はじめに

[目次]  [戻る]  [次へ]

我が国経済は、アベノミクスの取組の下、2012年末から緩やかな回復基調を続けている。2016年後半からは、海外経済の緩やかな回復を背景に、輸出や生産が持ち直すなど企業部門を起点にした好循環が進展しており、雇用情勢が一段と改善する中で人手不足感はバブル期並みに高まっている。少子高齢化・人口減少が進む中で、人手不足を克服し持続的な経済成長につなげるためには、働き方改革と新技術の導入を同時に進め、生産性の向上と多様な人材の労働参加を図ることが大きな課題である。こうした取組により、生産性が上昇し、内需の活性化につながれば、デフレ脱却への動きも確かなものとなることが期待される。

本報告では、こうした日本経済の課題に焦点を当てて、緩やかな回復基調が続く日本経済の現状と課題について分析を行うとともに、働き方改革や技術革新が経済や国民生活に及ぼし得る影響について論じる。

第1章「緩やかな回復が続く日本経済の現状」では、日本経済の最近の動向について、特に、人手不足の背景、個人消費の本格的な回復やデフレ脱却に向けた課題などを中心に論じるとともに、財政健全化の進捗状況やデフレ脱却に向けた金融政策の取組について概観する。

第2章「働き方の変化と経済・国民生活への影響」では、働き方改革がもたらし得る経済や国民生活への影響について分析する。具体的には、特に、同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、長時間労働の是正や柔軟な働き方の導入等の取組に焦点を当て、これらの改革が、生産性の向上、多様な人材の労働参加、相対的に低い所得層の所得底上げや余暇時間の増大等に伴う消費の活性化につながる可能性があることを論じる。

第3章「技術革新への対応とその影響」では、第4次産業革命における技術革新やそれらの社会への適用によるSociety 5.0の実現が、経済や国民生活に及ぼし得る影響について分析する。具体的には、これまでの技術革新や第4産業革命における新技術の導入が企業の生産性等に与える影響を分析するとともに、そうした技術革新が働き方を含む国民生活に与え得る影響について論じる。

最後の「おわりに」では、本報告の主な分析の内容を引用しつつ、それらが示唆する経済財政政策運営上の課題に関するメッセージを述べる。

[目次]  [戻る]  [次へ]