付注2-3 出産に影響を与える要因及び男性の育児休業取得者の特徴について
1 概要
働き方の見直しを進める際、出産や育児といったライフイベントとの親和性を回復することが重要である。そこで、出産にはどのような要因が影響を与え、あるいは与えていないのかという点について、統計的な識別を行う。また、育児休業(以下「育休」という。)の取得促進が求められているが、特に男性の育休取得者の特性についても、統計的な識別を行う。
2 データ
リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」を用いた。同調査は、2016年の調査開始から現在に至るまで、新サンプルも加えながら、同一の対象者を追跡調査したパネル調査である。本稿では、調査対象者とその配偶者の個人属性に加え、出産の有無、育休取得の有無、就業状態についての設問を利用し、出産に影響を与える要因や、男性の育休取得に影響を与える要因について分析を行った。なお、データ期間は2016年~19年である。
3 推計
(1)出産に影響を与える要因
①推計式
被説明変数は2017~19年のいずれかにおける調査対象者の出産(調査対象者が男性の場合は配偶者の出産)の有無である。説明変数は2016年の調査時点での個人属性を表す項目である(付注2-3-1表)。2016年時点の要因による2017~19年の出産の有無への影響を推計するため、調査対象者が男性と女性の場合それぞれについてプロビット分析を行った。
②推計結果
推計結果からは以下の事項が読み取れる。
① 男性、女性ともに、年齢が上がると出産確率は低下し、また、既に子どもの人数が2人以上であれば、その後の出産確率が低下。
② 女性の出産確率には、配偶者の同居の有無が強く影響を与えている。配偶者が単身赴任等の場合には低下するという意味である。
③ 男性、女性ともに、本人の就業状態が正規職員・会社役員の場合、非正規・自営等に比べて出産確率が上昇する。
④ 男性、女性ともに、配偶者の就業は出産確率を低下させる。
⑤ 男性、女性ともに、世帯年収が高いほど出産確率は上昇する。
⑥ 男性、女性ともに、育休の取得の有無は出産確率に影響しない(有意でない)。
(2)男性の育休の取得に影響を与える要因
①推計式
被説明変数は2019年における調査対象者の育休の取得の有無である。また、説明変数は2019年の調査時点での個人属性を表す項目である(付注2-3-3表)。
以上により、男性の育休の取得に影響を与える要因を推計するため、調査対象者が男性の場合についてプロビット分析を行った。
②推計結果
推計結果からは以下の事項が読み取れる。
① 子どもの人数が増えても育休取得確率はあまり変わらない。
② 配偶者の職業差は、育休取得確率にほとんど影響を与えない。
③ 勤務先の企業規模が30人未満と比べ、300人未満は育休取得確率が下がるが、300人以上や官公庁は変わらない。
④ 有休取得率が75%を超えると、有休取得率が低い者にくらべて育休取得確率が高まる。
⑤ 過去に育休の取得経験があると、育休取得確率は上昇する。