総じて増価したが、11月下旬以降は再び減価した(図3)。アジア通貨は総じて安定した動きとなっている。国際商品市況は、10月以降11月中旬まではほぼ横ばいの推移だったが、その後は下落した。原油価格(北海ブレント・スポット価格)は、減産合意を遵守していない産油国が存在することや、11月下旬のOPEC(石油輸出国機構)総会でさらなる協調減産が決定されなかったことから、全体として弱含んだ。

図3

図3

(備考)

本報告では、北米、西ヨーロッパ諸国、オーストラリアの指標の変化率は、特に断りのない限り四半期データは季節調整値前期比年率、月次データは同前月比である。また、中南米、中・東ヨーロッパ、ロシア、アジア諸国の指標は、前年同期(月)比である。

1 南北アメリカ アメリカ、ダウ最高値更新

アメリカ:個人消費や民間住宅投資などを中心に景気は拡大しているものの、先行きにやや不透明感がみられる。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。物価は安定した動きとなっている。

アメリカでは、実質GDPは、98年4~6月期前期比年率1.8%増(前年同期比3.6%増)の後、7~9月期は同3.7%増(同3.5%増)となった。引続き内需が堅調に推移している(7~9月期増加率寄与度4.3%)。外需寄与度のマイナス幅は前期から縮小した(同▲0.6%)。個人消費は、サービス消費を中心に7~9月期前期比年率4.1%増となった後、10月は自動車購入の増加などにより前月比年率5.7%増、11月は同0.3%増となった。小売売上は、総合小売店の販売などが好調だったため11月前月比0.6%増となった。消費者信頼感指数は、12月126.1と前月からほぼ横ばいとなっている。設備投資は、7~9月期前期比年率0.7%減と伸びはマイナスとなった。設備投資の先行的な指標である非軍需資本財受注(航空機・同部品を除く)は、10月前月比9.7%減の後、11月は同2.7%増となった。住宅投資は、低金利や堅調な所得の伸びなどを背景に7~9月期前期比年率9.9%増となった。住宅着工件数は10月前月比8.0%増、11月同2.7%減となった。在庫投資は、7~9月期増加率寄与度0.9%とプラスに転じた。

鉱工業生産は、9月前月比0.4%減、10月同0.2%増の後、11月は同0.3%減と輸出産業を中心に伸びが鈍化している。また、設備稼働率も9月81.3、10月81.2の後、11月は80.6と、低下傾向にある。雇用は、非農業事業所雇用者数が10月前月差16.4万人増、11月同25.1万人増の後、12月は同37.8万人増と拡大しているものの、製造業で12月同1.3万人減となるなど、輸出減の影響もあり減少している産業もみられる。他方、サービス部門は12月同29.0万人増と、引続き増加している。また、気候が温暖だったこともあり建設業の雇用が顕著に増加した。失業率は11月4.4%の後、12月は4.3%に低下した。民間非農業事業所の時間当たり賃金は、12月前年同月比3.7%増となった。物価は、消費者物価上昇率が11月前年同月比1.5%の上昇(消費者物価コアは同2.3%の上昇)、生産者物価(完成財総合)上昇率が11月同0.7%の低下(生産者物価コアは同1.3%の上昇)と、安定した動きとなっている。

経常収支赤字は、7~9月期613億ドルと前期から拡大し、4期連続で過去最高額を更新した。GDP比でも▲2.9%とマイナス幅が拡大した。10月の財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は206億ドルと、前月から1.7億ドル縮小したものの、依然として高水準にある。

金融面の動向をみると、12月の短期金利(TB3ヶ月)および長期金利(30年物国債)は、ともに月下旬にやや上下したものの、ほぼ横ばいで推移した(TB3ヶ月物利回り12月平均4.50%(11月平均4.53%)、30年物国債利回り12月平均5.06%(11月平均5.25%))。なお、98年8月末以降拡大していた国債(30年物)と社債の利回り格差は、10月上旬から中旬にかけてのピーク時(Aaa格:1.45%ポイント、Baa格:2.25%ポイント)に比べると、利下げの効果もあり11月(ボトム時Aaa格:1.07%ポイント、Baa格:2.05%ポイント)にかけて縮小したものの、その後ほぼ横ばいで推移している(1月8日時点 Aaa格:1.08%ポイント、Baa格:2.11%ポイント)。12月の株価(ダウ平均)は、月前半は総じて下落したが、後半は総じて上昇した(NYダウ工業株30種平均の12月平均9027.35ドル(11月平均比0.1%上昇))。なお、99年1月に入り最高値を更新した。マネーサプライ増加率(97年10~12月期対比年率)をみると、M2は11月8.8%増となっている。

98会計年度(97年10月~98年9月)の財政収支は、景気拡大に支えられた税収の増加などもあり、29年ぶりに702億ドルの黒字(GDP比0.8%)に転換した。

なお、11月3日に上下両院で行われた中間選挙では、上下両院とも、引続き共和党が過半数を維持した。

カナダ:景気拡大のテンポは鈍化している。失業率は低下している。

カナダでは、実質GDP(前期比年率)は、98年4~6月期1.4%増の後、7~9月期1.8%増となった。外需は堅調なものの、在庫投資の減少の他、個人消費等も減速しており、景気拡大のテンポは鈍化している。個人消費は、98年7~9月期2.2%増と引き続き拡大しているものの、自動車など耐久財消費の伸び悩みにより増勢は鈍化している。民間投資では、設備投資は、7~9月期2.9%増加したが、住宅投資は、建築労働者のストライキの影響もあり、7~9月期マイナス10.1%と大きく減少した。在庫投資は、自動車販売などの小売業を中心に引き続き在庫調整が進んだ結果、7~9月期の実質GDP成長率への寄与度はマイナス4.4%となった。

