第1章 景気回復の現状と課題

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我が国経済は、2012年11月を底に緩やかな景気回復が続いている。今回の景気回復は、「いざなぎ景気」(1965年11月-1970年7月の57か月)を抜き、第14循環(2002年2月-2008年2月の73か月)に次ぐ戦後2番目の長さとなった可能性がある1

アベノミクス三本の矢、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」により、企業の稼ぐ力が高まり、企業収益が過去最高となる中で、雇用・所得環境が改善し、所得の増加が消費や投資の拡大につながるという「経済の好循環」が着実に回りつつある。

労働市場では2018年5月時点で有効求人倍率が1.60倍と1974年1月以来の高さとなり、完全失業率も2.2%と1992年10月以来の水準まで低下しており、企業の人手不足感は四半世紀ぶりの高水準となっている。こうした中で、企業は人材の確保や省力化に向けた取組を迫られている。人手不足感の高まりを反映してパートタイム労働者を中心に賃金が上昇し、正社員を含めた一般労働者の賃金の伸びについても、労働需給のひっ迫に比べると緩やかではあるが、徐々に高まりつつある。個人消費も、雇用・所得環境の改善度合いに比べてやや力強さに欠けている面はあるが、持ち直しを続けている。

物価については、デフレ脱却に向け着実に局面変化は見られるものの、デフレを脱却し、安定的な物価上昇が見込まれるところまでには至っていない。こうした中、2%の物価安定目標の実現に向けて緩和的な金融政策が継続するとともに、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の推進など、デフレ脱却・経済再生に向けた取組が進められている。

本章では、まず、今回の景気回復局面の特徴を概観し、長期化する景気回復の持続性を検証する。第1節では、今回の景気回復の特徴やリスク要因等について分析する。第2節では、家計部門や企業部門の動向を詳しくみるとともに、四半世紀ぶりの人手不足感となる中、デフレ脱却・経済再生に向けた進捗について賃金や物価の動向を確認する。第3節では、個人消費について、電子商取引、シェアリング・エコノミーの拡大や個人消費の新しい潮流について確認する。最後に、第4節では、財政・金融政策について、国際比較を行いながらこれまでの取組の状況を概観する。その上で、「潜在成長率の向上」が日本経済の大きな課題であるというのが、本章のまとめとなる。


(1)景気基準日付(山・谷)の設定について、データの蓄積を行った上で、専門家からなる景気動向指数研究会(座長:吉川洋教授)での議論を踏まえて、内閣府経済社会総合研究所において設定することから、その事後的検証を待つ必要がある。
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