第2章 人手不足による成長制約を乗り越えるための課題

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コロナ禍から平時へ移行し、経済活動が活発化する中で、2024年現在、我が国の企業の人手不足感は、非製造業や中小企業を中心に、歴史的な水準にまで高まっている。こうした人手不足感の高まりは、今に始まったものではなく、より根本的には、生産年齢人口が1995年をピークに減少に転じ、また総人口も2008年をピークに頭打ちの後、2011年以降一貫して減少するなど、過去四半世紀以上の間、労働供給の制約が強まってきた中で生じているものである。現在、こうした供給面の制約が経済の成長力の桎梏となる懸念がますます高まっている。

他方、2023年に米ドル換算でGDPが日本を超えたドイツについては、日本の約6割の就業者数、約8割の労働時間、つまり半分程度の労働投入により、我が国と同程度の規模の付加価値を生み出している1。人手不足感の問題は、決して乗り越えられない壁ではなく、生産性改善に向けた努力により、人口減少・少子高齢化の下であっても成長できる経済の実現を目指していくことが重要である。

こうした観点から、本章では、人手不足による成長制約を乗り越えるための課題を複数の側面から検討する。まず第1節では、省力化投資の実態と生産性向上への効果を中心に、企業部門が取り組んでいる人手不足への対応に係る現状と課題を分析する。第2節では、我が国における労働市場におけるマッチングや産業間の労働移動の現状を分析し、労働力が希少となる中で、賃金をシグナルとした円滑な労働移動が進むための課題を考察する。こうした国内での政策対応に加え、第3章では、これまで着実に増加し、200万人を超えた外国人労働者に注目し、日本人労働者との賃金格差に関する詳細な分析を基に、外国人労働者の受入れや定着に向けた課題を検討する。


(1)2023年において、日本の人口は1億2,435万人(総務省「人口推計」(2023年10月1日現在))、就業者数は6,747万人、一人当たり年間労働時間は1,607時間であるのに対し、ドイツの人口は8,461万人、就業者数は4,099万人、一人当たり年間労働時間が1,341時間となっている。
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