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「日本経済2013-2014」刊行にあたって

内閣府経済財政分析担当では、毎年末に「日本経済」シリーズを公表し、「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析を提供しています。今回の報告書では、景気回復の動きの広がりやデフレ脱却に向けた動きを分析するとともに、経済再生に向けた進捗を点検し、今後の課題を明らかにすることに力点を置きました。

景気の回復力は、デフレ状況ではなくなった2006年年央までの回復局面を総じて上回っています。家計部門では幅広い層における消費の底堅さが個人消費を支えています。企業部門では業況が幅広く改善しています。特に、非製造業を中心に内需関連業種で改善が顕著です。今後は、個人消費の持続的な増加に向けて各層で所得が着実に増加していくことが重要です。業況の回復がやや弱い一部の中小企業製造業の動向にも留意が必要です。

下落が続いていた物価は、2013年夏場以降底堅く推移しており、デフレ状況ではなくなっています。価格上昇が幅広い品目に波及し、2006年のデフレ改善期よりも早いペースで上昇品目の割合が増加しています。企業に定着していたデフレ予想も大幅に改善しており、特に中小企業で改善が顕著です。デフレ脱却に向けて着実に前進しているといえます。大胆な金融政策を背景に、主要国と比べて我が国の長期金利は低位で安定し、銀行貸出残高やマネーストックも増加傾向にあります。

経済再生を実現するためには、成長力を底上げしていく必要があります。人材面では、前回のデフレ改善期と比べて、サービスの職種などのミスマッチが拡大しており、その改善が課題です。賃金改善につながる可能性がある積極的な転職を後押ししていくことも必要です。資本については、デフレ脱却や設備投資減税による資本コストの引下げを通じて設備投資を後押しし、生産性を高めていくことが必要です。非製造業では円安によるコストの増加が価格に十分転嫁できず、企業の生み出す付加価値が圧迫されることが懸念されます。内需の拡大を通じて、投入に見合った産出価格の引上げが可能となる経済状況を実現していくことが必要です。

デフレ脱却への闘いは次なるステージに移りました。長引くデフレからの脱却と経済再生を実現する好機を迎えつつあります。その実現に向けて政策を総動員するとともに、進捗状況と効果を丹念に分析し、次の政策につなげる必要があります。

本報告書の分析が日本経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助となれば幸いです。

平成25年12月

内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
西崎 文平

※本報告の本文は、原則として2013年12月17日までに入手したデータに基づいている。

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