第2章 個人消費の力強い回復に向けた課題

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第1章でみたようにウィズコロナへと進む下で、2022年の我が国の個人消費、雇用・所得環境は緩やかに持ち直してきた。他方、2022年春以降、物価上昇に賃金上昇が追い付かず、実質賃金は前年比マイナスが続いており、個人消費の腰折れを防ぐ上では、雇用・所得環境の更なる改善が不可欠である。また、経済社会活動に対する感染症の影響が薄れるにつれ、期待される生涯所得の伸び悩み等の感染拡大前から指摘されてきた我が国における個人消費、雇用・所得環境を取り巻く構造的な課題の解決を、景気回復の原動力に結び付けていくことの重要性は高まっていくであろう。これらの状況を踏まえて、本章では家計部門の短期及び中長期の課題を分析対象とし、個人消費が力強く回復を続けていくための論点を整理した。

本章の構成は以下のとおりである。まず第1節では、最近の個人消費の動向について、物価上昇の影響と、感染症下でトレンドから乖離して積み上がった家計の貯蓄に注目して分析した。その際に、感染拡大前から指摘されてきた我が国における構造的な消費下押し要因も加味して、今後の消費回復に向けた論点を整理した。続いて第2節では、経済社会活動の正常化が進む下で持ち直しが続く労働市場について、特に感染拡大前と比較した構造的な変化の兆しについて考察する。さらに、交易条件の悪化が続く中で、実質賃金に下押し圧力が掛かり続けている現状を踏まえ、構造的な賃上げの実現に向け、労働移動と最低賃金制度に注目してその効果を分析した。

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