第1章 経済財政の動向と課題

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新型コロナウイルス感染症(以下「感染症」という。)に伴う全国のまん延防止等重点措置は2022年3月末をもって全て解除された。我が国景気は、ウクライナ情勢等を背景とした原材料価格の上昇や供給制約等が下振れリスクとなっているが、経済社会活動の正常化が進む中で、上向きの動きが続いている。

このように我が国経済は、感染症の影響による戦後最悪の落ち込みから回復し、新たな成長経路に向かって動き出している。しかし、その動きは、単なる景気回復にとどまらず、感染症後の新しい消費行動の顕在化に加え、感染症とその後の世界的な需要回復に伴う供給制約、世界的なデジタル化・脱炭素化の進展、米中競争やロシアによるウクライナ侵略などの国際貿易投資環境や経済安全保障面での大きな変化など、これまでの延長線上にない様々な変化の下で生じている。

本章では、こうした状況下にある我が国経済の動向をマクロ面から整理する。第1節では、GDP統計等から経済全体の動向を概観した上で、家計・企業部門別に、感染症後にみられる経済活動の変容を確認する。第2節では、感染症の影響下からの需要回復やウクライナ情勢等を背景に資源価格が上昇する中で、我が国の物価上昇に与える影響やその広がりを過去の資源価格上昇局面と比較しつつ考察する。その上で、デフレ脱却に向けた進捗、賃金上昇に向けた課題を点検する。第3節では、感染症下の財政政策の動向に触れつつ、中長期的な経済財政運営に向けた課題を整理する。

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