平成17年度「日本経済2005」公表にあたって
「日本経済2005」公表にあたって
日本経済は10年以上にわたって、バブル経済の負の遺産に苦しみ、長い低迷を続けていましたが、過剰債務、過剰雇用、過剰設備の3つの過剰の解消が進み、負の遺産の清算はおよそ終了しました。また、景気は2005年央までみられた踊り場的状況を脱却し、緩やかな回復を続けています。
経済財政分析担当では、目まぐるしく変化する経済状況をタイムリーに分析し、月例経済報告等で明らかにしておりますが、本報告書は昨年創刊した「日本経済2004」に続き、2005年における経済動向を概観するとともに、景気の今後の動向をみる上で重要と考えられるいくつかの論点を取り上げ、詳細な分析を行なっています。
具体的には、第1章では、踊り場脱却後の最新の日本経済の現状を概観するとともに、改善がみられるデフレの動向やデフレ脱却における金融政策の在り方等について分析しています。
第2章では、金融市場の動向と資金の流れからみた企業行動の変化を取り上げています。金融市場の動向については、最近の長期金利低下について、その背景を世界的な資金の循環という観点から分析するとともに、金利上昇リスクについて家計、企業、銀行、財政への影響を分析しています。また、リストラによる経費削減と過剰設備の処理を優先した結果、景気回復による収益向上と相俟って、企業のキャッシュフローは歴史的にみても高水準に膨らんでいます。こうした企業のキャッシュフローがさらに配当や設備投資に向かうのかどうかという点についても企業レベルのミクロ・データを活用して、企業の資金管理の動向について分析しています。
本報告書の分析が、日本経済の現状に関する認識を深め、今後の景気動向をみる上での一助になれば幸いです。
平成17年12月
内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
高橋 進