生産は98年9月前月比0.2%減、10月同0.1%減となった。失業率はこのところ低下しており、10月8.1%の後、11月、12月とも8.0%となった。物価は安定しており、消費者物価上昇率は、10月前年同月比1.0%、11月同1.2%に留まっている。経常収支赤字は、7~9月期43.9億加ドル(GDP比2.0%)と、やや縮小した。財の貿易収支黒字(国際収支ベース)は、10月19.5億加ドルとやや拡大した。

金融面の動向をみると、カナダ銀行は、公定歩合を98年9月29日の引下げに続き、10月16日と11月18日にそれぞれ0.25%ずつ引き下げ、5.25%とした。

中南米:メキシコの景気は拡大テンポが鈍化している。失業率は低水準で推移している。経常収支赤字は拡大基調にある。ブラジルの景気は後退している。失業率は高水準で推移している。

メキシコでは、実質GDP(前年同期比)は、98年4~6月期4.3%増、7~9月期5.0%増となり、景気の拡大テンポは鈍化している。需要項目別にみると、個人消費、総固定資本形成の伸びが低下している。鉱工業生産は98年7~9月期前年同期比6.3%増の後、10月前年同月比3.1%増となった。

失業率は低水準で推移しており、98年11月2.6%となった。物価上昇率は高水準で推移しており、消費者物価上昇率は、98年12月前年同月比18.6%となった。経常収支赤字は、98年7~9月期は46.8億ドルと拡大基調にある。貿易収支赤字は、工業製品など石油以外の輸出が増加した一方で輸入は中間財を中心に大きく伸びたため、98年11月8.8億ドルと拡大した。

金融面の動向をみると、アジア危機やロシア経済の混乱等の影響から、為替と株価は下落傾向をみせていたが、ペソの対ドルレートは11月以降、10ペソ/ドル程度で安定している。一方、株価(IPC指数)は、9月以降回復していたが、原油価格の軟化見込み等により、99年予算において一層の歳出削減が懸念されたことなどから、11月中旬から12月上旬にかけて、一時下落した。98年12月31日現在、9月末比で10.9%の上昇となった。

ブラジルでは、実質GDP(前年同期比)は、98年4~6月期1.5%増の後、製造部門(公益事業を含む)が減少に転じたことなどから、7~9月期0.1%減となり、景気は後退している。鉱工業生産は98年7~9月期前年同期比2.9%減の後、10月前年同月比9.3%減となった。

失業率は高水準で推移しており、98年11月7.0%となった。消費者物価上昇率は、98年11月前年同月比2.6%と落ち着いている。経常収支赤字は98年7~9月期93.4億ドルの後、10月45.4億ドル、11月28.8億ドルとなった。

金融面の動向をみると、アジア危機やロシア経済の混乱等の影響から下落していた株価(BOVESPA指数)は9月中旬以降回復していたが、IMF等からの金融支援の前提となる財政改革に関する議会審議の遅れなどから、12月に入り、再び下落している。98年12月31日現在、9月末比で2.9%の上昇となった。

10月4日、ブラジル大統領選挙が行われ、現職のカルドーゾ氏が再選された。また、ブラジル政府は、10月下旬にIMF等による金融支援を受け入れ、金融不安を払拭するため、財政健全化計画を発表した。この発表を受け、IMF等国際機関及び先進各国による総額約415億ドルの金融支援が行われることとなった。(トピック<中南米>参照)

99年1月13日、ブラジル中央銀行は通貨レアルの変動幅を1ドル=1.20~1.32レアルに拡大し、事実上の通貨切下げを行った。

トピック<中南米>

トピック<中南米>参照イメージ イメージ

2 ヨーロッパ ユーロ誕生

ヨーロッパの景気の現状をみると、ユーロ圏(EMU第3段階移行11か国)では、低金利による機械設備投資の活発化や、雇用情勢の改善による個人消費の増加が主因となり景気が拡大している。実質GDPは、98年4~6月期前期比年率1.2%増、7~9月期同2.4%増となった。しかし7~8月以降、通貨の増価や域外経済の成長率低下に対する懸念などから、製造業におけるコンフィデンスが低下し、鉱工業生産の拡大テンポも緩やかになるなど、景気拡大テンポに鈍化懸念がみられる。失業率は、景気の好調さや雇用機会創出政策もあり、低下している。物価は安定している。イギリスでは、景気は減速しつつある。

金融面の動向をみると、ユーロ圏では、12月3日にユーロ圏諸国が政策金利を3.00%に一斉に引き下げ(ただし、イタリアは12月28日に公定歩合を3.00%に引下げ)、政策金利が収斂した。イギリスでも、国内経済の鈍化傾向から、98年10月から99年1月まで、4か月連続で政策金利(レポ金利)を合計1.5%引き下げた。99年1月1日に、1ユーロ=1.16675ドル(参照レート)の為替レートで、ユーロが誕生した(トピック<ヨーロッパ>参照)。

