第4章 識者の意見
クリス・グレン
パスト・プレゼント・フューチャー代表取締役
インバウンド観光アドバイザー
「日本や地域の歴史、文化について学び、その魅力を認識すべき」
日本に住んでいて感じるのは、日本人が自分たちの歴史、文化にあまり誇りを持っていない、あまり理解していないということである。日本人が自国の歴史や文化に憧れを抱いていないということはとても残念なことだし、とてももったいないと思う。
「隣の芝生は青い」ということわざがある。
日本人は海外に憧れを抱いているかもしれないが、逆に外国人は日本独特の歴史や文化、日本古来の考え方に憧れを抱いている。昔ながらの日本を見たい、体験したいと思い来日する外国人も多い。
「隣の芝生は青い」これは視点を変えると、日本国内においても同じだ。地方の人たちは、東京などの大都市に憧れる。逆に大都市に住んでいる人たちは、自然豊かで心おだやかに過ごせる地方での生活に憧れを持っている人も多い。日本人は海外ばかりではなく自国に、地方は大都市に憧れるばかりではなく地域の魅力に、目を向けることが大切なのではないだろうか。そのためにも、自国の歴史文化、ふるさとのことを積極的に学べる環境づくりが必要だ。その環境づくりとして一番重要なのが教育だと思う。
地域活性化の議論の中で、よく「地域の魅力がわからない」というような話になることがあるが、この根本は「教育」にあるのではないだろうか。地元の歴史や文化を子供の頃から学ぶ環境があれば、ふるさとの魅力や素晴らしさを子供の頃から感じていれば、周りの大人たちが生き生きと暮らしていれば、もっと自分の地域に誇りを感じるだろうし、地域のために頑張ろうと思えるはずだ。「地方では何もできない。大都市へ行かなければ、面白いことができない」というような過剰な憧れも薄らぐのではないだろうか。そのためにも、まずは大人たちがしっかりと学び、子供たちに伝えていかなければならない。学校、家庭、街、そして国全体の取り組みとして、地域の魅力を子供の頃から理解できるような仕組みづくりが必要だ。地域に興味を持ち、地元愛が生まれると、自然に、自分自身のアイデンティティ、ルーツについても興味を持つようになってくる。そして、その力は地域にとって強力なパワーになるはずだ。
また、近年はITの時代。パソコンさえあれば、わざわざ大都市に行かなくとも、仕事ができる時代だ。最近は、そういった分野の人たちが、パソコンを持って、自然豊かな、環境の良い場所へ行って作業をするなんていう話も、よく耳にする。これは地方にとってもチャンスだ。地方の魅力、地域のメリットをしっかりアピールして、どんどん人に住んでもらおう。どんどんビジネスをしてもらおう。地域の活力を取り戻すための一つの方法として、今後も、ITはキーになり得ると思う。
何はともあれ、地方が活性化するためには、地域の魅力を掘り起こすことだ。
もう一度、見直そう。地域の魅力を。