第4章 識者の意見

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清野 智
東日本旅客鉄道株式会社取締役会長

「子育てにやさしい企業づくりを目指して」

JR東日本グループでは、女性社員の採用が増加する中で、女性社員がその能力を最大限に発揮できる環境の整備を目的として、様々な制度を導入してきた。男女ともに子どもが3歳になるまで育児休職を取ることができる制度、短時間、短日数の勤務制度も導入した。後者については、子どもが小学校3年生になるまで拡大する等、子育てや介護期間中の働き方の選択肢を広げてきた。

そうした取組を行ったこともあり、現在では、山手線の車掌の約4割が女性で、新幹線の運転士も誕生している。さらに、泊まり勤務やメンテナンス業務など、女性社員が男性と同じように活躍している。

さらに、20年近く前から駅型保育園などの子育て支援施設の開設に取り組んでいる。現時点で約80か所の施設があり、駅型学童もある。当面、これを100か所まで増やしていく計画である。人口が減少していく中で、暮らしやすい沿線づくりを進めていきたい。このような子育て支援施設を充実させていくことも、鉄道事業者としての社会貢献の一つではないかと思っている。

また、吉祥寺に子育て支援と高齢者福祉の複合施設「コトニア」を開設した。コトニアは、子育て支援施設と高齢者福祉施設が隣り合っているために、子どもと高齢者が相互に交流できるようになっている。相互に行き交うことなどを通じて、子どもたちはお年寄りへの思いやりや尊敬する心を育み、高齢者の方々は子どもたちに癒され、気力の充実につなげて頂きたいと考えている。コトニアは他の沿線にも設置していきたい。

人口減少がこのまま推移すれば東京も高齢化が進む。高齢者も元気であれば何らかの形で社会に関与する仕組みが大事だろう。定年退職後も何らかの形で世の中の役に立ちたいとの思いを持っている元気な高齢者も多い。そうした方々に地域での子どもの見守りをしていただくことも考えられるだろう。東京でも高齢化は進んでいるが、アクティブシニアが地域社会で活躍できる仕組みが求められるのではないか。

結婚について言えば、各地の商工会議所などが中心になって婚活イベントを行い、若者の出会いを支援している例がある。自治体や商工会議所などが主催する営利目的ではない婚活イベントは安心感があるとのことである。そういう動きが、他の企業から出てきて広がっていくのも良いだろう。

結婚に加えて、若い人にとっては住宅も大きな課題である。ここでは青森や富山で行われているコンパクトシティの取組みが参考になる。子育て中は郊外の一戸建てが便利だったけれど、子どもが独立した後は市の中心部のマンションの方が買い物や通院などの面で便利だったりする。そういった理由で中心部に移り住む方が増えている。そうした方の郊外にある住宅を自治体などの公的な機関が仲介する形で若い人たちに貸し出していくことができれば、双方にとってメリットがある仕組みとなるのではないか。

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