トピック<ヨーロッパ>

トピック<ヨーロッパ>イメージ イメージ

中・東ヨーロッパでは、ポーランド、ハンガリーの景気は拡大しているが、チェッコでは、経済安定化、回復に向けて緊縮財政をとっていることもあり、景気は後退している。ロシアでは、景気は後退している。

ドイツ:消費の回復や機械設備投資の増加などから景気は拡大しているものの、そのテンポに鈍化懸念がみられる。失業率が12月にやや上昇。

ドイツでは、実質GDPは、98年4~6月期前期比年率0.2%増の後、7~9月期同3.5%増となった。これまで内需を牽引してきた機械設備投資の増加(同9.2%増)に加え、消費が強い回復をみせ、さらに建設投資が4四半期振りにプラスに転じたことが主因となっている。また外需も前四半期に続きプラスに寄与している。消費は、個人消費が7~9月期前期比年率3.8%増、小売売上数量は10月前月比0.1%減となったが、乗用車新規登録台数が10月前年同月比6.1%増、11月同18.5%増と、足下でも回復が続いている。消費者コンフィデンスも改善している。建設投資は7~9月期前期比年率8.2%増、新規建設受注数量も9月前月比6.5%増、10月前月比6.0%減と、持ち直している。

鉱工業生産は、10月前月比1.4%増、11月同2.3%減と、拡大テンポが緩やかになってきている。製造業新規受注は、10月前月比2.7減、11月同1.5%減、ifo製造業景況感は、新興市場における通貨・金融の混乱の影響に対する懸念や、マルク高などもあり、9月以降大幅に悪化している。

失業率は、これまで低下傾向にあったが(98年1月11.5%から10月10.7%へ)、12月にはやや上昇した(失業率は11月10.7%、12月10.8%)。物価は、消費者物価上昇率が、11月前年同月比0.7%、工業品生産者価格上昇率が、同▲1.6%と安定している。

経常収支は7~9月期20億マルクの黒字となった。輸出は10月まで3か月連続で減少したが、11月は前月比2.6%増となった。輸入は同3.0%減、貿易収支黒字は7~9月343億マルクから、10月108億マルク、11月148億マルクとなった。

金融面の動向をみると、12月には、短期金利(コール3か月物)は3日のレポ金利引下げなどもあり、総じてやや低下、長期金利(公債平均利回り)はほぼ横ばいで推移した。

フランス:景気拡大のテンポは緩やかになってきている。消費は増加しているが、設備投資増加のテンポは緩やかになってきており、在庫削減も進んでいる。

フランスでは、実質GDPは、98年4~6月期前期比年率3.3%増の後、7~9月期は同2.1%増となった。ただし、INSEE(国立統計経済研究所)によると、営業日数が多かった影響で成長率は高めに出ており、実態の成長率は2.1%より1%前後低くなるとのこと。個人消費、設備投資を中心とした内需主導の景気拡大が続いているが、そのテンポは緩やかになってきている。個人消費は、雇用情勢の改善が消費者信頼感の向上につながっていることから、増加(実質個人消費は7~9月期前期比年率3.0%増)している。設備投資は、外需の低迷などから経営者の景況感が悪化しているため、増加のテンポが緩やかになってきている(実質法人固定投資は4~6月期前期比年率6.5%増から7~9月期は同3.5%増)。在庫も、経営者のマインド悪化を受け削減が進んだ(7~9月期の寄与度はマイナス2.0%)。外需は低迷しているものの、7~9月期には純輸出が3期ぶりにプラスに寄与した。

鉱工業生産は、依然高水準にあるものの、9月前年同月比3.1%増、10月同2.0%増と、拡大テンポは緩やかになってきている。INSEE(国立統計経済研究所)が12月に行った経営者アンケート調査によると、今後生産は減速すると見ている経営者が増加している。

失業率は、高水準ながらもやや低下しており、10月11.6%、11月11.5%となった。物価は、消費者物価上昇率が、11月前年同月比0.3%、工業品生産者価格上昇率が、同▲2.1 %と安定している。

経常収支は7~9月期607億5100万フランの黒字、貿易収支は10月98億2100万フランの黒字となった。輸出は10月前月比7.9%と大幅に減少、輸入は同1.1%減となり、貿易黒字額は減少傾向にある。

金融面の動向をみると、12月には、短期金利(インターバンク3か月物)は低下、長期金利(10年もの国債利回り)は、ほぼ横ばいで推移した。

イギリス:個人消費の減速や製造業生産の減少傾向などから景気ははは減速しつつある。

イギリスでは、実質GDPは、98年4~6月期前期比年率2.0%(市場価格)となった後、7~9月期同1.6%となった。固定投資の増加などから内需の寄与がプラスとなった反面、輸出減少などから外需の寄与はマイナスとなった。消費は、個人消費が4~6月期前期比年率2.1%増、7~9月期同1.3%増なり、小売売上数量が10月前月比0.4%減、乗用車新規登録台数が10月同5.4%減となった。設備投資は、4~6月期前期比年率1.5%増の後、7~9月期同6.8%増となったが、CBI(英国産業連盟)サーベイの設備投資に関する見通しは悪化傾向を脱しておらず企業経営者のマインドは悪化を続けている。

鉱工業生産は、減少傾向にあり、総合指数は10月前月比0.0%、11月同0.1%減となった。製造業生産は、11月前月比0.2%減となり、4ヶ月連続で前月比マイナスとなった。11月のCBIサーベイ製造業生産見通しはやや改善したものの依然低調である。

