第3章 成長と分配の好循環実現に向けた家計部門の課題(第1節)
第1節 多様な働き方の広がりと課題
本節では、正規・非正規雇用をはじめ、多様な働き方について、感染拡大以前から属性別にみて、どのような傾向があるのかを確認するとともに、正規雇用者と非正規雇用者間での処遇格差や働き方の違いに伴うセーフティネット面での課題について確認する。
1 正規・非正規雇用の動向と多様な働き方の広がり
(生産年齢人口が減少する中、感染拡大後も正規雇用者は増加傾向を維持)
生産年齢人口(15~64歳人口)は、1995年をピークに減少が続いている(第3-1-1図(1))。そうした中にあっても、女性や高齢者の労働参加が進んだことなどを背景に、感染症の影響が表れる2020年4-6月期以前まで就業者数や雇用者数は増加が続いてきた。感染拡大後は就業者数、雇用者数ともに横ばい圏内で推移している。
雇用者の内訳をみると、感染拡大前まで一貫して増加してきた非正規雇用者数は、感染症の影響により2020年4-6月期に大幅に減少した後、緊急事態宣言発出と解除による増減を伴いつつ、横ばい圏内で推移しており、依然として感染拡大前の水準を下回っている(第3-1-1図(2))。一方、2014年まで減少してきた正規雇用者数は2015年に増加に転じ、感染拡大後も増加傾向をおおむね維持しており、2013年と比べると非正規雇用者を上回る増加となっている。
(女性の正規雇用者は2015~19年までほぼ全ての年齢層で増加し、非正規雇用者も45歳以上を中心に増加)
上述のような雇用の変化はどのような性別・年齢層で生じているのだろうか。まず、感染症の影響が表れる前の2019年までの雇用者数の動向を2013年の水準との比較でみると、男性では若年層の雇用情勢の改善を背景に15~24歳の雇用者数が正規・非正規ともに増加した(第3-1-2図(1)、(2))。また、働き方改革等を背景に高齢者の雇用機会の確保が進む1中で55~64歳の正規雇用者、65歳以上の正規・非正規の雇用者数も増加した。なお、団塊ジュニア世代2等の人口構成を反映し、男性の正規雇用者数は35~44歳が減少する一方、45~54歳が増加した(付図3-1)。女性については、2015年以降、ほぼ全ての年齢階層において正規雇用者数が増加し、非正規雇用者数も45歳以上を中心に増加した(第3-1-2図(3)、(4))。
(感染拡大前に比べ、男女ともに非正規雇用は減少が続く一方、女性の正規雇用は増加)
次に、感染拡大の影響が表れた2020年以降の雇用者数を2019年同期の水準と比較すると、非正規雇用者数は、2020年4-6月期に男女ともにほぼ全ての年齢層で大幅に減少した後、横ばい圏内で推移しており、いずれも感染症前の水準を回復していない(第3-1-3図(2)、(4))。
女性の正規雇用者数は感染拡大後もほぼ全ての年齢層で増加が続き、感染拡大後の非正規雇用者数の減少にほぼ相当する正規雇用者数の増加が生じている(第3-1-3図(3))。こうした中で非正規雇用者から正規雇用者になった女性もいると推測されるが、正規雇用者数の増加がどのような経路で生じたかについては、別の統計も活用し、後述する。
一方、男性の非正規雇用者数の減少幅は、女性ほど大きくはなく、正規雇用者数も横ばいからやや増加傾向にある(第3-1-3図(1)、(2))。55歳以上の雇用者では、非正規雇用者数の減少と正規雇用者数の増加がみられることから、定年延長を含め、正規雇用による継続雇用の動きがあることもうかがわれる。また、感染拡大前は、男女ともに65歳以上の非正規雇用者数が大きく増加してきたが、2020年以降は男性では減少、女性では増加幅が縮小している。こうした中、2020年以降、男女ともに、65歳以上を中心に非労働力人口が増加していることから(付図3-2)、これらの層における非正規雇用者は、感染症への不安等から自発的に就労を控えている可能性もあると考えられる。
(男女ともに2010年代半ば以降、医療・福祉、情報通信業等において正規雇用が増加)
