第3章 企業部門の成長に向けた取組と好循環の確立(第3節)

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第3節 まとめ

本章においては、企業収益が過去最高水準にある中で、企業の投資・支出行動の特徴と日本企業の中長期的な成長力を高める取組を概観した。企業が生み出した付加価値の分配という観点からは、配当性向がほぼ横ばいで推移する中、労働分配率が低下している。また、国内における設備投資は増加しているものの、企業収益の伸びの割には緩やかなものにとどまっており、結果として、企業は貯蓄超過となっている。ただし、内部資金の蓄積に応じて、海外も含めたM&Aなど広義の投資が増加しており、不確実性増大への備えとして内部資金を活用している側面もうかがわれる。賃金については、2010年以降の動向と、2000年代の動向を比べると、近年は失業率の低下といったマクロ環境の改善や業界他社の賃金動向といった外部要因による押し上げ効果がみられているものの、企業の利益率に対する感応度や産業別にみた人手不足感への感応度が近年低下している点が特徴である。

新たな需要の取り込みや成長分野への取組としては、IoTやビッグデータの活用の拡大といった情報通信技術のさらなる進化、インターネット販売などの電子商取引の拡大、自動車産業における運転支援技術の進展やハイブリッド車・電気自動車等の開発・生産といった環境対応への動き、高齢化が進む中での健康志向の高まりなど、技術革新やライフスタイルの変化等を反映し、関連産業において活発な研究開発や投資が行われている。また、訪日外国人数の増加によって、鉄道のような観光と直接関係する産業だけでなく、化粧品のようなインバウンド消費の対象となる商品の生産も活発化している。さらに、グローバル化が進展する中で、新興国企業の追い上げもあって日本の企業の競争優位は変化しているものの、半導体製造装置などの資本財や電子部品・デバイスといった中間財などでは引き続き競争優位を維持し、輸出をけん引しているほか、インフラ関連への投資も含め日本企業の海外への投資が継続している。

こうした企業の稼ぐ力を高める取組については、日本の品質の高いものづくりやきめ細やかなサービスといった伝統を継承しつつ、新たな需要に対応し、創造性を発揮することによって収益の確保に成功している例が多く見受けられる。他方で、欧米と比較して、ROAなどでみた日本企業の収益率が相対的に低い水準にあることや、第2章で論じたように、国際的にみて日本の起業活動が低調であることなど、引き続き課題が残っている。

今後、日本経済の中長期的な成長力の確保について展望すると、希少な人材を有効に活用し、必要な設備投資も促しつつ、生産性を高めることが重要である。具体的には、イノベーションの力を強化し、付加価値の高い商品・サービスを創出するとともに、人材への投資や働き方改革を進め、生産性を高めることが重要である。

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