付注3-3 傾向スコアマッチング法による対外直接投資の効果の推計について

1 推計方法

海外直接投資の開始が生産性等に与える因果関係を把握するため、Tanaka(2017)や内閣府(2017)等を参考に、傾向スコアマッチング法を用いた差の差(difference in difference)の分析を行った。

具体的には、まず、従業員規模といった各企業の属性情報を用いて、対外直接投資を開始する確率(傾向スコア)を推計する。その後、推計された傾向スコアが同程度で、実際に海外直接投資を開始した企業と開始しなかった企業を対応(マッチング)させ、それらの企業について、海外直接投資後のTFP、売上高利益率及び一人当たり賃金等の変化の差について推計を行っている。

2 使用データ

経済産業省「企業活動基本調査」の個票データを使用している。本稿では、海外子会社の所有を開始した後、3年間継続して海外子会社を所有する状態を継続した企業を、対外直接投資開始企業として扱う。分析にあたっては、海外直接投資を開始した企業と当該期間中、海外直接投資を開始しなかった企業のみを採用している。

また、推計期間は、推計で使用する変数が利用可能である1997年度から2017年度までとしている。データサンプルについては、海外直接投資開始の2年前から5年後までの8年間についてのバランスしたパネルデータを作成し、それらを結合している。

3 推計式

まず、海外直接投資を開始する確率(傾向スコア)について、以下の推計式によりロジット推計を行った。なお、説明変数については、対外直接投資を決定してから開始するまでの期間を考慮し、二期のラグをとっている。

付注3-3 数式1を画像化したもの

ここで得られた傾向スコアを基に、海外直接投資開始企業一社ごとに、最も傾向スコアが近い海外直接投資非開始企業一社を同一年・同一産業内で抽出し、1対1のマッチングを行う。マッチング後のサンプルを基に、以下の推計式により、OLSによる差の差の分析を行った。

付注3-3 数式2を画像化したもの

OUTCOMEについては、TFP(対数)、一人当たり賃金(対数)、売上高経常利益率、雇用量(対数)及び売上高(対数)を用いた。

4 推計結果

傾向スコアを求めるために行ったロジット推計の結果は以下の通り。

付注3-3 表1を画像化したもの

次に、差の差の分析の推計結果は以下の通り。

付注3-3 表2を画像化したもの