2019年までの男性の産業別・雇用形態別の雇用者数の動向を2013年の水準との比較でみると、正規雇用では情報通信業、医療・福祉、学術研究等、製造業等で増加する一方、生活関連サービス・娯楽業等で減少している(第3-1-4図(1))。非正規雇用では卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業、医療・福祉、製造業を中心に増加している(第3-1-4図(2))。製造業において、正規雇用は2018年以降、非正規雇用は継続して、雇用者数が増加してきたことが男性の特徴であり、また、後述するように、製造業は地方圏を中心に成長に寄与している。
女性の正規雇用では、2019年時点では、医療・福祉が増加分の3割程度を占め、情報通信業の寄与が次いで大きく、また、生活関連サービス・娯楽業以外の全ての業種で増加している(第3-1-4図(3))。非正規雇用では、医療・福祉や宿泊・飲食サービス業を中心に、全ての業種で幅広く増加していることが女性の特徴である(第3-1-4図(4))。
男女に共通する特徴としては、人手不足等を背景に、2010年代半ば以降、正規雇用者数の増加が続いてきたこと、医療・福祉や情報通信業等の業種が正規雇用者数の増加をけん引してきたことが挙げられる。
(感染拡大後、非正規雇用者を中心に雇用調整が生じている点は男女に共通)
次に、2020年以降の産業別・雇用形態別の雇用者数を2019年同期の水準と比較すると、男性・正規雇用では感染症の影響を受けた宿泊・飲食サービス業のほか、高齢層の退職等の影響もあって建設業や製造業で減少する一方、情報通信業や学術研究等、教育・学習支援業、医療・福祉等を中心に増加傾向が続いている(第3-1-5図(1))。男性の非正規雇用は、運輸・郵便業や宿泊・飲食サービス業、製造業や建設業を中心に多くの業種で減少している(第3-1-5図(2))。
このように、男性の正規雇用では大きく増加する業種と減少する業種が混在しているのに対し、女性の正規雇用は増加が続いている業種が多く、その規模も拡大傾向にあり、女性の正規雇用者を確保しようとする動きが幅広い業種でみられる(第3-1-5図(3))。一方、女性の非正規雇用については、おおむね医療・福祉を除く全ての業種で減少しており、非正規雇用者に雇用調整のしわ寄せが生じている点は男女に共通している(第3-1-5図(4))。
(生計維持を目的として副業・兼業を実施する割合が大きい)
このような雇用動向の変化がみられる中で、リクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査」を用いて、副業・兼業を行う雇用者の割合をみると、女性の割合が男性よりもやや大きく、2020年は女性の正規雇用者の10.5%、非正規雇用者の15.4%が副業・兼業を実施していたことがわかる(第3-1-6図(1))。政府は働き方改革の一環として、副業・兼業を積極的に推進3してきたが、これまでのところ、副業・兼業の実施割合はおおむね横ばいとなっている。
また、感染症の影響により、男女の非正規雇用者において、生計維持や貯蓄・自由に使えるお金の確保を理由として、副業・兼業を実施した者の割合が2019年と比べて上昇しており、本業における収入減や家族の収入減を副業・兼業で補っていたと考えられる(第3-1-6図(2))。加えて、副業・兼業の実施理由として、時間にゆとりがあることを挙げる割合が全ての属性で上昇しており、労働時間の減少やテレワーク実施率の高まりを背景に、空いた時間を有効活用しながら、より柔軟に別の仕事を行うことが可能となったことも示唆される。
(フリーランスを含む、従業員を雇っていない自営業主は、女性を中心に2017年以降増加傾向)
自営業主や家族従業者数は減少傾向が続いてきたが、2017年以降、おおむね横ばいの水準で推移している(第3-1-7図(1))。特に、自営業主のうち従業員を雇っていない者4については、2017年以降、女性を中心に、様々な年齢層において、緩やかな増加傾向がみられる(第3-1-7図(2))。自営業主のうち従業員を雇っていない者には、フリーランスの形態での働き方を本業とする者が含まれており、こうした企業に属さない形での働き方の選択も上述の就業者数の増加に繋がっていると考えられる。
