「日本経済2018-2019」刊行にあたって
内閣府経済財政分析担当では、毎年「日本経済」シリーズを公表し、夏の「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析を提供しています。今回の報告書では、緩やかな景気回復を続ける日本経済の現状とリスクを分析するとともに、少子高齢化や女性・高齢者の労働参加が進む中での家計部門の所得や消費の動向について、及び、米中通商問題などの不確実性が高まる世界貿易の動向と日本経済への影響について分析しています。
第1章では、日本経済の最近の動向と今後のリスクや課題について分析しています。日本経済は緩やかな回復を続けており、景気回復の長さでは戦後最長と並んだ可能性があります。今回の景気回復は、世界経済の緩やかな回復、企業部門の高い収益力や技術革新を背景にした設備投資意欲の高まり、雇用所得環境の改善などが大きな推進力となっています。ただし、先行きについては、米中間の通商問題など海外経済に関する不確実性には注意が必要です。また、人手不足感が高まる中で労働生産性が伸び悩んでおり、生産性の向上により潜在成長率を高めることが重要な課題です。
第2章では、少子高齢化や女性・高齢者の労働参加の進展といった構造変化が家計部門の所得や消費動向に与える影響等について分析しています。若年世帯や高齢者世帯では将来不安や遺産動機が消費を下押ししている面がありますが、共働き世帯の増加は消費の増加につながっています。将来不安を払しょくするとともに、働き方改革を消費の活性化にもつなげていくことが重要です。
第3章では、世界貿易の動向と日本経済への影響について分析しています。米中間の通商問題など海外経済の不確実性が高まっていますが、現時点では、我が国の貿易面等への影響は限定的とみられます。ただし、日本が国際的な生産ネットワークに深く組み込まれていることを踏まえると、通商問題が長く継続する場合には、サプライチェーンなどを通じた影響が及ぶ可能性や不確実性が企業活動を慎重化させる可能性があることには留意する必要があります。経済連携協定などの取組によって、自由で公正な共通ルールに基づく貿易・投資の環境整備を一段と進め、企業活動をより活性化することが引き続き重要です。
本報告書の分析が日本経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助となれば幸いです。
平成31年1月
内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
増島 稔
※本報告の本文は、原則として2018年12月28日までに入手したデータに基づいている。