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第3章 金融市場の国際連動性と財政リスク顕在化

実体経済のグローバル化が進展する中、金融市場は幾多の危機を乗り越えながら、グローバルな金融機関や投資家等による各国市場への進出もあり、国際連動性を強めてきた。「百年に一度」といわれる大きなショックであったリーマンショックで、グローバルな金融機関を中心に多くの投資家等は大きな損失を被り、リスクを取る姿勢(リスクテイクスタンス)を慎重化させ、自国市場に資金を戻すなどの世界的な信用収縮(globalriskreduction)が生じたが、その後も金融市場の国際連動性は高水準にある。

こうした中、リーマンショック以降の財政収支の悪化から、2010年5月にはギリシャの財政危機(ギリシャ政府は2010年4月にEUとIMFに金融支援を要請)に端を発する「ギリシャショック」が発生し、アイルランド、ポルトガルにも危機が飛び火し、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルで財政リスクが顕在化1した。更に、2011年8月以降、南ヨーロッパのイタリア、スペインへの財政リスクの伝播の可能性が注目されている(欧州政府債務危機2)。

そこで、本章では、金融市場の国際連動性が高水準にあることを確認するとともに、国際金融ネットワークの構造(各国間の資金取引関係)から、欧州政府債務危機によりヨーロッパの銀行が損失を被った場合の我が国への影響等を確認する。更に、欧州政府債務危機を踏まえて、我が国への財政リスクの伝播の可能性について分析する。


1 2年債利回りが10年債利回りを大きく上回り、金融市場はデフォルトの可能性を本格的に織り込んだ。
2 本稿では、2011年8月以降のギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイン(GIIPS諸国という)の国債利回りの上昇等を「欧州政府債務危機」と称する。
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