なお、内閣官房(2020)5によると、フリーランスの人数は462万人程度(うち本業が214万人程度、副業が248万人程度)と試算されているが、「労働力調査」においては、フリーランスを本業とする者が従業員を雇っていない自営業主に含まれる一方、フリーランスを副業とする者は自営業主や雇用者に含まれている。
2 非正規雇用と処遇格差
(自発的に短時間就業を選ぶ者の割合は増加し、いわゆる不本意非正規雇用者比率は低下)
女性や高齢者の労働参加が進む中で、1週間の就業時間が35時間未満の短時間就業者数は、すう勢的に増加傾向にあり、短時間就業を選択した理由も、「元々週35時間未満の仕事だった」以外の理由による者が増加している(第3-1-8図(1))。
この点について、主な属性別に詳しく理由をみると、高齢層(65歳以上の男女)においては、「勤め先や事業の都合」、介護や休暇以外の「その他自分・家族都合」を理由にしている割合が大きい(第3-1-8図(2))。ただし、2013年と比較すると、感染拡大後は、景気悪化を理由にした割合が大きく増加しており、経済情勢の影響を受けやすいことがわかる。一方、女性についてみると、25~34歳では、出産・育児を理由とする者が多数を占めており、2013年と比較すると、出産・育児や休暇取得を理由とする者の割合が高まっている。45~54歳では、「勤め先や事業の都合」、「その他自分・家族都合」に加え、介護・看護や休暇取得を理由とする者の割合が25~34歳と比べて大きい傾向にあるが、特に「勤め先や事業の都合」を理由とする者の割合は低下傾向にある。高齢層と比べて、女性では自発的に短時間就業を選ぶ傾向が強まっている。
非正規雇用者についてもその選択理由をみると、高齢層・女性のいずれも、「自分の都合のよい時間に働きたい」を理由とする者の割合が高まっている(第3-1-9図)。また、感染拡大以前と比べてその割合は低下しているものの、25~34歳の女性においては、「家事・育児・介護等と両立しやすい」を、また45~54歳の女性においては、「家計の補助・学費等を得たい」を理由とする者の割合が引き続き大きい。一方で、「正規の職員・従業員の仕事がない」を理由とするいわゆる不本意非正規雇用者比率は、これらの高齢層・女性においては、2021年7-9月期は7~10%程度と、2013年と比較して低下しており6、今後、希望に応じた雇用形態での就労が一層進展することが期待される。
(正規・非正規間での賃金水準の差は縮小傾向)
不本意非正規雇用者比率は低下し、また、働き方改革の一環として、同一労働同一賃金7の実現に向けた取組が進められてきたが、実際に正規雇用者と非正規雇用者の間の処遇格差は縮小してきたのだろうか。
常用労働者1,000人以上の大企業に雇用される正社員と非正規社員の1時間当たり所定内給与額を比べると、2020年は感染症の影響等により、調査における労働日数や労働時間数の要件を満たす労働者の割合が減少したことによる影響が表れている点に留意が必要だが、非正規社員の給与額は男女ともに増加傾向にある。こうした中で、正規・非正規間での賃金水準の差は縮小傾向にある(第3-1-10図)。
ただし同一労働同一賃金ルールへの企業の対応状況を確認すると、2021年10月時点で「必要な見直しを行った・行っている、又は検討中」の割合が約46%である一方、約2割が依然として「対応方針は未定・わからない」状態にある(第3-1-11図)。2021年4月からは、同一労働同一賃金が中小企業にも適用されたことから、今後、中小企業を含めて正規・非正規間での賃金水準の差が縮小していくかどうかを注視してくことが必要である。
(正規雇用者との間の待遇差への不満も残る)
このように、正規・非正規間での賃金水準の差は、一定程度改善がみられているが、非正規雇用者は、自身の待遇について満足しているのだろうか。「全国就業実態パネル調査」によれば、非正規雇用者のうち約2~3割が、自身と同様の働き方をしている正規雇用者への評価と比較して、自身の働き方に対する評価に不満があると回答している(第3-1-12図)。男性では、年齢が高まるにつれて、不満を感じる割合が高まり、特に50代以上で不満を感じる割合が大きい。一方、女性は年齢にかかわらず、不満を感じており、その割合は総じて男性を上回っている。また、2020年から大企業において同一労働同一賃金の取組が施行されたものの、2019年と比べて正規雇用との間の待遇差への不満には大きな変化はみられない。
