付注2-4 流動性制約家計の推計について
宇南山・原(2015)やHara et al.(2016)を参考に、流動性制約に直面している家計(Hand to Mouth 家計、非リカーディアン家計)の割合を推計する。
1 流動性制約家計の定義
2 推計に用いるデータ
総務省「全国消費実態調査」の個票データを用いる。世帯主の年齢が22歳以上の世帯を対象とし、以下の定義にしたがった収入以下の純流動資産(マイナスの場合は借入限度額を加算)しか持たない世帯を流動性制約家計、収入の2倍以下の純流動性資産しか持たない世帯を流動性制約家計の予備軍とする。
以下、流動性制約家計の判別に用いる収入、純流動資産、流動資産、非流動資産、借入限度額の定義について述べる。
(ア)収入
世帯の実収入から定期的な収入ではないと考えられる収入(臨時収入、財産収入、特別収入)を除いたものとする。公的年金については、調査期間中では10月のみの支給であるため、2人以上世帯は金額を1.5 倍し、1か月平均に換算する。また、全国消費実態調査における資産残高のデータは月末時点のものであるため、給与支給日は20日1、公的年金の支給日は15日という前提を置いて、月末(月初)時点ではそれぞれ2/3、1/2が残っているものと仮定する2。
(イ)純流動資産
流動資産から流動負債を引いたものとする。
(ウ)流動資産
手元現金(繰入金)、通貨性預金、定期性預金、有価証券の合計とする。
(エ)流動負債
住宅・土地以外の負債と月賦・年賦の合計とする。
(オ)非流動資産
純不動産額、生命保険等、その他貯蓄の合計とする。
(カ)借入限度額
収入の1か月分と仮定する。
1 給料日は勤め先によって異なるため前提条件の設定が困難であるが、例えば、株式会社NTTドコモ「みんなの声・あなたの給料日はいつ?」(集計期間2015年3月26日~2015年4月9日、投票数11,197票)による調査結果の平均を計算すると、20.9日となることから、本分析では給与支給日を20日と仮定した。
2 等速で消費されると仮定している。