失業率は、低水準で推移している。11月4.6%となり、ここ4ヶ月間横ばいで推移している。物価は、消費者物価上昇率が、11月前年同月比3.0%(住宅金利を除く上昇率同2.5%)と安定している。なお、イングランド中銀は、物価上昇率の下振れを懸念しており、12月の政策金利引下げの理由ともなった。

経常収支は資本収支黒字の一時的増加から7~9月期22.8億ポンド黒字と史上2番目の黒字となった。輸出は7~9月期0.8%減(10月前月比0.3%増)、輸入は同0.4%増(同5.3%減)となった。貿易収支赤字は増加傾向が続いており、7~9月52.3億ポンドと、大幅に増加した。これらはEU域外への輸出が減少しているのに対し、輸入が増加していることが要因となっている。

金融面の動向をみると、12月には、短期、長期金利ともに低下した。マネーサプライ(M4)は、11月8.4%増となった。イングランド銀行は国内経済の減速傾向から、12月10日に政策金利(レポ金利)を0.5%引き下げた後、99年1月7日にはさらに政策金利を0.25%引き下げ6.00%とした。レポ金利引下げは4ヶ月連続で引下げ幅は1.50%におよんでいる。

イタリア:景気は緩やかに改善している。個人消費、設備投資は増加しているが、在庫削減が進んでいる。失業率は高水準にある。

イタリアでは、実質GDPは、98年4~6月期前期比年率2.3%増の後、7~9月期は同2.0%増となり、景気は緩やかに改善している。

個人消費は、実質個人消費が4~6月期前期比年率2.6%増、7~9月期同3.7%増と増加している。設備投資も、実質機械設備投資が4~6月期前期比年率3.1%増、7~9月期同3.4%増と増加している。在庫は、大幅に削減され7~9月期の寄与度は▲3.7%となった。輸出の伸びは前期比年率1.4%と低かったものの、輸入が同▲8.3%と大幅減となったことから、7~9月期には純輸出の寄与度は2.5%となった。

鉱工業生産は、10月前月比1.1%増、前年同月比1.4%増とほぼ横ばいで推移している。ISCO(国立経済研究所)のアンケート調査によると、生産見通しはこのところ悪化している。

失業率は、高水準で推移しており、10月12.6%となった。物価は、生計費上昇率が、12月前年同月比1.5%、工業品生産者価格上昇率が、11月同▲1.3%と安定している。

経常収支は8月9140億リラの黒字、貿易収支は10月4兆9000億リラの黒字となった。

金融面の動向をみると、12月には、短期金利(インターバンク3か月物)、長期金利(10年もの国債利回り)ともに低下した。

中・東ヨーロッパ:ポーランド、ハンガリーでは景気は拡大している。チェッコでは景気は後退している

ポーランドでは、実質GDPが98年4~6月期期前年同期比5.3%増、7~9月期同5.0%増となり、景気は拡大を続けている。鉱工業生産は、10月前年同月比1.2%減、11月同1.4%減となった。失業率は、10月9.7%、11月9.9%とこのところやや上昇している。物価上昇率は、消費者物価上昇率で10月前年同月比9.9%、11月同9.2%と高水準ながら低下してきている。経常収支は、4~6月期5.7億ドル、7~9月期11.4億ドルの赤字と赤字幅が拡大した。

ハンガリーでは、実質GDPが、98年4~6月期同5.1%増、7~9月期前年同期比5.6%増、となり、景気は拡大している。鉱工業生産は、9月前年同月比13.9%増、10月前年同月比8.4%増となった。失業率は、低下傾向が続いており10月8.8%、11月8.8%となった。物価上昇率は、消費者物価上昇率で10月前年同月比12.3%、11月同11.2%と高水準ながら低下してきている。経常収支は、4~6月期5.2億ドル、7~9月期4.3億ドルの赤字となり、赤字幅は縮小している。

チェッコでは、実質GDPが、98年4~6月期前年同期比2.4%減、7~9月期同2.9%減となり、景気は後退している。鉱工業生産は、9月期前同期比1.8%減、10月同月比7.6%減となった。失業率は、10月6.8%、11月7.0%と上昇している。物価上昇率は、消費者物価上昇率で11月前年同月比7.5%となり、97年央からの上昇に落ち着きが見られる。経常収支は、4~6月期1.1億ドル、7~9月期0.3億ドルの赤字となり、赤字幅は縮小している。

ロシア:景気は後退している。物価は高騰を続けている。

ロシアでは、実質GDPは、98年4~6月期前年同期比0.9%減、7~9月期同7.6%減となり、景気は後退している。鉱工業生産は、7~9月期前年同期比11.7%減の後、10月前年同月比11.1%減、11月同9.1%減と大幅な減少が続いている。当初は、ルーブル安の影響を受け、輸入部品に依存している耐久消費財の製造部門での落ち込みが著しかったが、9月以降は全部門において生産の低下がみられるようになっている。個人消費は、8月のルーブル切下げの後、物不足を危惧した買い占め行動が見られ、実質民間消費が7~9月期前年同期比3.1%増となった。しかしその後、物価上昇の影響が色濃くなり、10月前年同月比16.2%減となった。固定投資は、実質総固定投資(政府・民間)で7~9月期前年同期比0.9%減、10月前年同月比11.5%減となった。