なお、内閣府(2020)8において、業務の内容等が同じ正社員と比較して納得できない制度や待遇として、昇給や賞与のほかに、退職金や人事評価・考課、各種手当、休暇等を挙げる割合が比較的大きいことが示されており、賃金水準以外の様々な観点からも、処遇格差の是正を図っていくことが必要である。
コラム3-1 派遣労働者の動向
多様な働き方の一つとして、非正規雇用の中でも派遣の形態で働く者の存在が挙げられる。2015年の労働者派遣法9改正により、集計方法が変更されているが、厚生労働省が公表している「労働者派遣事業報告書」をみると、各年6月1日時点の派遣労働者数は、2016年度以降、緩やかな増加傾向にある(コラム3-1-1図(1))。なかでも、無期雇用派遣労働者数10の増加が顕著である。
また、2020年6月1日時点における派遣労働者数の多い派遣先の業務をみると、一般事務従事者、製品製造・加工処理従事者、情報処理・通信技術者、運搬技術者、の上位4つで約50%を占めており、製造業、非製造業を問わず派遣労働者の活用が進んでいることがわかる(コラム3-1-1図(2))。
一方で、主な業種別に派遣労働者の賃金の推移をみると、賃金水準が高いいわゆる技術職においては、建築・土木・測量や電気工事といった専門技術が必要と考えられる業種を中心に、着実に上昇している(コラム3-1-1図(3))。一方、事務や製造業従事者の賃金は全体平均と比べて低めの伸びで推移しており、賃金の二極化が進んでいる。2020年4月より、同一労働同一賃金ルールは派遣労働者も対象とされており、その効果が派遣労働者の賃金にどのように表れてくるか注視が必要である。
派遣労働者の就業に当たっては、個人の能力やスキルに応じた賃金を得られることに加え、専門性を高められるようなキャリア形成が必要であるが、2015年の改正法において、初めて、派遣元事業主に対して、派遣労働者のキャリア形成に関する責務として、教育訓練の実施11が規定された。独立行政法人労働政策研究・研修機構(2021b)においては、こうした動きを踏まえて、具体的にどのような研修が実施されているかが、法改正前の2010年調査時点の実施状況と比較する形で示されている。これによると、派遣前研修、情報保護やコンプライアンス、ビジネスマナー等の基礎的な研修の実施割合が、以前よりも高まっている(コラム3-1-2図(1))。加えて、職務に必要な資格取得等に関する研修やキャリアセミナーといった、専門性の向上等も含め、労働者の今後のキャリアを見据えた研修の実施割合の上昇がみてとれる。
さらに、こうしたキャリア形成支援について、派遣元事業所が考える効果を確認すると、派遣労働者のキャリア意識を高めることができること、派遣労働者の質を一定以上のレベルに保つことができること、能力向上に対する派遣労働者の希望に答えられることを挙げる割合が大きく、派遣元・労働者双方にとってプラスの効果があることがわかる(コラム3-1-2図(2))。
3 セーフティネット面での課題
(感染症下での雇用支援は拡大)
このように多様な働き方が広がる中で、感染症による雇用調整のしわ寄せは、非正規雇用者に集中したが(前掲第3-1-3図、前掲第3-1-5図)、従来のセーフティネットだけでは十分に対応できなかったことから、雇用調整助成金や休業支援金・給付金をはじめとする様々な制度が創設・拡充された(第3-1-13表)。また、持続化給付金は個人事業主・フリーランスも対象とされ、労働移動・就業促進を目的とした各種施策も創設・拡充されるなど、多角的な就業支援の取組が行われてきた。
各種支援策については、手続の煩雑さ等を指摘する声がありつつも、おおむね活用が進み、雇用の下支えに寄与してきた。一方で、求職者支援や職業訓練等の施策については、更なる拡充も見据え、その成果や課題を検証した上で、財源の在り方も含めて見直すことや、非正規雇用労働者やフリーランス等へのセーフティネットの在り方を検討することとされており、その活用を促進するとともに、今回の経験を踏まえて様々な就業形態に応じたセーフティネットの整備を進めていくことが求められる12,13。
