第1章 着実に持ち直す日本経済

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日本経済は、リーマンショック後の厳しく深い景気後退を経て、2009年春頃から持ち直し局面にある。ただしこれは輸出や経済対策の効果にけん引された面が依然として強く、国内民需を中心とする自律的な回復には今一歩の状況である。今後はいかに所得面と支出面の好循環を生み出し、持続的な回復軌道に乗せていくかが課題である。その一方で、経済活動水準が依然低いこともあって、日本経済は数々の重荷を背負っている。その端的な例が、設備や雇用の過剰感、物価の持続的下落すなわちデフレ、さらには税収減等を通じた財政状況の悪化であり、これらをどう克服していくかが問われている。
こうした問題意識から、本章では、次の3つの論点について検討する。第一が、実体面から見た景気の動向である。先行きとの関係では、外需を取り巻く環境、公共投資削減の影響、民需の自律的要素の見極めが焦点となる。第二は、デフレの現状と金融資本市場の動向である。特に、主要国では我が国だけがデフレに陥ったことから、その構造的な背景を探ることに力点を置く。第三は、財政を巡る論点である。現在の財政の持続可能性について警鐘を鳴らすだけでなく、国際的な比較などを通して我が国財政の構造的な問題を抽出する。

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