平成29年度年次経済財政報告公表に当たって

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我が国経済は、4年半のアベノミクスの取組の下、長期にわたる景気の回復基調が続いています。バブル期を超え、戦後3番目の長さとなりました。

今回の景気回復の特徴として、国民生活に密接な関係を持つ雇用や所得が大きく改善していることが挙げられます。生産年齢人口が減少するなかにあっても、就業者数は2012年と比べて185万人増加、うち女性は152万人増加しました。有効求人倍率は1.4倍を超えて高度成長期以来の高さとなり、さらに、高度成長期でも実現できなかった47全ての都道府県で1倍を超え、働きたい人が働ける経済環境をつくり出すなど、地方でも明るい動きがみられています。また、賃金についても、中小企業も含め多くの企業で4年連続のベースアップが実施されるなど、全国で経済の好循環が着実に回り始めています。

他方、タイトな労働需給を背景とした労働市場の人手不足感はバブル期並みとなっており、それへの対応は、我が国経済の持続的な成長に向けた乗り越えるべき課題となっています。本報告では、働き方改革とイノベーションへの取組を同時に進めることが、持続的な成長に向けた鍵となるというメッセージを盛り込んでいます。

働き方改革は、働く人のワーク・ライフ・バランスを改善するだけでなく、女性や高齢者の労働参加を促すことにより、潜在成長力の強化、所得や消費の底上げにつながるなど、経済面でも大きな影響を持つものです。

イノベーションへの対応は、人口減少・少子高齢化が進むなかでも、生産性向上を通じ、潜在成長力の強化につながることが期待されます。イノベーションの恩恵を全ての人が享受し、便利で快適に過ごせる社会-Society 5.0-に向けた取組を加速していくことが重要です。

経済の好循環を一時的なものに終わらせることなく、全国津々浦々まで好循環を実感できるよう取組を進めていきます。本報告が現下の日本経済が直面する課題への対応に関する議論に資することになれば幸いです。

平成29年7月

経済財政政策担当大臣

石原伸晃

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