付注1-2 為替変動要因の推計について

1 概要

為替は、金融政策や経済情勢、貿易等の実取引など、様々な要因により変動する。また、そうした各種変動要因が為替に与える影響度合いは、長期に亘って一律ではない。本稿では、ドル円レートを対象に、同レートに影響を与えると考えられる3つの指標(①日米金利差、②日米マネタリーベース比、③米株高インデックス(資産価格))について、為替との相関を、相関関係に変化が生じた構造変化点とともに確認している。

2 データ

付注1-2 表を画像化したもの

3 推計方法

推計にあたっては、2つのステップを踏む。為替をはじめ、各種マーケットデータは、投機的な動きなどのノイズや循環要因を含むため、①Hodrick-Prescott Filter(以下、HPフィルタ)により、各種マーケットデータのノイズや循環要因を取り除いたトレンド成分を取り出す。②トレンド成分について、ドル円レートを被説明変数、日米金利差、日米マネタリーベース比、米株高インデックスそれぞれを説明変数とし、個々にBai-Perron testによる構造変化点の検定を行ったうえで、構造変化点間の説明力を推計している。各説明変数に期待される符号は下記のとおり。

付注1-2 表を画像化したもの

なお、HPフィルタは、下記を最小化する系列yHPと定義される。

付注1-2 数式を画像化したもの

本稿において、HPフィルタのスムーズ度を決定するλは、月次データにしばしば用いられる14,400としている。

また、構造変化点については、有意水準5%において、統計値が臨界値を超えた時点で構造変化がないという帰無仮説が棄却され、構造変化が生じたと判断している。各系列の臨界値と構造変化点のF値は下記に示すとおり。

付注1-2 表を画像化したもの

4 推計結果

各説明変数の構造変化点および説明結果は以下の通り(推計期間は何れも1988年1月~2020年10月)。

日米金利差:

構造変化点(1992年12月、1998年2月、2006年4月、2014年12月)

付注1-2 表を画像化したもの

日米マネタリーベース比:

構造変化点(1993年3月、2002年2月、2007年1月、2015年12月)

付注1-2 表を画像化したもの

米株高インデックス:

構造変化点(1992年12月、1998年10月、2009年4月、2015年6月)

付注1-2 表を画像化したもの