第4章 識者の意見

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石黒 不二代
ネットイヤーグループ株式会社代表取締役社長
-「選択する未来」委員会 委員

「デジタルマーケティングと生産性の向上で企業の成長力を高める」

ネットイヤーグループでは、「ビジネスの未来をデジタルで創る、日本の未来をデジタルで創る」という理念のもと、インターネットを加速度的に発展させると同時に、インターネットを心あるメディアにするという両方の使命を持っており、この両面を推進していけば、日本社会にデジタルが根づいていくのではないかと考えている。

日本がこれから人口減少に直面する中でも成長していくためには、労働者一人当たりが生み出す付加価値を高める必要がある。そのためには、インプットに対して、アウトプットが増えればいいということ。ひとつには、インプットをいかに減らして、同じ効果を出せるかという効率性の観点。もうひとつは、インプットはそのままで、より高い付加価値を出せるかという効果性の観点がある。この2つができれば、インプットを少なくして、より高い付加価値を出していくという理想形に近づいていく。それを実現するのがデジタルマーケティングとホワイトカラーの生産性向上である。

マーケティングとは、営業がなくても売れる仕組みをつくること。いまだに日本企業では強い企業=営業が強い企業との考え方があって、強い営業とは売れないものでも売ってくる営業のことをいう。そうではなくて、消費者が本当に欲しいと思うものをつくる、心に刺さる宣伝をする、よりよいものをよりよいところに置く、適切なカスタマーサポートをする、そうしたことが重要である。デジタルの世界では、利用者をより理解できる仕組みづくりができるようになった。データをマーケティングに使えるのだ。

次に、日本企業の生産性は、主要先進国の中でも最低クラスとなっている。日本では工場の生産性は高い傾向にある一方で、サービス業やホワイトカラーの生産性は低い。基本的に時間当たりの生産性を上げるという意識が乏しく、雑務に時間をとられすぎている。そうした部分をITで代替して効率性を上げることはできるだろう。他にも、仕事はオフィスでやるものだという従来型の概念を取り払って、場所を限定しない働き方、年功序列・終身雇用でなく頑張った人が報われる仕組み、時間当たりの生産性で社員を評価する仕組みが必要である。また、組織は横の連携、知識の共有をしていくこと、組織内の情報をもっと民主化することでオフィスの生産性は高まると考えている。私は、そうしたことを実現した企業をスマートエンタープライズと名付けて広げたいと思っている。

今後、日本の成長のカギを握るのはイノベーションである。イノベーションとは技術革新のみならず、仕事のやり方を変えるということも含んだ概念だ。そのイノベーションを起こすためには、デジタルマーケティングに取り組むこととホワイトカラーの生産性を向上させることが必要だ。これらに取り組むことで、強いブランド、強い企業を育て、日本企業の成長力を高めたいと思っている。

これからの日本の未来を考える上では、どれだけ数字を精査しても精査し足りない。今後50年の間に起こることはなかなか予想ができないからだ。例えば、医学の進歩についてみれば、もしかしたら不老不死を実現する医療ができるかもしれないし、高齢者の生存率向上がさらなる医療費の負担をもたらすかもしれない。また、IT業界でも、2020年にはコンピュータの知能が人間を超えるという話もある。そうしたことを考え出すと切りがないが、大事なことは、数字を正確に読む力ではなく、これから起こるであろう様々な変化に対していかにスピーディに、柔軟に対応していけるかということだろう。

未来は予測できないけれども、未来は選択できるし、未来は創造できるものだと思っている。

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