第2章 家計の所得向上と少子化傾向の反転に向けた課題

[目次]  [戻る]  [次へ]

家計の所得向上は、我が国における景気回復の持続力の向上を実現するための最重要課題の一つである。我が国の実質賃金は1990年代以降主要先進国と比較して伸び悩んできた1。2022年以降は、ロシアによるウクライナ侵略等をきっかけとした物価上昇が実質賃金の大きな下押しとなっている。こうした中で、家計の所得向上に向けては、生産性の改善等を通じた実質賃金の上昇に加えて、潜在的に存在する就労ニーズを実現に結び付けることが重要である。さらに、家計の資産形成を後押しすることにも、将来不安の軽減と個人消費の活性化の両面から経済の好循環を下支えする効果が期待される。

また、少子化は我が国が直面する、最大の危機である。少子化のスピードは加速し、2022年の出生数は過去最少の約77万人となった2。急速な少子化は、人口減少を加速化させており、少子化・人口減少に歯止めをかけなければ、活力ある経済社会を維持することは難しい。こうした中で、政府は経済的支援の拡充を第一の柱に据えた少子化対策を進めていくこととしている。

本章では、こうした状況を踏まえて、家計の所得向上を実現し、少子化の流れを反転させる上で検討すべき論点を分析対象とする。第1節では、家計の所得向上に向けて、労働所得・金融資産所得の両面から、各施策により期待される効果や課題を整理した。第2節では、少子化の進行によるマクロ経済への影響を分析するとともに、少子化が進行する背景について結婚や出産に経済環境が及ぼす影響という視点から分析し、必要な対策を考察している。第3節は、まとめである。


(1)内閣府(2022)の第2-1-5図を参照。
(2)「令和4年人口動態統計月報年計(概数)の概況」を参照。
[目次]  [戻る]  [次へ]