付注3-2 人口減少がもたらす貯蓄・投資・経常収支への影響の推計について
1 推計方法
今後予測される我が国における人口減少および世界との相対的な高齢化スピードが国内貯蓄・投資、その差分である経常収支に与える影響について、Krueger and Ludwig(2006)の多国間世代重複モデルを参考に、試算した。
具体的には、1994年の実績値を基準に、下記の多国間世代重複モデルから求められる貯蓄、投資、経常収支のモデル推計値の伸び率を用いて、各推計値を算出する。
多国間世代重複モデルは以下のとおりであり、家計部門、企業部門、政府部門からなる経済を想定している1。ただし、ここでは日本とその他世界の2国間のモデルを考える。
家計部門は、予算制約のもと、効用を最大化するように、若年期と老年期の消費をそれぞれ決定する。
企業部門は、下記の生産関数に基づいて生産を行う。ただし、資本ストックは生産に使用した後、全て減耗する。
政府部門は、若年層から集めた社会保険料を賦課方式の年金として、その期の高齢者層に分配を行う。政府の予算制約式は以下のとおりである。
この経済における最適化条件は以下のとおりであり、これら条件を満たすように貯蓄や投資、雇用などが時間を通じて決定していく。
上記の最適化条件を基に、全ての変数が一定のスピードで成長していく均斉成長経路における投資や貯蓄、経常収支の均衡式を求めると投資、貯蓄、経常収支はそれぞれ人口動態のみに依存した関数として表され、以下のとおりとなる。
2 使用データと外生パラメーター
使用しているデータは以下のとおりである。人口は生産年齢人口(15歳以上65歳未満)を使用し、将来推計は中位推計を使用している。また、GDPについては、将来推計を1+g+nの成長率で延伸している。
また、推計に必要な外生パラメーターは、Krueger and Ludwig(2006)で用いられている値を使用し、下記のように設定した。簡単化のために社会保険料率を0、各国特有の技術水準を1として、各国間で差はないと仮定している。