第1章 マクロ経済の動向と課題

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我が国経済は、2022年以降、個人消費が飲食・旅行などの対面サービスを中心に持ち直し、好調な企業収益の下、設備投資も高水準で推移するなど、内需が緩やかに持ち直してきた。こうした中、2023年5月8日には、新型コロナウイルス感染症(以下「感染症」という。)の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)上の位置付けが5類へと変更1され、経済が自律的に循環する環境が整った。

他方、海外に目を転じると、我が国経済を下押しする要因が複数存在している。世界的な物価上昇とそれを受けた急速な金融引締めが続いており、一時的には金融システム上の不安が高まった国もある。金利差や景況感の違いから、金融資本市場は振れが大きくなる局面もあり、実物面への影響も懸念される。

本章では、こうした状況下にある我が国経済の動向をマクロ面から整理する。第1節では、GDPをはじめとするマクロ統計を基に、2022年から2023年前半の我が国経済の状況を確認する。第2節では、消費者物価が約40年ぶりの上昇を経験する中で、その背景と基調を分析した上で、財政金融政策の課題を整理する。


(1)新型コロナウイルス感染症については、2020年1月28日に新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令(令和2年政令第11号)等が公布され、感染症法上、指定感染症に位置付けられた。その後、2021年2月3日に公布された新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律(令和3年法律第5号)により、感染症法上の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症」に変更され、感染症法に基づく入院措置・勧告、外出自粛要請等の措置を講ずることが可能となった。2023年5月8日に5類に位置付けられたことにより、当該措置を講ずる法的根拠はなくなった。
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