失業率(ILO基準)は、10月11.6%、11月11.7%とやや上昇している。物価は、ルーブル安や紙幣増刷の影響から食料品を中心に高騰を続けており、消費者物価上昇率で11月前年同月比66.8%(前月比5.7%)、12月同84.4%(同11.6%)となっている。

貿易収支(個人業者による「シャトル貿易」を含まない)黒字は、4~6月期44.35億ドル、7~9月73.1億ドルとなった。輸出は、4~6月期前年同期比10.1%減の後、7~9月期同18.3%減と大幅に減少している。輸入は、4~6月期同18.4%増の後、ルーブル安の影響を受けて7~9月期同26.3%減となった。

金融面の動向を見ると、マネーサプライ(M2)は8月までは金融引き締め策により減少していたが、9月11日に成立したプリマコフ内閣の政策転換によるルーブル増刷から、9月前年同月比0.8%増、10月同2.4%増と増加している。また、ルーブルは、紙幣増刷や対外債務のデフォルト懸念等により下落し、98年12月31日現在、対ドルで9月末比22.2%減価となった。

3 アジア等 東アジアの景気後退続く

アジアでは、多くの東アジア諸国で景気が後退し、総じて厳しい状況にある。投資、消費の不振が続いており、実質GDP成長率は、98年1~3月期以降前年同期比でマイナスとなる国・地域が多く、98年の経済成長率は、香港、韓国、インドネシア、マレイシア、タイで大幅なマイナスが見込まれている。一方、中国では8%近い成長を達成した模様であり、台湾でも5%程度の成長が見込まれている。

通貨・金融危機発生から1年以上経過したが、鉱工業生産は多くの国で未だ底を打っておらず、雇用情勢も悪化している。物価上昇率は、98年央にかけてASEAN諸国を中心に高まりをみせたが、このところ総じて横ばいで推移している。

輸出は、ドルベースでは総じて減少が続いている。一方、輸入は大幅な減少が続いていることから、貿易収支の黒字幅は拡大しており、経常収支も改善している。

各国の通貨は、経常収支の改善や外貨準備高の増加等を背景に、10月以降増価傾向にある。また、通貨の安定がみられることから、短期金利は低下傾向にある。

インドでは、景気の鈍化が続いている。一方、オーストラリアでは景気は拡大しており、物価も安定している。

中国:景気の拡大テンポは、固定資産投資の増勢等によりこのところやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。

香港:景気は後退している。物価は下落している。失業率は急速に上昇している。

中国では、実質GDPは、98年1~6月期前年同期比7.0%増、1~9月期同7.2%増の後、固定資産投資の増勢等から98年前年比7.8%増(実績見込み)となった。鉱工業生産(実質)は、10月前年同月比10.6%増の後、11月同11.0%増と政府による固定資産投資の拡大による需要促進により、9月以降回復している。

消費は、社会商品小売総額(消費財、名目)をみると、10月前年同月比7.6%増の後、11月同7.4%増と家電、衣料などの好調から年後半頃より回復している。固定資産投資(国有部門、名目)は、10月前年同月比28.4%増の後、11月同28.9%増と水利、通信などインフラ関連を中心に増勢を強めている。

物価は下落している。消費者物価上昇率をみると、10月前年同月比▲1.1%の後、11月同▲1.2%となっている。

貿易収支は、8月以降輸出が減少傾向にあることから黒字幅が縮小しており、10月30.8億ドルの後、11月28.0億ドル、12月23.3億ドルとなっている。ただし98年全体では435.9億ドルの黒字と97年の黒字額を31.7億ドル上回っている。輸出は、10月前年同月比17.3%減の後、11月同9.7%減、12月同3.8%増と減少傾向にある(98年前年比0.5%増)。地域別にはアジア向けが大幅なマイナスとなっており、品目では衣類などが不振である。一方輸入は、10月前年同月比9.2%減、11月同2.1%増、12月同8.0%減と減少傾向で推移している。

金融面の動向をみると、マネーサプライ増加率(M2、期末残)は10月前年同月比16.3%の後、11月は同16.7%と次第に伸びが高まっており目標圏内(16~18%)で推移している。外貨準備高は11月末1,446億ドルと緩やかに増加している。また中国人民銀行は内需拡大などを狙いとした預金・貸出金利の引下げを行った(12月7日実施、平均引下げ幅0.5%)。

香港では、実質GDPは4~6月期前年同期比5.1%減の後、7~9月期は個人消費の一層の冷え込み、固定資本形成の減少などから同7.1%減となった。個人消費は、4~6月期前年同期比5.1%減の後、7~9月期同10.0%減と更に悪化している。小売売上高は、4~6月期前年同期比15.4%減の後、7~9月期同19.3%減、10月前年同月比20.0%減と衣料、自動車等を中心に大幅な減少が続いている。固定資本形成は、4~6月期前年同期比5.6%増の後、7~9月期は同9.1%減と大幅なマイナスとなった。物価は、消費者物価上昇率が7~9月期前年同期比2.3%の後、住宅賃貸料の下落などから10月前年同月比▲0.1%、11月同▲0.9%となった。失業率は8~10月5.2%の後、9~11月5.5%と製造業などを中心に急速に上昇している。貿易動向をみると、輸出、輸入ともに減少しているが貿易収支赤字は7~9月期8.0億ドルの後、10月0.9億ドル、11月0.9億ドルと年半ば以降急速に縮小している。輸出は7~9月期前年同期比10.4%減の後、10月前年同月比17.6%減、11月同9.4%減と中国向けを中心に減少が続いている。一方輸入は、再輸出の減少による原材料等の輸入の減少などから、7~9月期前年同月比15.4%減、10月前年同月比22.5%減、11月同14.6%減と輸出を上回るペースで減少している。

