第2章 労働力の確保・質の向上に向けた課題
我が国では、特に2013年以降、少子高齢化と人口減少の下でも、女性や高齢者をはじめとする多様な人材の労働参加が進んできたが、今後もこうした労働参加は期待できるのだろうか。一人当たり賃金に目を向けると、バブル崩壊後約30年にわたって伸び悩みが続いてきたが、その背景には何があるのだろうか。団塊世代が後期高齢者となり始め、今後、高齢化や人口減少が本格化する下でも成長を続けていくためには労働の量を確保するとともに、その質を向上させていくことが一層重要となる。そのためには、柔軟な働き方を拡大し、意欲ある多様な人材に十分な就業機会が提供されるとともに、そのような人材が自身の能力を高め、長く活躍できるような環境を整備していくことが不可欠である。
本章では、こうした問題意識を踏まえ、人への投資の動向と課題について、雇用者側と企業側の双方から、中長期的な視点で整理することとしたい。第1節では、我が国の賃金や世帯所得の伸び悩みの要因を明らかにし、成長と分配の両面の課題を整理する。第2節では、労働移動や人材活用の動向、人口減少下での今後の労働力確保に当たっての課題について概観する。第3節では、賃金格差や非正規雇用と労働の質との関係、リカレント教育やリスキリング等の労働の質を高めるための仕組みの現状と課題について概観するとともに、所得再分配の現状についても概観し、課題を考察する。