はじめに

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日本経済は度重なるショックにより試練のときが続いている。リーマンショック、景気持ち直しの足踏み、そして今回の東日本大震災に伴う景気の弱まりである。こうした状況の下、本報告書では、「震災後の日本経済の展望をどう切り開いていくか」という問題意識から、経済財政の現状と課題を分析する。

現在、経済政策担当者に問われているのは、日本経済を震災前の状況に戻すことではなく、新たな発展経路に乗せることである。いうまでもなく、仮に景気が順調に持ち直し、ストック再建のための「復興需要」が盛り上ったとしても、それは必ずしも持続的成長を意味しない。新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出すこと、すなわちイノベーションが伴わなければならない。震災復興はイノベーションの大きな機会になり得るが、イノベーションを促進する意思と環境の整備がなければ、単なる願望に終わる可能性もある。そのためには、日本経済が震災前から抱えていた課題を洗い直し、持続的成長にとってのボトルネックへの対応をあわせて考えておく必要がある。

そこで、本報告書では、短期の景気動向に加え、上記のような中長期的、構造的な観点から重要と思われるテーマを選択し、次のような3章立ての構成とした。

第1章「大震災後の日本経済」では、震災後の日本経済を振り返り、今後の展望を探る。さらに、長引くデフレ状態や厳しい財政状況の背景を改めて整理し、震災との関係について考える。具体的には、「震災の景気や中長期的な成長力への影響をどう評価するか」「震災は物価の基調を変化させつつあるのか」「震災後は財政出動が必要だが、一方で厳しい財政状況への対応とどう折り合いをつけていくか」といった論点を検討する。

第2章「新たな「開国」とイノベーション」では、日本経済の対外開放の進展とその影響について、生産性との関係に重点を置きながら分析する。具体的には、「日本経済のグローバル化の現状をどう評価するのか」「さらなる開国は弊害も大きいのではないか」「さらなる開国を見据えて、我が国が力点を置くべき課題は何か」といった論点を検討する。

第3章「人的資本とイノベーション」では、新しい技術や考え方を生み出すリーダーである起業家や高度人材を中心に、人材の適切な配置や育成の在り方を考える。具体的には、「起業が少ないのはなぜか」「高度人材を確保するためには何が必要か」「労働市場を含む日本の経済システムはイノベーションに有効か」といった論点を検討する。

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