韓国:景気は後退している。失業率は、このところほぼ横ばいで推移している。物価の騰勢は鈍化している。貿易収支は大幅な黒字が続いている。

韓国では、景気は後退している。実質GDPは、98年4~6月期前年同期比6.8%減の後、7~9月期同6.8%減となった。なお、7~9月期の成長率を内外需別にみると、内需寄与度の20.7%減に対して外需寄与度は13.9%増と、依然として内需の大幅減少によるマイナス成長が続いている。民間最終消費は、4~6月期前年同期比13.0%減、7~9月期同12.0%減と減少している。投資は、建設投資が7~9月期前年同期比15.8%減、設備投資が98年7~9月期同46.3%減、在庫投資が7~9月期同3.1%減と、いずれもマイナスを記録している。

鉱工業生産(原数値)は、7~9月期前年同期比8.1%減の後、10月は8.0%減となった。鉱工業生産指数(季節調整値)の水準をみると、8月102.6の後、9月113.6、10月113.0と2ヶ月連続で97年12月以来の110台を記録した。製造業稼働率は、7~9月65.5%の後、10月は67.6%となった。

失業率は、10月は7.1%、11月は7.3%となり、失業者数は10月153.6万人で前月比3.6万人減と、ほぼ横ばいで推移している。

物価の騰勢は鈍化しており、消費者物価上昇率が10月前年同月比7.2%、11月同6.8%となった。生産者物価上昇率は10月前年同月比11.7%、11月同11.0%となった。

国際収支をみると、輸出は減少しており、10月前年同月比13.1%減の後、11月同1.5%増となった。輸入は減少しており、10月前年同月比39.2%減の後、11月同28.8%減となった。結果として、貿易収支は10月31.8億ドル、11月36.7億ドルと大幅な黒字を記録した。経常収支は98年10月27.5億ドルの黒字の後、11月33.3億ドルの黒字となった。

金融面の動向をみると、会社債収益率(期中平均)は、景気回復に重点を置いた政策が反映され、11月前年同月比9.6%と、通貨危機以前より低水準となっている。通貨供給量(M2)の期中平均残高は、98年10月前年同月比27.3%と上昇している。為替レートは、経済構造改革への取り組みが評価されていることなどから安定的に推移している。外貨準備高は、11月に500億ドルと過去最高を記録した。

台湾:景気の拡大テンポは鈍化している。

シンガポール:景気は後退している。

台湾では、景気の拡大テンポは鈍化している。実質GDPは、98年4~6月期前年同期比5.2%増の後、7~9月期同4.7%増となった。内需が堅調に推移する一方で、外需の伸びが低下している。個人消費は、4~6月期前年同期比6.8%増、7~9月期同6.2%増となった。固定資本形成は、民間投資が4~6月期前年同期比19.8%、7~9月期同11.7%と伸びが鈍化したものの高い伸びを維持している。

鉱工業生産は、鈍化傾向にあり、7~9月期前年同期比4.9%増、10月前年同月比2.0%増、11月同2.7%増となっている。

失業率は、4~6月2.5%から7~9月3.0%と上昇した後、10月3.0%、11月2.9%とほぼ横ばいで推移している。物価は、消費者物価上昇率は低下基調で推移し、7~9月期前年同期比0.6%となったが、10月前年同月比2.6%、11月同3.9%と台風の影響による食料品価格の上昇から一時高まった。卸売物価上昇率は、7~9月期前年同期比1.2%の後、10月前年同月比▲2.3%、11月同▲7.0%とマイナスに転じている。

経常収支は7~9月期20.8億ドルの黒字となった。輸出は7~9月期前年同期比9.6%減、10~12月期同12.8%減と減少幅が拡大している。一方、輸入も7~9月期前年同期比15.4%減、10~12月同10.7%減と減少が続いている。貿易収支は7~9月期34.7億ドルの黒字の後、10~12月12.6億ドルの黒字となった。

金融面の動向をみると、マネーサプライ(M2)は、7~9月期前年同期比8.7%増、10月前年同月比9.7%増、11月同9.8%増となり、目標圏内で推移している(目標圏:6~12%)。なお、中央銀行は、11月、12月に2度の公定歩合引下げを行い、公定歩合は4.75%まで引き下げられた。

シンガポールでは、景気は後退している。実質GDPは、98年4~6月期前年同期比1.8%増の後、7~9月期は製造業、商業の不振から同0.7%減とマイナスに転じた。製造業生産は、7~9月期前年同期比4.2%減の後、10月前年同月比7.9%減、11月同3.3%減と減少が続いている。個人消費は、4~6月期前年同期比2.1%増の後、7~9月期同2.9%減となった。小売販売額(名目)をみると、7~9月期前年同期比13.1%減の後、10月は衣類、自動車の不振などから前年同月比10.7%減となった。固定資本形成は、4~6月期前年同期比2.6%減の後、7~9月期同6.4%減と2期続けて減少している。