(様々な支援が必要となった背景として、雇用保険を適用されない就業者等の存在)
また、様々な支援策が講じられてきた背景としては、1週間の所定内労働時間が20時間未満の雇用者や自営業者、フリーランス等が、第1のセーフティネットである雇用保険の適用対象外であることが挙げられる(第3-1-14図(1))。さらに、雇用保険が適用されていても、失業給付の受給資格を満たしていない者や給付期間を終了しても失業状態が続いている長期失業者の存在が挙げられる14,15(第3-1-14図(2)、後掲第3-1-15図)。完全失業者数に比べて、失業給付受給者数は約25%と非常に低水準であるが、この背景の1つにある、雇用保険未加入の雇用者の属性について確認したい。「全国就業実態パネル調査」で雇用保険料を自分で支払っていない者の属性をみると、女性の35~64歳の主な稼ぎ手ではない雇用者、いわゆる主婦層が約4割を占めている。また、女性に比べて男性は低水準にあるが、65歳以上の主な稼ぎ手の男性も、1割以上が雇用保険未加入であり、非正規や短時間の雇用者が多い層で、雇用保険未加入の者が多いことがみてとれる(第3-1-14図(3))。雇用保険事業や雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)の財源である労働保険特別会計については、感染症の影響による支給急増を受けて、その資金を保険料収入では賄いきれず、積立金を取り崩すことによって対応がなされてきた。特に、国庫負担が行われていなかった雇用保険二事業については、雇用調整助成金の支給増加により、積立金を取り崩しても財源が不足したことを受け、臨時特例法16により、雇用調整助成金等に要する費用の一部として、一般会計からの繰入れや雇用保険の積立金からの借入れが認められた。これらの収入状況に鑑みて、雇用保険事業や雇用保険二事業の保険料率17は、2022年度から引上げが行われることとなった18。多様な働き方が広がる中で、雇用保険の適用対象から外れてきた者への、セーフティネットや適切な保険料等の負担の在り方を検討していくことが必要と考えられる。
(失業率の上昇は抑制されているものの、1年以上の長期失業者は増加)
こうした中、労働市場の需給を確認すると、有効求人倍率は2019年の1.6倍超から2020年10月に1.04倍まで大幅に低下し、その後も緩やかな持ち直しにとどまっており、感染症前の水準を回復していない(第3-1-15図(1))。一方、2019年は2%台前半で推移していた失業率は、企業の雇用維持の取組や上述の政策支援等もあり、感染拡大後もその上昇は抑制され、2020年10月の3.1%をピークに2%台後半にとどまっている。
しかしながら、1年以上の長期失業者数の推移をみると、2019年まではおおむね減少が続いていたものの、感染拡大後は増加傾向にあり、特に2021年4-6月期以降は、2019年同期と比較して、男女ともに大幅な増加がみられる(第3-1-15図(2))。これは、感染症の影響を受けて失業し、その後も引き続き失業状態が続く者が多く存在することを示しており、それぞれの状況に対応した求職者支援訓練や就業支援等の提供が求められる。
(1)ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
(2)離職の日以前2年間に、「被保険者期間」が通算して12か月以上あること。ただし、倒産・解雇等により離職した方(「特定受給資格者」又は「特定理由離職者」)については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。
・定年、契約期間満了や自己都合の方・・・90~150日
・倒産・解散等や、労働契約が更新されなかった方等・・・90~330日
・障害者等の就職困難者の方・・・150~360日
とされており、これに加えて、感染症等の影響に対応した給付日数の延長に関する特例により、上記の給付日数を原則60日(一部30日)延長する措置が講じられている。