第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題

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第3節 地域社会をめぐる現状と課題

Q17 少子化の動向や取組は地域別に見るとどのようなことが言えますか。

A17

●出生率の地域差

2014年の全国各地域の合計特殊出生率をみると、東海・北陸、中国・四国、九州・沖縄地域の都道府県は全国平均(1.42)より高い水準で推移している。中でも沖縄県は目立って高い水準を維持している。

一方で北海道・東北、関東、近畿地域の都道府県は、全国平均よりも低い水準で推移しているところが多い。合計特殊出生率が全国平均より低いのは11県(北海道、宮城、秋田、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、奈良)である。

合計特殊出生率上位5県(沖縄・宮崎・島根・長崎・熊本)の人口は日本の総人口のわずか5.05%を占める一方、下位5県(東京・京都・北海道・奈良・宮城)は19.75%を占める状況である。

図表3-3-17-1 全国各地域における合計特殊出生率の推移

大都市部(政令市等)の合計特殊出生率をみると、所在する都道府県の出生率より概ね低い傾向を示している。特に、札幌市、仙台市、京都市、大阪市、神戸市、福岡市等が著しく低い。ただ、浜松市、岡山市、広島市、北九州市、熊本市のように、全国平均よりも出生率が高い例もみられる。出生率の地域差は、都道府県間だけでなく、都道府県内の都市部と周辺地域における人口構成の違い等により生じることが確認できる。

図表3-3-17-2 大都市部(政令市)における合計特殊出生率の推移

出生率に地域差が生じる理由については判明していないことが多い。

東京圏や政令市などの大都市部では、平均初婚年齢や第一子出生年齢について都市が所在する都道府県や全国平均のそれらより高い状況である。こうしたことは、出生率の地域差の要因の一つと考えられる。

一方で九州・沖縄地域は出生率が高く、出生率の低い北海道・東北地域は出生率が低いことについては、その理由は明確でない。親との同居・近居、出産・子育てに対する価値観、地域の伝統、雇用状況、東京圏との遠近などの影響が指摘されている。

●少子化対策の実施状況

これまで行われてきた少子化対策は、主に待機児童対策といった保育サービスの充実が中心であり、地域で似通った内容であった。しかし少子化の要因は、地域ごとに大きく異なると考えられることから、多様な少子化対策のメニューを地域の実情に応じて柔軟に組み合わせ、実施していくことが求められる。

少子化対策に注力している地域では、出生率に相応に効果が発現していることが確認できる。

内閣府が実施したアンケート調査「地方公共団体における少子化対策等の現況調査について」(回答団体:1,535団体/1,788団体)によると、①総合的な政策立案・推進等を担当する部署の設置、②関係部署間での業務連携、③少子化対策関連予算の増額、④少子化対策に従事する人員の増員、の4点に取り組んでいる団体と取り組んでいない団体とでは、積極的に取り組んでいる(=合計点数が高い)団体の方が過去10年間で合計特殊出生率に改善傾向が認められた。

図表3-3-17-3 地方公共団体における少子化対策への取組状況と出生率の関係

さらに、重点的に取組んでいる施策には、現状で(6)待機児童の解消や(7)子育て支援のメニュー拡張を挙げる団体が多い。

次に、今後強化が必要と考える施策には、(1)結婚に関する支援体制の整備、(7)子育て支援のメニュー拡張、(8)保育サービスの充実が挙げる団体が多く、少子化対策のメニューの多様化と質の向上に対するニーズが多いといえる。

そして、今後他団体や国との連携が必要と考える施策には、それらに加え、(4)安心・安全な周産期医療体制の充実へのニーズが多い。広域的な取組みを要する課題については、基礎的自治体単独では困難が伴うため、連携協力が重要になっているといえる。

図表3-3-17-4 地方公共団体における少子化対策の重点的取組施策
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