物価は下落している。消費者物価上昇率は、食料、衣料、輸送・通信関連費の下落から、7~9月期前年同期比▲0.8%、10月前年同月比▲1.6%の後、11月同▲1.5%となっている。

失業率(季節調整値)は6月2.3%の後、9月は4.5%と大幅に上昇した。

貿易収支は、輸入の大幅な減少から黒字が続いており、黒字幅は拡大傾向にある。貿易収支黒字は、7~9月期26.0億ドルの後、10月10.9億ドル、11月8.7億ドルとなっている。輸出は、7~9月期前年同期比14.9%減の後、10月前年同月比13.3%減、11月同12.5%減となっている。一方輸入は、7~9月期前年同期比28.5%減の後、10月前年同月比26.6%減、11月同24.6%減と大幅な減少が続いている。経常収支黒字幅は、4~6月期の44.1億ドルから7~9月期は50.8億ドルへと拡大している。

金融面の動向をみると、マネーサプライ(M2)増加率は、9月前年同月比10.0%の後、10月同9.5%とこのところ伸びが高まっている。なお、シンガポール政府は実質GDP成長率見通しを98年前年比0.5~1.0%、99年同▲1.0~1.0%とみている(11月発表)。

アセアン:景気は後退している。物価上昇率は、総じて横ばいで推移している。貿易収支は、輸入の大幅なマイナスにより、黒字が続いている。

アセアン各国の動向をみると、インドネシアでは、景気は後退しており、実質GDPは、98年4~6月期前年同期比16.8%減、7~9月期同17.4%減と大幅なマイナスとなった。

製造業生産は、1~3月期前年同期比5.7%減、4~6月期同19.5%減と、大幅に縮小している。

物価は、消費者物価上昇率が、7~9月期前年同期比76.3%の後、10~12月期同78.3%と高騰している。

貿易収支(通関ベース)は、4~6月期59.6億ドルの黒字の後、7~9月期同58.2億ドルと、大幅な黒字を計上した。輸出は、4~6月期前年同期比8.7%減の後、7~9月期同9.4%減と減少した。輸入は、4~6月期前年同期比43.2%減の後、7~9月期同34.1%減と、大幅なマイナスが続いている。

金融面の動向をみると、金利は依然として高水準で推移しているが、低下傾向がみられる。

タイでは、景気は後退している。製造業生産は、98年4~6月期前年同期比15.3%減、7~9月期同10.4%減、10月前年同月比3.4%減と減少幅にやや縮小がみられるものの、依然として減少が続いている。

物価は、消費者物価上昇率は98年半ばから低下に転じ、7~9月前年同期比8.1%、10~12月期同5.0%となった。

経常収支は大幅な黒字が続いており、98年7~9月期34.1億ドルの黒字となった。輸出は、7~9月期前年同期比8.7%減、10月前年同月比12.6%減と減少が続いている。一方、輸入は7~9月期前年同期比34.2%減、10月前年同月比24.5%減と大幅な減少が続いている。貿易収支黒字は7~9月期31.5億ドル、10月10.8億ドルの黒字となった。

金融面の動向をみると、金利は低下している。

マレイシアでは、景気は後退している。実質GDPは、98年4~6月期前年同期比6.8%減の後、7~9月期同8.6%減となった。

鉱工業生産は、減少が続いており、7~9月前年同期比10.2%減、10月前年同月比10.4%減となった。

物価は、消費者物価上昇率が、7~9月期前年同期比5.7%、10月前年同月比5.2%、11月同5.6%と高めの水準で推移している。

貿易収支は黒字幅が拡大しており、4~6月期33.7億ドルの黒字から、7~9月期40.9億ドルの黒字、10月17.4億ドルの黒字となった。輸出は7~9月期前月同期比10.6%減、10月前年同月比2.7%増、輸入は7~9月期前年同期比33.0%減、10月前年同月比24.5%減となった。

金融面の動向をみると、金利は低下している。マネーサプライ(M2)の伸びは鈍化傾向にあり、11月前年同期比4.5%増となった。

フィリピンでは、景気は後退している。実質GDPは、98年4~6月期前年同期比0.8%減の後、7~9月期同0.1%減と、マイナス成長となった。

製造業生産は、4~6月期前年同期比0.2%増、7~9月期同5.6%減と、縮小している。

物価は、消費者物価上昇率は高水準で推移しており、7~9月期前年同期比10.6%の後、10月前年同月比10.2%、11月同11.1%となった。

貿易収支(通関ベース)は、4~6月期マイナス25.3億ドルの後、7~9月期5.1億ドル、10月1.3億ドルと、黒字に転じている。輸出は、欧米向けなどが好調なため、7~9月期前年同期比19.1%増、10月前年同月比9.3%増となった。これに対して輸入は、7~9月期前年同期比21.4%減、10月前年同月比29.2%減と、大幅に減少した。

金融面の動向をみると、金利はやや低下している。

インド:鉱工業生産の鈍化や輸出の減少が続いており、景気の鈍化が続いている。物価の騰勢は強まっている。貿易収支赤字は高水準となっている。

インドでは、実質GDPは、96年度(4~3月)前年度比7.5%増の後、97年度は天候不順による農業生産の不振と工業生産の伸びの鈍化から、同5.1%増と減速した。

鉱工業生産は、消費財を中心に伸びが鈍化しており、98年1~3月期前年同期比7.5%増、4~6月期同4.3%増の後、7月前年同月比2.1%増、8月同2.4%増となった。

