第3章 人口減少時代における対外経済構造の変化と課題

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我が国の人口は、2009年をピークに減少を続けている。とりわけ、総人口よりも生産年齢人口の減少が先に生じる中で、国内経済の構造変化はもちろん、貿易や投資を通じた海外との取引構造も変化している。本章では、こうした変化を明らかにした上で、国内総生産(GDP)1に海外からの所得と交易利得を加えた国民総所得(GNI)の持続的な成長に向けた課題について考察する。加えて、石油等の天然資源に恵まれない我が国の必須輸入品(エネルギー原材料や食料等)について、対外依存度の高さやそれに起因するリスクを低減する方策について検討する。本章の構成は、以下のとおりである。

まず、第1節では、我が国の対外経済構造の長期的な変化について確認する。具体的には、対外取引を表す国際収支や対外資産負債の変化を確認する。これまで、いわゆる貿易立国と呼ばれる成長を実現してきた我が国の貿易収支が、恒常的な黒字ではなくなりつつある背景と交易利得について考察することにより、GNIの持続的成長に必要な課題について整理する。

第2節では、今後も長期的な人口減少が見込まれるなか、我が国の対外経済構造の先行きについて考察する。具体的には、人口動態と対外経済取引に関する先行研究を踏まえて経常収支の動向に考察を加え、海外資産から収益力強化による、GNIベースでみた成長を継続するためには何が必要か検討する。

第3節では、人口減少時代の対外経済構造を踏まえた課題と対応のうち、輸入依存度が高いエネルギーや食料について、コスト面も含めて輸入依存のリスクを抑制する方策について検討する。

最後に、第4節で、全体を総括する。


1 本章では、特段の断りがない限り、国民総所得(GNI)を実質ベースで用いている。
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