物価は、食料品価格の上昇を主因に騰勢が強まっている。卸売物価上昇率は4~6月期前年同期比6.6%、7~9月期同8.4%の後、10~12月期は同7.8%となった。消費者物価上昇率(工業労働者対象)は、4~6月期前年同期比10.2%、7~9月期同15.6%の後、10月前年同月比18.6%、11月同19.7%となった。

国際収支をみると、輸出(通関、ドル・ベース)は、98年に入って減少が続いている。1~3月期前年同期比3.2%減、4~6月期同8.1%減の後、7~9月期は同1.8%減となった。輸入は、1~3月期前年同期比2.7%減の後、4~6月期同6.1%増、7~9月期同10.2増となった。この結果、貿易収支赤字は1~3月期20.0億ドル、4~6月期28.1億ドル、7~9月期22.1億ドルと高水準となっている。

金融面の動向をみると、金利(TB91日物、期中平均)は、4~6月期9.01%、7~9月期9.26%の後、10~12月期は9.64%とやや上昇した。通貨供給量(M3、期末残高)は、6月前年同月比17.8%増、9月同19.3%増の後、12月は同19.7%増となった。

オーストラリア:景気は拡大している。失業率はほぼ横ばいで推移している。

消費者物価上昇率は安定している。

オーストラリアでは、実質GDP成長率は、98年4~6月期前期比年率3.6%増の後、7~9月期同4.2%増となり、景気は拡大している。

消費は、実質家計最終消費支出が4~6月期前期比0.7%増のあと1.1%増と堅調に推移している。小売売上高は10月前月比0.8%増の後、11月同0.3%増となった。投資は、実質民間機械設備投資が、4~6月期前期比6.2%減の後、7~9月期同14.8%増となった。民間住宅投資は、4~6月期前期比1.5%増の後、7~9月期同2.2%減となった。住宅建設許可件数は、10月前月比2.1%増の後、11月同0.3%増となった。非住宅建設投資は98年4~6月期に28.0%減の後、7~9月期同0.3%増となった。

失業率は、9月に8.1%の後、10月は7.7%と低下したが、11月には8.0%となった。

消費者物価上昇率は、7~9月前年同期比1.3%と安定している。

経常収支は7~9月期73.2億豪ドルの赤字となり、前期に比べ赤字幅が拡大した。財の輸出は7~9月前期比0.1%増、財の輸入は同3.2%増となった。この結果、財の貿易収支は7~9月期22.3億豪ドルの赤字となった。

金融面の動向をみると、準備銀行は、12月2日に政策金利であるキャッシュレートを0.25%引下げ4.75%とした。オーストラリア・ドルは、98年12月末現在、対米ドルで9月末比2.7%増価となった。

オーストラリア政府は、12月17日に98年度(98年7月~99年6月)のGDP成長率見通しを98年9月の2.75%から3.25%へ上方修正した。

4 国際金融・商品 原油価格、下落

国際金融:ドルは、引き続き米国内の信用収縮懸念に伴う金融緩和観測などから減価。

国際商品:原油価格は、産油国による減産にも関わらず需給が緩和したため下落。

【国際金融】

98年10~12月期の米ドル(実効相場)は、10月初旬に減価し、その後11月は総じて増価したが、11月下旬以降は再び減価した(P2、図3)。対円では、10月初旬にアメリカの景気減速や信用収縮に対する懸念に伴う利下げ観測の台頭、及び日本の金融機能早期健全化法案の早期成立期待などから大幅に減価した。その後11月は米株価の回復から総じてやや増価したが、11月下旬以降は、米株価の軟化、クリントン大統領の弾劾問題に伴う政情不安、ブラジル経済に対する不安などから再びやや減価した。一方、対マルクでは、ドイツの景況指数の悪化などから独経済の減速懸念が広がり10月から11月にかけてやや増価したが、その後11月下旬以降は、上記ドルの減価要因などからやや減価した(モルガン銀行発表の米ドル実効相場指数(1990=100)98年12月31日105.9、9月末比4.5%の減価)。内訳でみると、12月31日現在、対円では9月末比17.0%減価、対欧州通貨では対マルクで同0.1%減価、対ポンドで同2.4%増価した。

なお、アジア通貨は、総じて対ドルなどで増価した。

【国際商品市況】

国際商品価格全体では、CRB商品先物指数は、10月以降11月中旬までは200ポイント台前半でほぼ横ばいの推移だったが、その後はほぼ一方的に下落し、12月には一時190ポイントを下回った。

商品別では、穀物は、主要産地の作況見通しや米国のロシア支援状況に応じて上下した。非鉄金属では、銅が、アジアなどの需要減退と増産があいまって供給過剰状態になり、総じて弱含んだ。貴金属では、金が、イラク情勢緊迫などで一時強含む場面があったものの、米国株式市況の好転などを背景に総じて弱含みで推移した。

【石油情勢】

原油価格(北海ブレント・スポット価格)の10月以降の動きをみると、10月初めは14ドル台半ばから始まったが、減産合意を遵守していない産油国が存在することや11月下旬のOPEC(石油輸出国機構)総会で更なる協調減産が決定されなかったことから、12月上旬の9ドル台前半までほぼ一方的に下落した。その後は、英米軍によるイラク空爆などから年末にかけて10ドル台を回復した。